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大阪高等裁判所 昭和56年(ネ)459号 判決 1981年10月14日

本籍 韓国慶尚南道 住所 京都府久世郡

控訴人(附帯被控訴人) 朴栄筍

本籍 韓国慶尚南道 住所 大阪府岸和田市

被控訴人(附帯控訴人) 姜東鎬

主文

本件控訴及び附帯控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人(附帯被控訴人)の負担とし、附帯控訴費用は被控訴人(附帯控訴人)の負担とする。

事実

控訴人(附帯被控訴人、以下単に控訴人という)は、控訴として、「原判決主文第三ないし第五項を次のとおり変更する。被控訴人(附帯控訴人、以下単に被控訴人という)は控訴人に対し二〇〇〇万円及びこれに対する本判決確定の翌日から完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決、附帯控訴につき、「本件附帯控訴を棄却する」との判決を各求め、被控訴人は、控訴につき「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする」との判決、附帯控訴として「原判決中、被控訴人敗訴部分を取消す。控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、第二審とも控訴人の負担とする」との判決を各求めた。

当事者双方の主張及び証拠の提出・援用・認否は、左記の点を附加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

(控訴人の主張)

控訴人は朝鮮民主主義人民共和国の国籍を有し、被控訴人は大韓民国の国籍を有するところ、財産分与は離婚の効力に関する問題であるから、離婚の準拠法に従つて解決されるべきものである。そうすると、法例二六条本文により被控訴人の本国法たる韓国民法によるところになるが、同法は財産分与を認めていない。しかしながら、控訴人と被控訴人とは、ともに日本で出生し、成育して、三五年以上も日本で生活してきている者であり、両者の婚姻生活も一五年にわたり、その間に四人の子女をもうけ、日本の教育を受け、日本の法制度下で生活し来り、日本社会との関連が深く、私生活上、日本人との間に何らの差異もない。右の事情及び本件における控訴人と被控訴人の双方の事情を考えれば、本件において、控訴人が財産分与の請求をなし得なくなる結果を招く法例一六条本文は、個人の尊厳と両性の本質的平等に反するものであつて、憲法二四条に違反し、無効であるというべく、本件においては、当事者双方につき最も牽連性のある住所地法たる日本民法を適用して、控訴人請求の財産分与を認めるべきである。

また、本件の場合に韓国民法を適用して控訴人の財産分与の請求を認めないとすれば、その結果はわが国の公序良俗に反するから、法例三〇条により韓国民法の適用を排除し、法廷地法たる日本民法を適用して、右財産分与の請求を認容すべきである。

(証拠関係)

被控訴人は乙第一ないし第四号証を提出し、被控訴人の当審供述を援用した。

理由

(一)  当裁判所も控訴人の本訴請求は原審認容の限度において理由があり、その余は失当であると判断するが、その理由は、左記の附加・訂正をするほか、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

(1)  原判決五枚目裏一二行目の「成立に争いのない」を「その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したと認められるから真正に成立した公文書と推定される」と、同六枚目表七行目から同六枚目裏一〇行目までを「被控訴人は『控訴人と被控訴人とは曽て事実上の婚姻をしたが、韓国戸籍法所定の婚姻の届出をしていないから、法律上の婚姻関係にはない(韓国民法八一二条)』旨を主張する。しかしながら、法例一三条一項但書によれば、婚姻の方式は婚姻挙行地の法律によるとされているから、控訴人と被控訴人との婚姻については、その婚姻挙行地たる日本の民法及び戸籍法所定の婚姻の届出をすれば法律上の婚姻関係を生ずるわけである。そして、控訴人と被控訴人とは一九六四年三月二六日大阪府泉大津市長に対し日本の民法及び戸籍法所定の婚姻の届出をして受理されたのであるから、韓国法上、右両名の婚姻の届出がなされていないとしても、右婚姻が法律上有効になされたこと勿論である。被控訴人の右主張は失当である。」と各改める。

(2)  原判決六枚目裏一二行目の「弁論の全趣旨」を「控訴人の原審供述」と、同七枚目表六行目の「狭ま」を「狭」と、同八枚目裏七行目の「結果」を「結果の一部」と各改め、その一三行目の「請求は」の次に「法例一六条により」を、その末行の「また」の次に、「、法例一六条、」を各加える。

