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大阪高等裁判所 昭和55年(う)1919号 判決 1981年4月09日

本店所在地

大阪市東住吉区山坂町二丁目四六番地

有限会社西村診療所検診部

右代表者

代表取締役 深江清

本籍

和歌山市津秦三五番地

住居

大阪市阿倍野区桃ケ池町一丁目一四番二四号

会社役員

西村正子

昭和一九年一二月一五日生

右両名に対する法人税法違反被告事件について、昭和五五年一〇月三一日大阪地方裁判所が言渡した判決に対し、原審弁護人から各控訴の申立があったので、当裁判所は次のとおり判決する。

検察官 北側勝 出席

主文

本件各控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人的場悠紀作成の控訴趣意書記載のとおりであり、これに対する答弁は、検察官北側勝作成の答弁書記載のとおりであるから、これらを引用する。

論旨は、量刑不当を主張するのであるが、所論にかんがみ記録を精査し、かつ当審における事実の取調の結果をも総合して検討するに、本件は、いわゆる裏送金口座を開設する等して多額の収入金額を秘匿し、他方、領収書の金額を改ざんし、また架空の領収書を作成する等して多額の経費を計上することによって、納付すべき税額の九割をも超える脱税を敢行した事案であって、刑責はきわめて重大であるから、所論諸事情殊に修正申告により、加算税等をも納付ずみであることその他被告人らの悔悟の情を十分考慮しても、被告人らに対する原判決の刑は重過ぎるとは考えられず、論旨は理由がないから刑事訴訟法三九六条により主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中武靖夫 裁判官 吉川寛吾 裁判官 西田元彦)

○控訴趣意書

被告人 有限会社西村診療所検診部

右代表者代表取締役 深江清

他一名

右の者らに対する法人税法違反被告事件についての控訴の趣旨は左の通りである。

昭和五六年二月六日

弁護人 的場悠紀

大阪高等裁判所

第四刑事部 御中

一、量刑不当

原判決は被告人有限会社西村診療所検診部(以下単に被告人会社という)に対し罰金六〇〇万円に、被告人西村正子を懲役八月(執行猶予三年)に処している。しかし、右量刑は、左の事情を考慮すれば重きに失する。

(1) 本件脱税は、被告人会社を実質上切りまわしていた西村正子の犯行であるが、その犯行形態は全く幼稚で、計画性といったものは見られない。即ち、集金して来た小切手をそのまま、架空名義で取立て、三文判を利用した領収証を偽造するなどである。収支のバランスについても全く考慮を払わない無計画なもので、いわゆる素人の犯罪ということができる。

(2) 犯行の動機も、病院を建設することを目的としたいわゆる営業の拡大を目標としており、遊興費のような不当な目的ではない。

(3) 本件脱税が発覚後、修正申告を行い、法人税については、加算税を含めて全額支払済であり、府民税、事業税については重加算税を除いて支払済である。

(4) 被告人西村正子としても十分反省している上、その後の納税行為によって実質的な懲罰はすんでいるというべきである。

以上の観点から、原判決の量刑は、被告人両名にとって重きに失するものである。

以上

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