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大阪高等裁判所 昭和55年(ネ)188号 判決 1981年3月27日

控訴人

石原開発株式会社

右代表者

石原則之

右訴訟代理人

仲武

被控訴人

株式会社第一勧業銀行

右代表者

村本周三

右訴訟代理人

辻武司

外三名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

原判決を取消す。

被控訴人は、控訴人に対し、五〇〇〇万円及びこれに対する昭和五二年一〇月一七日から完済まで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二  当事者双方の主張、証拠関係は、次に付加するほか、原判決の事実摘示のとおりであるから、これを引用する(但し、原判決四枚目裏一〇行目「打解策」を「打開策」と改める。)。

一  控訴人の主張

1  本件貸付当時担保は不足しておらず、従つて被控訴人支店に新たに担保を提供する必要はなかつた。即ち、昭和四九年九月控訴人は、その所有土地建物の根抵当権の債権極度額を三五〇〇万円としたが、右不動産の担保価格は、右極度額相当のものであつた。他に五〇〇万円の定期預金を担保としていたので、これだけでも担保価格は合計四〇〇〇万円となる。控訴人の当時の自動車輸入状況よりして与信枠四〇〇〇万円で足りており、さらに与信枠を増加して貰う必要はなかつた。

被控訴人は、本件貸付代り金を定期預金にして、これに担保を設定することにつき合意が成立したと主張するが、通常の手続に反して小切手、払戻請求書によらないで、振替支払票により定期預金に振替えられたこと、控訴人の念書を徴していないこと、また定期預金証書の裏面受取欄に預金者の押印を求めず、担保預金通帳を持参させて担保預金の記入していないことに徴しても、控訴人の承諾なくしてなされたことは明らかである。

2  法令違反等による不法行為の主張について次のとおり追加する。

(一) 被控訴人支店が本件貸付代り金について控訴人の承諾なくして、振替支払票により定期預金に振替えた手続は、不法である。

(二) 本件貸付金は、事業運転資金として利用することを目的とするものであり、被控訴人支店が保証協会に提出した保証貸付実行報告書ではいずれも運転資金として記載して報告しながら、全額を定期預金として拘束した。このように保証条件を変更する場合は保証協会の文書による承諾のない限り、信用保証協会法に違反する。

(三) 保証協会へ事業運転資金とする目的で貸付の保証を依頼したのは、控訴人であり、貸付を受けた者は控訴人であるのに、被控訴人支店は、運転資金として使わせず、自己の優越した立場を利用して貸付と同時に即日全額を定期預金として拘束したものであつて、大蔵省通達にいう即時両建預金である。

二  被控訴人の主張

1  債務不履行の主張について

(一) 被控訴人支店は、根抵当権が設定された土地建物の価格を二六七六万九〇〇〇円と評価したが、昭和四九年九月当時としては右評価額は決して低いものではなかつた。因みに右不動産は競売に付され、同五五年四月に実施された入札期日の最高入札価額は三〇〇五万円であつて、その間の不動産価格の高騰を勘案すれば、被控訴人支店の前記評価額は高すぎるというべきである。

(二) 本件貸付代り金をもつて定期預金を創設するについては、定期預金印鑑票に控訴人の押印を、右定期預金を担保に提供することについては、定期預金担保差入証書に控訴人の記名押印を得て、その意思を確認した。定期預金証書裏面の受取欄に控訴人の署名(記名)押印がなされていないけれども、右受取欄の署者(記名)押印は、債権回収事務の便宜を目的としたものであつて、担保設定の要件ではなく、これが控訴人、被控訴人間の合意の内容を左右するものではない。

2  不法行為の主張について

(一) 信用保証協会には信用状開設等外国為替取引についての与信に対してこれを直接保証する機能がないため、これと同一の目的を達する方法として、同協会が貸付金の保証を行い、その貸付代り金で定期預金を創設し、これを信用状開設等の支払承諾取引の担保とすることは、右取引に対して同協会の保証を得る目的を達する方法として銀行実務においては定着しており、かつ、保証協会業務の一形態として是認されている。