(3)  離婚の場合において配偶者間に財産分与の請求権を発生させるか否かは、各国がそれぞれの事情に応じて定めるべき性質のものであり、その請求権を発生させないとしても、それは配偶者双方につき等しく発生させないのであるから、別に個人の尊厳と両性の本質的平等の理念に反するわけでもなければ、法の下の平等の理念に反するものでもない。そして、財産分与が離婚の効力に関する問題の一として、法例一六条の適用の結果、財産分与の請求権が発生しない事態が生じても、それは法が予想し是認しているところであり、わが国法上では財産分与の請求権を発生させることにしているからといつて、右事態の発生がわが国の公序良俗に反するとはいい得ない。よつて、法例一六条が憲法二四条に違反する旨、及び本件において控訴人に財産分与の請求権を認めないことはわが国の公序良俗に反するから、法例三〇条の適用により、韓国民法の適用を排除し、日本民法を適用して控訴人に財産分与の請求権を発生させるべきである旨の被控訴人の各主張は失当である(なお、法例一六条が憲法一四条に違反しないことは勿論である)。

(4)  本件に関する当裁判所の認定に反する被控訴人の当審供述は、たやすく措信し難く、他に右認定を覆すに足る資料はない。

(二)  そうすると、原判決は相当であって、本件控訴及び附帯控訴はいずれも理由がないから、それぞれこれを棄却し、控訴費用及び附帯控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小西勝 裁判官 坂上弘 大須賀欣一)

〔参照〕 原審(大阪地岸和田支 昭五三(タ)二七号 昭五五・九・二五判決)

主文

一 原告と被告とを離婚する。

二 原告と被告との間の長女姜美子、二女姜恵淑、三女姜栄蘭、長男姜信明の養育者を原告と定める。

三 被告は原告に対し金三〇〇万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

四 原告のその余の請求を棄却する。

五 訴訟費用はこれを五分し、その二を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一 請求の趣旨

1 主文第一、第二項と同旨。

2 被告は原告に対し金二〇〇〇万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

3 訴訟費用は被告の負担とする。

二 請求の趣旨に対する答弁

1 原告の請求はいずれもこれを棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一 請求原因

1 原告と被告は共に外国人であるが、一九六三年二月二七日結婚式を挙げ、一九六四年三月二六日大阪府泉大津市長に対し婚姻届を提出受理された夫婦であり、原・被告間には一九六四年五月一〇日長女姜美子が、一九六五年一二月六日二女姜恵淑が、一九六七年一二月二一日三女姜栄蘭が、一九七四年四月一〇日長男姜信明がそれぞれ出生した。

2 離婚原因

(一) 被告は貴金属等のブローカーであるところ、原告の実家より資金的援助を受け、今日では月収五〇万円を下らないにもかかわらず、結婚当初より家庭を全く顧みず、原告及び子供に対する愛情に欠け、生活費をほとんど交付せず、原告に対しては勿論子供に対してまで口汚く罵り、又理由もないのに殴る蹴るの暴行を加える等手のつけられない状況であつた。

(二) それでも原告は子供の幸せを考えこれに耐えるべく努力してきたが、今日に至るも被告には全く改心の様子が窺われず、子供も原・被告間の離婚を強く希望している状況にある。

(三) そこで原告は、一五年余の間連添い耐忍んできた被告との生活ではあつたが、遂にこれと訣別すべく意を決し、昭和五三年三月二日大阪家庭裁判所岸和田支部に離婚調停の申立をなすとともに、同月五日子供四名を連れて実家に帰り、今日に至つているが、右調停事件は昭和五三年九月一三日不成立に終つた。

(四) 右事実は韓国民法八四〇条にいう「配偶者から著しく不当な待遇を受けたとき」ないしは「婚姻生活を継続し難い重大な事由があるとき」にあたるので、原告は被告との離婚を求めるとともに、長女姜美子、二女姜恵淑、三女姜栄蘭、長男姜信明の養育者を原告と定めることを求める。

3 財産分与及び慰藉料請求

原・被告の夫婦生活は、前記のとおり一五年余であり、その間の生活費は大半原告において実家より工面する等して捻出しており、被告の今日における蓄財のすべては、原告のこうした物心両面における貢献によるものである。右の事情からして、原告は被告に対し財産分与として金一七〇〇万円の支払を求める。

さらに、原告は被告の右の如き行為により離婚の已むなきに至つたものであり、多大の精神的苦痛を蒙つた。これを慰藉するには金三〇〇万円をもつて相当とする。

4 よつて、原告は被告との離婚を求め、長女姜美子、二女姜恵淑、三女姜栄蘭、長男姜信明の養育者を原告と定めることを求めるとともに、被告に対し、財産分与として金一七〇〇万円、慰藉料として金三〇〇万円及び右合計金二〇〇〇万円に対する本判決確定の日の翌日から完済まで民法所定率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二 請求原因に対する認否

1 請求原因1の事実は認める。原告と被告とは法律上の婚姻関係になく、単なる事実婚にすぎないものであるから、本件の離婚を求める訴は訴訟要件を具備しないものとして却下されるべきである。すなわち、原告と被告は一九六三年二月二七日いわゆる事実上婚姻したが、戸籍上の届出は未了である。従つて、法律上の婚姻とは認められず(韓国民法八一二条一項)、単なる事実婚の関係にすぎないものであるから、法律上の婚姻関係の解消を求める本訴離婚の請求は許されない。

