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大阪高等裁判所 昭和55年(ネ)2069号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

二、そこで、被控訴人主張の免責の抗弁について判断する。

1 <証拠>を総合すると、次の事実を認めることができ、右認定を左右するに足る資料がない。

(一) 本件事故現場は、山陽電鉄西代駅の北西側に位置し、同電鉄の軌道敷に沿つた幅員約18.4メートルの道路上で、道路中央付近の同電鉄と立体交差する西代陸橋の円形・コンクリート製橋脚(直径約三メートル)の南側付近である。右道路は右橋脚を円形に取り囲むガードレール(直径約5.5メートル)ならびに右橋脚から東方に接して設置されているゼブラゾーンおよびガードレールが存在するため、右橋脚により南北に分断されており、その南側が西行車道、その北側が東行車道となつている。

(二) 右西行車道の幅員は、わずか約4.0メートルにすぎないが、東行車道の幅員は一定していないものの、その約二倍を超えている。そして、西行車道には幅員約1.5メートル、東行車道には幅員約6.0メートルの各歩道が設けられている。前記コンクリート製橋脚を中心としてその約三〇メートル東方には、西行および東行車道と直角に交差する横断歩道があり、右橋脚の南東側と南西側に山陽電鉄西代踏切および西代西踏切がそれぞれ存在し、各踏切を経て幅員約一一メートルおよび幅員約九メートルの二個の道路が右西行車道と交差しているほか、右橋脚の南側には幅員約4.0メートルの西行一方通行道路、また右橋脚の北西側には幅員約5.6メートルの南行一方通行道路が存在する。現場付近は、右橋脚を中心にして右各道路が変則的に交わる交差点であるうえ、南行一方通行道路の交差点手前には信号機が設置されているが、そのほかの交差点は入口に信号機が設置されておらず、交通整理も行われていない。さらに、現場付近道路の制限速度は毎時四〇キロメートルであるが、西行一方通行道路および南行一方通行道路のそれは、ともに毎時二〇キロメートルである。

(三) 右のような道路状況のもとにおいて車両が西行車道を西進して西行一方通行道路に進入するには、右コンクリート製橋脚の南側を経て交差点内をそのまま直進すればよく、同車両に格別の徐行義務はないが、車両が南行一方通行道路から南下して同交差点に進入した後、前記西代踏切の設置された道路へ通り抜ける場合には、同交差点内でいつたん東行車道に入り右橋脚の北側を経てその東側をまわるようにして進行すべきことが車両の通行方法として当然に予定されており、ことに右車両が自転車である場合には右橋脚の北側を経て東行車道を進行し、前記横断歩道の手前で右折し右横断歩道にそつて南進徐行すべきことが予定されている(道路交通法三四条三項、一七条三項、一八条一項参照)。そして、西行車道上の車両にとつては、右横断歩道付近において南行一方通行道路の入口付近方向を見通すことはできるが、そのまま西進して行けば途中から右橋脚の影に隠れて同方向を見通すことが全くできなくなる。しかし、また右橋脚と右西代踏切西側に近い西行車道の南側歩道端の鉄柱とを結ぶ線を超える西行車道付近以西(原審検証調書見取図点を結ぶ線付近以西)においては、進行方向を注視すれば右橋脚の左側を通過して同交差点を南進する車両・自転車を発見することができる。他方、南行一方通行道路から南下した車両が同交差点内に進入した後、前記の通行方法を採らずにそのまま南進して右橋脚の西側からその南側をまわる場合には、右橋脚が大きいためこれに近づくにつれて西行車道上の車両の進行状況を十分に見通すことができず、したがつて右のような通行方法は極めて危険性の高いものである。

(四) もつとも、付近には小学校や中学校があり、また歩行者や自転車乗車者の中には本件交差点の北側から南側へ横断するにあたり、東行車道沿いの前記歩道を東進して前記横断歩道または車道を南進する正規の方法をとらずに右橋脚の西側車道上を経てその直近西側から西行車道上を横断する者も間々あつたが、その場合でも、右のような橋脚付近の道路状況から、右橋脚の南側(西行車道)を進行して来る車両に注意するため右橋脚直近でいつたん停止するのが通例であつた。したがつて、自転車を運転する者としては、右と同様に橋脚直近の西側道路上を南進する場合には、なお一層右のようないつたん停止する必要があつた。

