大阪高等裁判所 昭和56年(ネ)2473号 判決
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【判旨】
三そこで右弁済が破産法七二条二号により否認しうるかについて検討する。
<証拠>によれば、請求原因二の事実及び長岡登は昭和五四年一二月ころには既に約五〇〇〇万円の借財に追われ、その金策が不能の状態となつていたこと、そこで長岡登はやむなく長年勤務していた社団法人日本証券業協会を退職し、その退職金約一〇〇〇万円をもつて右債務の一割でも二割でも返済し、残債務の返済の猶予ないし棚上げを交渉しようと決意し、同月末退職願を右協会へ提出したことが認められ、右認定を左右すべき証拠はない。
ところで、破産法七二条二号に規定する支払停止とは、債務者が資力欠乏のため支払いをすることができないと考えて、その旨を表示する行為であるが、必ずしも明示的な行為によることを要せず、例えば閉店、逃亡、財産整理などの黙示的な行為による表示であつても足りるものである。本件においては、長岡登は右のとおり支払いに窮し、その債務の一部でも弁済し、債務を整理するため、右退職願を提出したものであるから、右退職願の提出をもつて右にいう黙示の支払停止があつたものと認めるにさまたげない。
(小林定人 惣脇春雄 小林茂雄)