2 請求原因2の事実のうち、原告が離婚調停の申立をなしたこと及び右調停が不成立に終つたことは認めるが、その余は争う。

3 請求原因3は争う。韓国民法においては、財産分与請求権は存せず、原告の財産分与の請求は法的根拠がない。

三 被告の主張

1 被告には離婚原因はなく、原・被告間の婚姻関係の破綻は、次に述べるとおり、原告の夫婦間の扶養協助義務違反によるものであつて、原告の本件離婚請求は有責配偶者からのそれとして許されない。

(一) 被告は、友人の紹介により一九六三年二月二七日原告と結婚したが、結婚当初泉北郡〇〇町の被告の実家で被告の母親らと共に同居した。ところが、原告は母親をないがしろにし、その気儘な性格から母親との別居を強く要求し、被告も已むを得ず別居にふみきつた。

(二) 被告は外国人(特に朝鮮人)に対する日本の偏見と戦いながら、家族のために朝早くから夜遅くまで辛苦努力し、汗みどろになつて働いてきた。これに対して原告は、勝手気儘な著しく勝気な性格で、いたわりやいつくしみの心もなく、家庭の意味や意義を全く理解せず、自らの感情のおもむくままに勝手気儘な生活をし、全く夫婦協助の努力に欠けている。被告の母が病気で倒れたときなども見舞いにも行かない有様で、家族への愛情に欠け、ことあるごとに実家に帰り、夫婦生活、家庭生活というものに対する理解に欠けている。原・被告間の破綻は原告の右のような性格によるものであつて、被告には何らの離婚原因はない。

四 被告の主張に対する答弁

争う。

第三証拠〔省略〕

理由

一 成立に争いのない甲第一号証、第三号証の一ないし五、原告及び被告の各本人尋問の結果によれば、原告は朝鮮の、被告は韓国のそれぞれ国籍を有する外国人であるが、一九六三年二月京都府の〇〇で結婚式を挙げ、一九六四年三月二六日大阪府泉大津市長に対し婚姻届を提出して受理された夫婦であり(韓国戸籍上の届出は未了)、一九六四年五月一〇日長女姜美子が、一九六五年一二月六日二女姜恵淑が、一九六七年一二月二一日三女姜栄蘭が、一九七四年四月一〇日長男姜信明がそれぞれ出生したことが認められる。

ところで、被告は、「原告と被告とは一九六三年二月二七日いわゆる事実上婚姻したが、戸籍上の届出は未了であり、従つて法律上の婚姻関係にはない」旨主張するが、韓国渉外私法一五条は「婚姻ノ成立要件ハ各当事者間ニ関シ基本国法ニ依リ之ヲ定ム、但其方式ハ婚姻挙行地ノ法に依ル。前項ノ規定ハ民法八一四条ノ適用ヲ妨ゲズ。」と、韓国民法八一二条は「婚姻は戸籍法に定めるところにより、届出することによつてその効力を生ずる。前項の届出は、当事者双方及び成年者である証人二人の連署した書面でしなければならない。」とそれぞれ規定しているから、日本における韓国人の婚姻は、日本の法律に従つて当該市町村長等に届出をし、それが受理されれば、その婚姻は有効に成立するものと解するのが相当である。従つて、前記認定のとおり、日本の戸籍法二五条二項により泉大津市長に対し婚姻届出がなされ、それが受理されている以上、韓国戸籍上その届出がなされ登載されていなくても、法例一三条一項但書を適用するまでもなく、原・被告間の婚姻は有効に成立しているものというべきである。よつて被告の右主張は理由がない。

二 そこで、原・被告間の婚姻関係の状況について判断する。

弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第二号証、証人朴秀永の証言、原告及び被告(但し後記措信しない部分は除く)の各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、次のような事実を認めることができる。

1 原告と被告とは昭和三八年二月に結婚式を挙げたが、原告は再婚であつたこと

2 被告は当時から古物商をしていたこと

3 原告と被告は結婚後○○町で被告の母親と同居することとなつたが、部屋が狭まかつたことと、原告が被告の母親から「再婚で汚れている、もつといいところから話があつた」などとののしられて折合いがうまくいかなかつたことが原因で、母親と別居して○○○で生活することになつたこと、その間原告は被告から、さしたる理由もないのに「淫売だ」とののしられたうえ、しばしば殴る蹴るの暴行を受け、肋骨を骨折したこともあつたこと