(五) 被控訴人は被控訴人車を運転して前記車道を西進中、前記横断歩道の手前で同所を横断中の歩行者が通過するのを待つていつたん停止をした後、前記西行一方通行道路に向うため再び発進し、進行方向左側の西代踏切および左前方の西代踏切、さらには進路前方の西行一方通行道路の方向へと視線を変えつつ、時速約二〇キロメートルの速度で西行車道の左側を西進し、前記コンクリート製橋脚の南側まで接近した際、突然右斜め前方から被害者の運転する自転車が右橋脚の影から走り出て来たのを発見した。被控訴人は右発見時まで被害自転車の存在を全く認識しておらず、右発見した時には両車両の間隔はほとんどなく、被控訴人はブレーキを踏んだりハンドルを左に切る等の処置を採るひまもないまま、自車の前輪を被害自転車の前輪に衝突させた。右衝突の際、被控訴人は左側へ強く倒され、自車の左側を下にして転倒した。

(六) 他方、被害者<編注、中学生>は学校からの帰宅途上、自転車を運転して前記南行一方通行道路から本件交差点内に進入するにあたり、前記信号機による信号に従い停止した後、本件交差点を通過して前記西代踏切に設置された道路に向うため再び青信号によりペダルを踏んで発進し、そのまま同交差点内を南進して前記橋脚の西側直近の車道からその南側へまわりかけた瞬間に西行車道を進行していた加害車と衝突した。被害者は、右衝突の直前まで加害車の存在を全く認識していなかつた。右交差点内における右通行方法は、自転車運転者としては守るべき前記通行方法に違反するが、被害者が通学のために日常採用していた方法である。被害者は、右橋脚の直近西側から南側西行車道に進出する際には、右道路がゆるい下り坂のためペダルを踏まずに進行したが、その際いつたん停止をしなかつた。

(七) 本件事故後、右橋脚の真南には西行車道の中央部左寄りに二個の擦過痕があり、その西側の擦過痕から西へ約1.5メートルの地点に被害者の転倒地点とみられる血痕があつた。控訴人の転倒地点は右擦過痕の付近であるとみられる。また、加害車両はその車高が被害車の自転車より低く、車長も短い排気量七〇ccの自動二輪車であつた。

2 以上の認定事実によれば、本件事故は主として被害者が本件交差点内における前記正規の通行方法に違反し、あえて危険な方法で前記橋脚の西側直近から西行車道を横断しようとしてその場でいつたん停止せず漫然と西行車道に自転車を進入させた過失に基因するものであるが、他方、被控訴人が無過失であつたと断定できるかについては、前記認定の事実関係のもとでは検討を要する。すなわち、被控訴人が控訴人の自転車を発見したときには、すでに事故回避の可能性がなかつたし、また西行車道を正規の方法で西進していた被控訴人に対しては、一般的には交通法規にあえて違反して右橋脚の影から一時停止しないで自車の進路前面に逆行して進入しようとする自転車のありうることまでも予見すべきことを求めるのは、困難である。しかし、本件交差点が変則的交差点であるうえ、通常の見通しのよい交差点内と異なり前示のような橋脚等のある特殊な場所に位置しており、かつ、被害者と同様の通行方法を採る者が時としてあり、その事実は同じ区内に居住し日常自動車を運転(前掲証拠によれば被控訴人は昭和四五年大学卒業以来、家業の青果物仲買商を手伝い軽ライトバン等で商品配達、店舗での販売に従事し、かつ、乗用車も運転)していた被控訴人も知つていたと推認できる。また、被控訴人がこのような特殊な交差点内で要求される程度の注意をしていたならば、前記橋脚の西側から南進して来る被害者を今少し手前で発見し、発見が早ければ避譲措置も可能であつた。したがつて、被控訴人が進行方向の左側および左寄りの前方にある踏切ならびに西行一方通行道路に注意を集中していたため、被害者を発見することが遅れたことも本件事故の原因となつたものといわねばならず、控訴人の前記過失に比較すれば軽度ではあるがなお、被控訴人にも法律上の過失があつたものというべきである。

してみると、被控訴人の右免責の抗弁はその余の点について判断するまでもなく失当であつて採用できない。

三、そして、前記認定の事実関係のもとでは本件事故発生の責任原因としての双方の過失割合は、被害者八に対し被控訴人二と認めるのが相当である。

(栗山忍 坂上弘 村上博巳)

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