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大阪高等裁判所 昭和55年(行コ)9号 判決 1981年1月30日

控訴人(原告、選定当事者) 坂本順吉 外一三名

控訴人(原告) 砥堀二区自治会 外六名

被控訴人(被告) 建設大臣

訴訟代理人 小林茂雄 浅尾俊久 西野清勝 外六名

主文

本件各控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人が昭和四八年一一月一九日日本道路公団に対し原判決別紙図面表示の路線による山陽自動車道新設を認可した処分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、次に付加・訂正するほか、原判決事実摘示中控訴人ら関係部分記載のとおりであるから、これを引用する。

(訂正)

原判決九丁表七、八行目及び八、九行目の各「自動車道」をいずれも「自動車国道」と改め、一一丁表五行目及び一二行目の各「の訴え」、一二丁表末行の「道路整備特別」をいずれも削除し、一三丁表五行目の「日本道路公団法」の次に「(以下、公団法ともいう。)」を挿入し、一五丁裏五行目、一六丁表三、四行目及び四行目の各「本件自動車道」をいずれも「本件道路」と改める。

(控訴人らの主張)

一  公団は独立の法人であつて、被控訴人の下級行政機関の立場に立つものではない。すなわち、

高速自動車国道の新設又は改築(以下、新設ともいう)の権限は被控訴人にあるが、有料道路としての高速自動車国道の新設は公団法一九条一項一号により公団の独自の権限であつて、被控訴人の権限を代行施行するものではない。従つて有料の高速自動車国道である本件道路の新設について、公団が被控訴人の下級行政機関の立場に立つものではない。もつとも、公団は、有料の高速自動車国道の新設等について措置法に基く被控訴人の監督を受けるほか、公団法上、一般的に被控訴人の監督を受けるが、前者は高速自動車国道の公共性や公益性に由来するものであつて公団の行政機関性とは全く無関係であるし、後者は公団の資本が政府出資にかかることから公有財産に対する国民のコントロールの必要があること、公団の業務の公共性等によるものであつて、いずれも下級行政機関に対する上級行政機関としてなす行政の一体性の立場からの監督とは意味が異なるものである。更に、日本国有鉄道等の如くその予算、決算等が国会で審議され直接国会の統制のもとにおかれている組織体は、これを具体的な法律関係のもとで行政機関とみることも可能ではあるが、公団の場合には国会による統制の手段が制度的に何ら確保されていないのであるから、これを国家行政組織の一環とみることはできない。

二  措置法二条の二を被控訴人から公団に対する権限の委任と解し、本件認可を上級行政機関と下級行政機関との間の内部的承認と同視すべきものと解すると、次の如き矛盾を生ずる。

1  首都高速道路公団法、阪神高速道路公団法及び本州四国連絡橋公団法(以下、三公団法ともいう。)における被控訴人と首都高速道路公団、阪神高速道路公団及び本州四国連絡橋公団(以下、三公団ともいう。)との関係を定める諸規定は、公団法の諸規定とほぼ同一であるから、被控訴人の立論によれば、被控訴人と三公団との関係も上級行政機関と下級行政機関の関係にあり、措置法七条の三及び本州四国連絡橋公団法三一条による被控訴人の各認可も行政機関相互間の内部的承認であると解しなければ論旨が一貫しないが、被控訴人は首都高速道路、阪神高速道路及び本州四国連絡道路の新設権限を有するものではなく、三公団に対してこれら道路の新設権限を委任するということがない(三公団については措置法二条の二に相当する規定がない。)から、措置法七条の三及び本州四国連絡橋公団法三一条の各認可を行政機関相互間の内部的承認と解することは不可能であつて、結局措置法二条の三の認可と右各法条の認可とを統一的に解釈できないこととなる。

2  措置法三条は、公団が有料の一般国道等を新設する場合には被控訴人の許可を要するものと規定しているところ、被控訴人の立論によれば、この場合も公団は被控訴人の下級行政機関であり、右許可は下級行政機関である公団に対する監督手段としてなされる承認であるというほかないが、かくては措置法が二条の三と三条とで認可と許可とを区別して使い分けしていることが全く無意味となるし、また、措置法三条の許可を行政機関相互間の内部的承認と解すると、措置法が、有料道路の新設について、公団が行う場合(三条)、地方道路公社が行う場合(七条の一二)、道路管理者が行う場合(八条)のいずれも、ひとしく被控訴人の許可を要すると規定しているのに、公団が行う場合の許可だけは後二者に対する許可とは異質な内部的承認であると解さざるを得ない結果に陥ることとなる。

(被控訴人の主張)

控訴人らの前記主張はいずれも争う。

理由

一  当裁判所も本件各訴はいずれも不適法として却下すべきものと判断するものであつて、その理由は、次に付加・訂正するほか、原判決理由記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一七丁裏三行目の「審議会」を「国土開発幹線自動車道建設審議会」と、一一行目の「自動車道」を「自動車国道」とそれぞれ改める。