4 原告は被告から満足な生活費をもらえなかつたので、焼肉店を経営して生活費を捻出しようと考えて、昭和四〇年ころ原告の父親から資金を出してもらつて京都府の○○に土地と建物を購入して転居したこと、その間も原告は被告から、原告が焼肉店の商売上お客と話をしていた際に嫉妬して暴力を加えられたり、妊娠一〇ヶ月の身重の時にさしたる理由もないのに階段より蹴落されて病院へ運ばれたこともあるなどしばしば暴行を受けたこと、被告は原告を階段から蹴落した際には、原告の父親と弟に二度とこのようなことはしないと謝罪したこと

5 昭和四二年ころ被告の意向によつて○○○に転居したが、被告の右のような態度は改まらず、原告は被告からさしたる理由もないのに、絶えず体中痣ができるほど、しばしば暴力を受けたこと

6 原告と被告は昭和四二年一二月○○○に転居したが、ここでも原告は被告からさしたる理由もないのに、自宅裏で洗濯していた際、そばにある水路に蹴落されて病院で治療を受けたのをはじめ、昭和五三年二月二四日ころには殴打されたうえ、コタツ台で上から押えつけられたため両側大腿部挫創の傷害を負わされたこともあり、被告の暴力が絶えなかつたこと

7 被告は結婚当初から満足な生活費をわたさなかつたため、原告はその実家から援助を受けて一家の生活を維持していたこと

8 右のような度重なる暴行や満足な生活費を入れないことから、原告は昭和五三年三月五日子供四人を連れて被告のもとを出て、以後実弟の経営する会社で働くとともに、その援助のもとで生活していること

9 原告が申立てた夫婦関係調整事件の調停において、被告は離婚することには同意していたが、金銭面で折合いがつかず、結局は不成立に終つたこと

10 原告と被告は別居後、今後の生活について話合うため手紙・電話等で交渉をもつたことはなく、また被告は現在でも原告と離婚するのは仕方がないと考えていること

11 被告は別居後子供の養育費を支払つたことはなく、また子供らも被告と一緒に生活する意思をもつていないこと

右認定に反する被告本人尋問の結果はにわかに措信し難く、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

以上の事実によれば、原・被告間の婚姻は破綻の状況に至つていて、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」ものと認められ(韓国民法八四〇条六号、日本国民法七七〇条一項五号)、右破綻の原因は主として被告の責に帰すべき事由によるものというべきである。してみると、原告の本訴離婚の請求は理由がある。また韓国民法八四三条、八三七条により、原・被告間に出生した前記四名の子供の養育責任者を原告と定めるのが相当である。

三 財産分与について

離婚に際して夫婦の一方が他方に対し財産分与を請求し得るか否かは、離婚の効力に関する問題として法例一六条により夫たる被告の本国法である韓国民法が準拠法となるものと解されるところ、同法は妻が離婚配偶者である場合に、夫に対する財産分与請求権を認めていない。

そこで、法例三〇条により右準拠法の適用が排除されるか否かについて判断するに、同条は「外国法ニ依ルヘキ場合ニ於テ其規定カ公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スルトキハ之ヲ適用セス」と規定しているが、外国法適用の排除は、それを広く認めるならば国際私法自体を否定するに等しいことから考えて、外国法適用排除の標準となるべき公の秩序・善良の風俗は、純然たる内国法規の立場からではなく、内国の国際私法の立場からその国の社会秩序の維持の観点から、外国法を適用することによつて日本の私法的社会生活の安全が害されるか否かを判断すべきものであり、また右は国際私法の一般原則に対する例外であつて、已むを得ず認められるものであるから、その適用は慎重かつ厳格になされなければならないと解されるところ、我国の財産分与を含めた離婚法秩序や前記のとおり原告と被告とは共に外国人ではあるが、長期間日本に居住していることなどの諸点を考慮しても、韓国民法を適用して財産分与を認めないことが、いまだ法例三〇条にいう公の秩序又は善良の風俗に反するものとまでは言えず、従つて、同条を適用して、韓国民法の適用を排除し、法廷地法たる日本法を適用すべきものとすることはできない(なお、後記慰藉料額算定の際この点を考慮する)。

よつて、原・被告の財産関係について判断するまでもなく、原告の財産分与の請求は理由がない。

四 慰藉料について

原告が被告の行為により離婚の已むなきに至り、相当の精神的苦痛を蒙つたことは推測するに難くなく、前記認定の諸事実に本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、右苦痛を慰藉するためには金三〇〇万円が相当である。

五 よつて、原告の本訴請求は、離婚及び慰藉料金三〇〇万円はこれに対する本判決確定の日の翌日から完済まで民法所定率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当として棄却し、原・被告間の長女姜美子、二女姜恵淑、三女姜栄蘭、長男姜信明の養育責任者を原告と定め、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

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