大判例

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大阪高等裁判所 昭和56年(う)1392号 判決 1982年1月26日

主文

原判決を破棄する。

被告人を原判示第一の罪について懲役一年六月に、原判示第二の罪について懲役一〇月に処する。

押収してある回転弾倉式改造けん銃二丁(当庁昭和五六年押第四八三号の一、三)及び回転弾倉式真正けん銃(当庁前同号の二)を没収する。

原審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人井関和彦作成の控訴趣意書及び弁護人久万知良作成の控訴趣意補充書各記載のとおりであり、これに対する答弁は、検察官大村須賀男作成の答弁書記載のとおりであるから、これらを引用する。

控訴趣意中、事実誤認の主張について

論旨は、原判決が、原判示第一の改造けん銃の所持についての補足説明中で、けん銃の発射機能は異常がなかつたが、弾倉が自動的に回転しなくなつたので分解したとしている点、及び右けん銃を分解して保管していた際補修用部品若干もいつしよに保管していたとしている点は事実を誤認している、というのである。

よつて、記録を精査して検討するに、原判決の右説明部分は、その全体を仔細に読めば、原判示第一の各けん銃は分解されてはいても結局発射機能を有するけん銃と認められることを述べているものであつて、その結論は正当である。所論指摘の前者の点は、単に分解の動機を述べただけでそのこと自体証拠に照らして誤りはなく、また後者の点も、「補修用」というのは本件けん銃の補修用というのではなく広く補修のために役に立つ部品をいうものと解せられるから証拠に照らし誤認があるとはいえない。その他所論にかんがみ記録を精査してみても原判決に事実誤認の廉は認められない。論旨は理由がない。

控訴趣意中、法令適用の誤の主張について

論旨は、原判決は、原判示第一の各けん銃の分解された部品の保管をもつて「けん銃の所持」と解しているが、右部品を単に組み立てただけでは発射機能を有しないのであつて、被告人はこれらを使用に耐えないものとして補修の意図なくロツカーにしまつていたものであるから、これをもつて「けん銃の所持」とは解せられない、したがつて原判決には法令適用に誤がある、というのである。

よつて、記録を精査し当審における事実取調の結果をもあわせて検討するに、原判決が挙示する関係証拠及び被告人の当審公判廷における供述によれば、分解された右各けん銃の組立は容易にできるものであること、そのうち真正けん銃は弾倉を熔接すれば単発での発射機能は十分回復するもので被告人はその意図及び能力を有していたこと、改造けん銃の方も原判決が指摘しているような容易な工作ないし補修により発射機能を回復するに至るものであつて、被告人はこれらをロツカー内に入れて施錠し右補修の意図を放棄した形跡はなかつたことがそれぞれ認められる。右事実に照らせば右各けん銃を分解した部品を保管していたことが銃砲刀剣類所持等取締法三一条の二・一号、三条一項にいうけん銃の所持に該当することは明らかであつて、原判決の法令の適用には何らの誤もない。論旨は理由がない。

控訴趣意中、審理不尽の主張について

論旨は、原判決は、その主文において二つの懲役刑を言渡しているが、原判示第二の罪のけん銃の所持の日を確定裁判の確定日以前にするよう適切に釈明権を行使して訴因変更を促せば一つの刑として言渡すことが可能だつたのであるから、

これをしなかつた原審の訴訟手続には審理不尽の違法がある、というのである。

よつて按ずるに、検察官が、右けん銃を被告人所有の自動車から押収した日(継続していたけん銃所持の最終の日)を所持の日としたことは継続犯の起訴として不当なところはない。したがつて裁判所は所論の如き訴因変更を促す筋合はない。論旨は理由がない。

控訴趣意中量刑不当の主張について

論旨は、原判決の量刑は重過ぎて不当であるというのである。

よつて、記録を精査して検討するに、本件各犯行の動機、態様、罪質、被告人の前科歴、ことに被告人は現に暴力団の幹部の地位にあることや、本件と同種の罪等で二回実刑に処せられたことがあること、原判示第一の各けん銃は被告人自身が過去にこれを試射したことがあること、その他諸般の事情に徴すると被告人の刑責は軽視できず、原判決の量刑をあながち不当と断じることはできない。しかしさらに仔細に審究すると、原判示第一の各けん銃はそれぞれ分解されて保管されていたもので単にこれを組み立てただけでは直ちに発射機能を有するに至るものではないこと、原判示第二のけん銃の所持は被告人が自発的に犯行を申告したものであること、被告人の反省度やその家庭事情等にかんがみると、原判決の各量刑はいささか重きに過ぎるものと考える。論旨は理由がある。

よつて、刑訴法三九七条一項、三八一条により原判決をすべて破棄し、同法四〇〇条但書により更に判決する。

原判決が認定した事実にその挙示する各法案を適用して、主文のとおり判決する。

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