(二) 本件定期預金は貸付代り金で創設されたものであるから、形式上は即時両建預金に該当することになるが、信用状の開設を希望する取引先が必要とし、その取引先の事情によるものであり、また、貸付の条件として、その一部又は全部を拘束する場合の如く実質的金利を高めることを目的とするものではない。したがつて自粛対象となる即時両建預金となるものではない。

本件貸付代り金による定期預金の創設、質権設定は、信用状開設等の取引における条件として合理性を有しており、取引先に対し正常な商慣習上是認し難い不当な不利益を与えるものではない。被控訴人支店は、控訴人の業務である外車輸入の営業活動を拡大するための与信枠の拡張の希望に応じ、継続して信用状開設等の与信行為を行い、これに基づき控訴人は、事業資金の運用を行つてきたのである。

三  証拠関係<省略>

理由

一請求原因1、2項の事実は、当事者間に争いがない。

二被控訴人支店が控訴人に対し、昭和四九年一〇月二一日ころ、府及び市の保証協会の保証により三〇〇万円及び二〇〇万円の貸付をなすことを約し同月二五日に二九四万九〇四二円、同月二八日一九一万七六二八円をそれぞれ控訴人の当座預金口座に振込んで融資をしたが、各同日、三〇〇万円及び二〇〇万円を控訴人の定期預金にし、これに質権を設定させたことは、当事者間に争いがない。

控訴人は、右貸付金は事業運転資金とするためのものであるから、これを控訴人に無断で定期預金にして、担保として拘束するのは、貸付契約に反すると主張するのに対し、被控訴人は、右貸付金をもつて定期預金を創設し、信用状を開設する等についての担保に提供する旨の合意が成立したと抗争するので、審究する。

1  前記当事者間に争いのない事実、<証拠>によれば、次の事実が認められる。

(1)  控訴人は、昭和四八年一〇月ころから被控訴人支店との間に外国為替取引を開始したが、右取引は、外車の輸入についての信用状の発行及びユーザンスの供与に関するものに限られ、国内の手形に関する取引、貸付等の取引はなされなかつた(控訴人は、国内の取引については他の金融機関を利用していた。)。控訴人は、被控訴人支店との取引を開始するに当つて担保として五〇〇万円の定期預金に質権を、土地建物に債権極度額一〇〇〇万円の根抵当権を設定した。その後右取引は、外車の輸入量の増加にともない、次第に拡大し、その間に控訴人は、担保として大和銀行の株式六〇〇〇株を差入れ、昭和四九年二月には前記根抵当権の債権極度額を二〇〇〇万円に増加し、さらに廻り手形を担保に提供し、与信額の拡大を強く要請した。

(2)  控訴人が被控訴人支店に担保として提供した不動産の担保価格について被控訴人支店は、同年九月現在で二六七六万九〇〇〇円(時価の八割相当)と評価したので、担保価格の合計額は、右金額に定期預金五〇〇万円、株券一二〇万円(時価一株二五〇円の八割)等を加え三五〇〇万円であつた(担保手形は、当初はディーラー振出の手形を差入れていたが、後に差入れられた手形は殆んど担保価値がなかつたので、控訴人に返還された。)。

一方控訴人についての信用状の発行、ユーザンス供与等による与信額は、同年七月ころより急激に増加し、同年七ないし九月末の与信額はいずれも三九〇〇万円以上となり、担保価格をはるかに超えていた。その後も昭和五〇年一月末を除き右金額を降ることはなかつた。同四九年八月末から同五〇年六月二五日までの各月末の与信額は、別紙比較表の「認定額」欄記載のとおりである(なお、右金額は記帳レート一ドル三〇八円の換算率で換算したものである。為替相場が変動する以上外貨手形を満期に支払うについては、そのときの為替相場をもつて換算した邦貨をもつてするが事前に与信額を邦貨に換算して記帳するについては一定の換算率によるのは相当であるといわなければならない。)。

