大判例

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大阪高等裁判所 昭和56年(う)152号 判決

(1) 本件爆発物は,スキー用ストック(ジュラルミン製)を切断し,長さ約12センチメートル,直径約1.5センチメートル,厚さ約1ミリメートルの管体を作り,その一端にティッシュペーパーを詰め込み,その管体内部に,まず塩素酸カリウムを主成分とするマッチの頭薬約3ないし4グラム(マッチ棒百数十本から削り取ったもの)のうち3分の2位を入れ,次いで起爆装置として,カメラ用小型フラッシュバルブの先端を破って少量のマッチの頭薬を入れたものを入れ,これに連結した電線を管体の他の一端から外部に出したうえ,右バルブに続いてさらに右マッチの頭薬の残り3分の1位を入れてティッシュペーパーを詰め,管体のその一端をアルミホイルで覆い,さらに管体両端をビニールテープで厳重に巻いて密封し,右管体を縦15センチメートル,横5センチメートル,高さ5センチメートルの蓋付のボール紙製の箱に納め,右箱内に入れた9ボルト乾電池とスイッチを管体外部に出た右電線で連結し,さらに一端をスイッチに結びつけた絹糸の他端を箱の上蓋に固定したものであって,上蓋を開けると絹糸が引張られてスイッチが入り,バルブに電流が流れて発熱し,密閉状態のマッチの頭薬が瞬時に爆発する構造となっているものである。

(2) 被告人は,右箱を包装紙に包んで荷造りし,偽名を使って大内宛に郵送し,これを受領した大内が上記店内において北条の見ている前でその包装を解き,左手で箱の底を持ち,右手で上蓋をすこし開けたところ,本件爆発物が爆発し,その結果,大内は加療約14日間を要する左下眼窩,下顎,頸部,右手掌,右拇指,左手掌,左第三,第四指(多発性)切創兼火傷の傷害を,右爆発物から約1メートル位隔たった位置にいた北条は,全治約5日間を要する左大腿打撲傷皮下出血の傷害を負ったほか,爆発音で一時的に耳が聞こえにくくなった。

(3) 右爆発の現場は,間口5.03メートル,奥行6.6メートル,面積33.2平方メートルの店舗内の南西寄りの地点(南側壁面から約1.5メートル,西側壁面から約2.3メートルの地点)であって,右地点から半径約2,3メートル内外の店舗内各所に厚紙片,ビニールテープ片等多数の破片が飛散したが,爆発後司法警察員による実況見分の実施前に粗雑ながら爆発による飛散物が掃き集められたためにこれら飛散物の正確な落下地点はほとんどこれを明らかにしえず,本件爆発物の管体の破裂した3個の破片,変型しているもののほぼ原型をとどめていた乾電池とスイッチは,いずれも,この掃き集められた飛散物の中から回収された。右掃き集めによって影響されていない飛散物の所在位置ないし痕跡として,爆発地点から約4メートル離れた陳列棚にビニール片と厚紙片が落下していたほか,爆発地点から約2.1メートル離れた壁面に爆発の際硬い破片で擦過されたと認められる痕跡が三か所あり,また同所付近のカーテンにも爆発片による圧痕が残っており,さらに床面から約2.56メートルの高さにある厚さ約1センチメートルの天井ボードのうち南側壁面から1.06メートル,西側壁面から2.45メートルの爆発地点からみて斜め上方の位置に爆発により飛散した管体の一部等の硬体が当たって生じたと認められる幅約1センチメートル長さ約2センチメートルの破孔があり(ただし当たった物体は上方に貫通していない),その破孔の約41センチメートル上方のコンクリート天井面に手拳大の面積にわたり,右衝突の際に生じた天井材質の白色飛散物が付着していた。そして,当審鑑定人柴田俊忍作成の鑑定書及び当審証人柴田俊忍の供述によれば,同人の本件爆発物類似の爆発物を製作して行った諸実験の結果も,本件爆発物が,右に認定した本件爆発による爆発物管体の破裂,固形物の飛散,人体の受傷,物の損壊等の事態を発生せしめるに十分な威力を備えていることを裏付けておることが明らかである。

ところで,爆発物取締罰則にいう爆発物は,理化学上の爆発現象を惹起するような不安定な平衡状態において,薬品その他の資料が結合した物体であって,その爆発作用そのものによって公共の安全をみだし又は人の身体財産を害するに足りる破壊力を有するものであることを要し,理化学上の爆発物に一定の限定を加えたものをいうのであることは勿論であるけれども,以上認定した本件爆発物の構造並びにその威力,ことに現に本件爆発の際厚さ約1ミリメートルのジュラルミン製管体を三片に破裂変型させ,爆発によって飛散した右管体の破片等の固型物によって大内,北条の身体に原判示傷害を負わせたほか前認定の壁面の擦過痕,カーテンの圧痕,天井ボードの破孔を発生させていることに徴するならば本件爆発物は,優に公共の安全をみだし又は人の身体財産を害するに足る破壊力を有し,同罰則1条にいう爆発物に該当するものであると認めることができる。

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