大阪高等裁判所 昭和55年(ラ)81号 決定 1980年4月03日
抗告人
川口三重子
右代理人
吉川実
関係人
吉山花子
主文
原審判を次のとおり変更する。
本籍大阪府堺市○○町○○番地筆頭者吉山花子の戸籍を全部消除し、本籍大阪府堺市○○町○○番地筆頭者大谷花子の戸籍(除籍)につき、昭和五四年五月二日付除籍事項を消除のうえ、同戸籍を回復することを許可する。
関係人吉山花子のその余の戸籍訂正許可の申立を却下する。
理由
一抗告の趣旨及び理由
別紙記載のとおり。
二当裁判所の判断
1 当裁判所も、関係人吉山花子についてされた昭和五四年五月二日亡夫太郎の親族との姻族関係終了の届出及び同日婚姻前の氏に復する届出はいずれも花子の意思に基づかないものであると判断するものであつて、この点に関する事実の認定は、原審判一枚目裏五行目から一三行目までの記載と同一であるから、これを引用する。
2 そこで、本件戸籍訂正許可申立の当否について検討する。
夫死亡後、妻の意思に基づかないでその親族から妻の復氏届が提出されたため右届出に基づく戸籍記載がされた場合には、妻本人の意思に基づかない創設的届出により無効な戸籍記載がされたものとして、戸籍法一一四条により右戸籍記載の訂正を申請しうるものである。しかし、姻族関係終了届出が生存配偶者の意思に基づかない無効のものである場合には、姻族関係の終了は身分関係上の権利義務に重大な変動を生ぜしめるものであるから、生存配偶者は、右届出の無効を理由としてこれによる戸籍記載の訂正を求めるためには、戸籍法一一六条の規定により姻族関係存在確認の確定判決又は審判を得たうえで戸籍訂正の申請をしなければならないものと解するのが相当である。
そうすると、関係人吉山花子の本件申立のうち復氏届出に基づく戸籍記載の訂正の許可を求める部分は理由があるが、姻族関係終了届出に基づく戸籍記載の訂正を求める部分は失当といわなければならない。
よつて、原審判中右と判断を異にする部分は不当であるから、原審判を変更することとし、主文のとおり決定する。
(大野千里 岩川清 島田禮介)