そこで被控訴人支店は、右担保の不足については担保として手形の差入れを受けていたのであるが、前記の如く差入れられた手形が担保価値のないものになつたので、同四九年九月、担保価値のない手形をとるより不動産の担保価値を確保しておく方がましであると考え、前記担保不動産についての債権極度額を担保価値をこえることを承知の上で三五〇〇万円に増額し、担保不足を形式上減少させた。そのため右不動産の担保価格の不足を補強し、さらに控訴人の与信額拡大の要請に応じるためには新たに五〇〇万円の担保の提供を受ける必要があつた。

(3)  ところが控訴人は、他に担保とすべき資産を有しなかつたので、被控訴人支店は、控訴人に対し、府及び市の保証協会の保証により被控訴人支店が控訴人に合計五〇〇万円の貸付をなし、右貸付金を定期預金にしてこれを担保として被控訴人支店に提供する方法を提案した。控訴人は、当初利子差額の負担を考えて躊躇したが、大した負担にならないとの説明により結局提案に応じ保証協会に対し保証委託の申込をすることになり、控訴人と被控訴人間において、前記方法による貸付金五〇〇万円をもつて定期預金を創設し、これを信用状開設等の担保に提供する旨の合意が成立した。

(4)  そこで控訴人及び被控訴人支店は、同四九年一〇月二五日及び同月二八日に府及び市の保証協会に対し、信用保証依頼の手続をなし、被控訴人支店は、同月二五日府の保証協会の保証による三〇〇万円の証書貸付をして、利息五万〇九五八円を差引いた二九四万九〇四二円を、同月二八日市の保証協会の保証による二〇〇万円の証書貸付をなして、利息三万三九七二円及び保証料四万八四〇〇円を差引いた一九一万七六二八円をそれぞれ控訴人の当座預金口座に振込んだ。

(5)  被控訴人支店は、同月二三日ころ控訴人代表者の来店を求め、前記合意に基づいて貸付金による定期預金の創設及び質権設定の手続をするために必要な各書類についてその趣旨を説明して予め控訴人代表者の署名(記名)及び押印を得た。即ち、控訴人代表者は、金銭消費貸借契約証書二通の債務者欄に記名印を、その名下に印鑑をそれぞれ押印し、定期預金印鑑票二通のお届け印欄に印鑑を押印し、定期預金担保差入証書二通の債務者及び担保提供者兼連帯保証人欄に住所、会社名、代表者氏名を自署し、印鑑を押印した。その余の記載は、記載事項が確定した同月二五日及び同月二八日に被控訴人支店の担当者が控訴人代表者に代つてこれをなし、各書類を完成した。そして被控訴人支店は、前記二五日及び二八日に振替支払票により各貸付金額三〇〇万円及び二〇〇万円を当座預金から定期預金に振替え、右各定期預金に質権を設定させ、これを拘束した。被控訴人支店では、継続的な取引のある顧客については、銀行取引の書類の記載を客の依頼により行員が代行することがあり、また、定期預金印鑑票の届印の押印をもつて預金者の意思を確認して小切手、払戻請求書等によらず、行内振替の手続により便宜当該預金者の他の口座から定期預金に振替える取扱いがなされることもあつた。

(6)  控訴人が右貸付代り金が定期預金として拘束されたことを知つた後もそれについて何らの異議を申述べることもなく、その後もさらに信用状の発行等を要請し、与信額は、別紙比較表「認定額」欄記載のとおり増加を続けた。