2  同一八丁表三行目の「〔道路整備特別措置法(以下措置法という)二条の二〕」を「(措置法二条の二)」と、四行目の「自動車道」を「自動車国道」と、一〇行目の「工事実施計画」を「工事実施計画書」とそれぞれ改め、八行目の「(縮尺二〇〇〇分の一)」を削除する。

3  同一九丁表六行目の「(以下公団法という)」を削除する。

4  同二〇丁裏四行目の「自動車道」を「自動車国道」と改め、一二行目の「行政主体としての国から独立し、」を削除し、一三行目の「特殊の行政主体」を「法人」と改める。

5  同二二丁表四行目から裏一行目の「することができないから、」までを、「主張するが、本件認可は、前記の如く行政機関相互間の内部的な承認行為であつて、設権的性質を有するものとはいえないから、」と、裏四行目の「主張し、」を「主張するが、」とそれぞれ改め、五行目から七行目の「解されるが、」までを削除する。

6  同二三丁表八行目の次に左のとおり挿入し、九行目冒頭の「四」を「六」と改める。

「四 控訴人らは、公団が実質上被控訴人の下級行政機関であることを争い、有料の高速自動車国道の新設は公団の独自の権限に属する旨主張するが、高速自動車国道の新設の権限は高速自動車国道法六条により被控訴人のみに帰属し、被控訴人は措置法二条の二により公団に対してその代行施行を命じ得るとともにその料金を徴収させることができるものとされているのであつて、公団法一九条一項一号は、公団が、高速自動車国道については右施行命令を受けて、一般国道、都道府県道及び道路法七条三項に規定する指定市の市道については措置法三条の許可を受けて、それぞれ有料道路として新設することを公団の業務の一つとして規定したに過ぎないものであるから、右公団法の規定を根拠に有料の自動車国道の新設は公団の独自の権限に属するとする控訴人らの主張は失当である。次に、公団法に規定された公団の設立目的、公団の資本金が全額政府出資であること、公団の総裁、監事等役員の任命関係のほか、公団の業務、財務及び会計についての被控訴人の監督等の諸点からすると、被控訴人の公団に対する監督は、正に行政の一体性に基くものであるというを妨げないものであつて、公団は実質的には国と同一体をなし、機能的には被控訴人の下部組織を構成するものと認めるべきであり、公団の工事実施に対する措置法上の被控訴人の監督が、右工事の公共性や公益性に由来する面があるとしても、被控訴人と公団との右の如き関係を否定すべきものではない。また、公団の予算は被控訴人の認可を、財務諸表はその承認をそれぞれ受けるべきものとされていて(公団法二二条、二四条)、右予算等が直接国会において審議される制度にはなつていないが、議院内閣制のもとでは国会に対して直接答責するものは内閣であるから、これを構成する主務大臣によるコントロールが行なわれれば、国会によるコントロールと同視し得るものというべきである。

以上の次第であるから、公団が被控訴人の下級行政機関の立場に立つことを争う根拠として控訴人らの主張する点は、いずれも失当であつて採用できない。

五 控訴人らは、本件認可を行政機関相互間の内部的承認であると解すると、措置法二条の二の如き規定のない首都高速道路公団及び阪神高速道路公団についての措置法七条の三並びに本州四国連絡橋公団についての同公団法三一条の各認可との間に解釈の不統一を来たす旨主張するが、三公団の役員の任命、業務、財務及び会計についての被控訴人の監督等に関する三公団法の諸規定は公団法の諸規定とほぼ同様であるから、三公団の各設立目的及び各業務内容等を考え合せると、三公団も実質的には一種の政府関係機関とも称すべきものであつて、機能的には被控訴人の下部組織を構成し、広い意味での国家行政組織の一環をなすものと考えられるし、また、三公団が首都高速道路、阪神高速道路又は本州四国連絡道路を建設するについては、先づ被控訴人が右各道路の新設についての基本計画を定めてこれをそれぞれ三公団に指示するものとされ(三公団法各三〇条)、三公団は右基本計画に従い工事実施計画書を作成して被控訴人の認可を受け(措置法七条の三、本州四国連絡橋公団法三一条)、これに基づいて右各道路の新設を行うことができるものとされているのであつて(措置法七条の二、七条の七)、以上の諸点からすると、措置法七条の三、本州四国連絡橋公団法三一条の各認可も措置法二条の三の認可と同様の性質を有するものと解するのが相当であるから、右各認可との間に解釈の不統一を来たすということはない。

また、控訴人らは本件認可を前記の如く解すると、措置法三条の許可も右と同様に解しなければならない旨主張するが、右許可は公団が有料の一般国道、都道府県道及び道路法七条三項に規定する指定市の市道の新設に関するものであつて、高速自動車国道の新設の場合とは異なり被控訴人の整備計画はなく、またその施行命令も先行しない場合であるので、本件認可と右許可とが同一性質の行為であるということはできない。

以上の次第で、控訴人らの右主張もまた採用することができない。」

二  そうすると、前記判断と同旨の原判決は相当であつて、本件各控訴はいずれも理由がないから民訴法三八四条によりこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき同法八九条、九三条、九五条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 仲西二郎 林義一 大出晃之)

選定者目録<省略>

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