<証拠判断略>。また、<証拠>を総合すれば、同四九年八月末から同五〇年六月二五日までの各月末のユーザンス供与額は、別紙比較「甲第一七号証等」欄の「ユーザンス」欄記載のとおりであり、また甲第二一号証に基いて計算した右各月末の信用状発行額は、同L/C欄記載のとおりであつて、同比較表の「認定額」欄と比較すれば、両者の間に、月によつて多少の額の差はあるけれども(同比較表「認定額との対比」欄の記載のとおり)、換算率の相違(「甲第一七号証等」欄は、同五〇年二月二五日以降を除き、それ以前の分は外貨手形引落時の為替相場による換算額)、信用状の終期の相違(「甲第一七号証等」欄の信用状の終期は、外貨手形振出日までとして計算したが、「乙第二〇号証」欄は、さらに数日後までとして計算しているものと見うけられる。)等を考慮に入れるときは、前記各証拠は、いずれも、いまだ控訴人に対する与信額についての前記認定を左右するに足らず、他に前記各認定を左右するに足る証拠はない。

2  控訴人は、担保不動産の価格が債権極度額三五〇〇万円相当であつて、新たに担保を提供する必要はなかつたと主張する。<証拠>によれば、本件担保不動産の隣の土地建物が昭和四九年四月に売買されたこと、同不動産についての大和銀行本店不動産部の評価額が三五〇〇万円であつたことが認められる。しこうして<証拠>によれば、右土地建物と本件担保不動産とは、建物とも面積において大差がないことが認められ、その価格についての建物の価格の占める割合の少いことを考慮すれば、建物の構造、使用材料、建築時期等を比較するまでもなく、両土地建物の価格は大差がないものといつて差支えないが、それにしても担保価格を時価の八割に評価するとすれば、前記評価額によつても昭和四九年当時の本件担保不動産の担保価格は二八〇〇万円となる。

さらに<証拠>によれば、本件担保不動産に対する競売事件において鑑定人は、三〇九七万一〇〇〇円(昭和五四年七月一九日)と評価し、同五五年四月二四日の入札期日における最高入札額は三〇〇五万円であつたことが認められ、不動産価格の高騰を考えれば、昭和四九年一〇月当時の価格に換算すれば相当低額になるものと考えられる。

以上の各事実を勘案すれば、昭和四九年一〇月当時の本件担保不動産の担保価格は、二六七六万九〇〇〇円が相当であつて、到底三五〇〇万円であつたと認めることはできない。

控訴人は、当時外国為替取引の信用供与などを求めていなかつたとも主張するが、その後も控訴人の要請により取引額が拡大したことは、前認定のとおりであつて、控訴人の右主張も理田がない。

控訴人は、さらに小切手の振出によらずして定期預金に振替えられ、また念書を徴しあるいは担保預金通帳に記入する等方法をとつていないことに徴し、定期預金担保につき承諾していなかつた旨主張する。控訴人主張の如き手続をとり、さらに預金証書の受取欄に預金者の署名押印がなされておれば、定期預金担保提供の意思が確実に認められることはいうまでもないが、これらの方法は、いずれも当座預金から定期預金への振替及び担保設定の要件ではないのみならず、控訴人は、前認定のとおり、定期預金拘束の事実を知りながら何らの異議を申述べることもなく、その後も右担保を利用して信用供与を受けていたのであつて、単にその主張の如き手続方法がとられていないことをとらえて、前記認定を覆し、控訴人の承諾なくして、当座預金から定期預金に振替え、これを担保として拘束したものということはできない。

3  以上の認定事実によれば、本件保証協会の保証付き貸付金は、控訴人の国内における事業運転資金とするためのものではなく、控訴人の外国為替取引についての担保不足を補うため新たに担保を提供することを目的とするものであつて、控訴人と被控訴人間のその旨の合意に基づき当座預金に振込まれた右貸付金を定期預金に振替え、これに質権を設定して拘束したものであるから、右事実をもつて貸付契約の債務不履行とする控訴人の主張は理由がないといわねばならない。

三次に控訴人の不法行為の主張について、順次判断する。

1  控訴人は、小切手等によらずして当座預金から定期預金へ振替えた手続が違法であると主張する。本件貸付金が振込まれた当座預金から控訴人振出の小切手もしくは払戻請求書によらず、振替支払票によつて定期預金に振替えられたが、それは、控訴人と被控訴人との合意に基づき、その履行として、さらに定期預金印鑑票に控訴人の押印を得て控訴人の定期預金創設の意思を確認したうえ前記の如き便宜の措置をとつたものであつて、銀行内部の事務処理手続として何らの瑕疵はなく、しかもこれにより控訴人の権利利益を害するものではないから、控訴人に対する不法行為に当らないものといわねばならない。

2  次に控訴人は、保証協会の保証付貸付代り金による預金の拘束は禁止されていると主張する。<証拠>によれば、保証協会は、信用保証協会法第二〇条に定める業務のうち一号業務(金融機関からの貸付金等による債務の保証)より行わず、二号、三号業務(副保証)を行つていないため、担保を有しない中小企業者等が信用状の開設等外国為替取引による与信に対して直接保証協会の保証を得ることができないので、それに代る便法として、保証協会の保証による貸付代り金で定期預金を創設し、信用状開設等の担保とする方法が銀行実務において定着し、かつ、保証協会の業務の一形態として是認されていることが認められ、右認定に反する証拠はない。してみれば、前記方法は、信用保証協会法第二〇条第二号の業務の目的を達するため必要に迫まられてとられている方法と考えられ、かつ、中小企業者等に対する金融の円滑化を図ることを目的とする(同法第一条)信用保証協会制度の趣旨に副うものと考えられるから、同法がかかる方法を禁止しているものということはできない。

控訴人は、本件貸付金は事業運転資金に利用する目的ということで保証協会の保証を得たのであるから、後に右貸付代り金を定期預金とすることは、目的変更であつて、同法に違反するとも主張する。控訴人の主張するところは、保証協会と金融機関との約定により単に保証協会の保証免責の事由となり、被控訴人が保証協会に対し代位請求ができなくなることが考えられるにとどまり<証拠>により認められる統一約定書例により、府及び市の保証協会の約定書を推認するに難くない。)、控訴人に対する不法行為となるものではないから、控訴人の主張は理由がない。

3  控訴人は、本件定期預金を拘束したのは即時両建預金に当り、不公正な取引方法であつて、独占禁止法に違反すると主張する。

本件定期預金は、本件貸付代り金をもつて貸付の日に創設されたものであるから形式上は即時両建預金に当るといえる。しかしながらさきに認定したとおり、本件定期預金は、控訴人と被控訴人支店との信用状開設等の外国為替取引についての担保の不足を補うために新たに担保に提供するとの合意に基いて貸付代り金をもつて(控訴人には他に担保とすべき資産がなかつたので)創設されたものであつて、したがつて右担保の提供は、控訴人の外国為替取引のための必要からなされたものである(本件貸付金は無担保貸付である。)。本件貸付並びに定期預金の拘束は、金融機関が貸付の条件として強制してその一部を拘束して実質的金利を高め、不当に暴利をむさぼる手段としてなされたものとは異るから、自粛の対象となる即時両建預金に当らないものといわなければならない。しこうして前認定のとおり右担保の補強により控訴人の要請に応じ与信額の拡大に協力したのであつて、控訴人はそれにより外車輸入の営業活動を拡大してきたのであるから、本件貸付並びに定期預金の拘束は、むしろ控訴人にとつて利益であり、被控訴人が経済的優位にあることを利用して、正常な商慣習上控訴人に不利益を与えるものということはできない。

よつて控訴人の即時両建預金禁止の違反、不公正取引についての主張は理由がない。

四以上の次第であるから、被控訴人には控訴人の主張する債務不履行及び不法行為の責任を問うべき事実は認め難いといわねばならない。してみれば、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の本訴請求は理由がないから、これを棄却すべきである。

よつて右と同旨の原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとして、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(小林定人 永岡正毅 山本博文)

比較表<省略>

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