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大阪高等裁判所 昭和56年(ラ)290号 決定 1981年9月21日

抗告人

青木実

抗告人

青木葉子

抗告人

三共不動産株式会社

右代表者

斯波国夫

右抗告人三名代理人

江藤馨

相手方

日興織物株式会社

右代表者

安田久之

主文

本件各抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

一本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。

二一件記録によれば、相手方は、「抗告人実が代表取締役をしていた青木繊維株式会社の倒産により相手方が受けた損失金二五五万四八九七円につき、昭和五五年四月一日相手方と、抗告人実は右損失金の賠償をなす旨の契約を締結し、抗告人実、葉子は抗告人の右賠償債務を担保するため同抗告人ら共有の東京都中野区所在の建物(以下、本件建物という)につき代物弁済予約を締結した。」と主張し、抗告人実に対し右損失金及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、抗告人実、葉子に対し本件建物につき昭和五五年四月一日付代物弁済予約による所有権移転請求権保全の仮登記手続を求め、また「抗告人実、葉子は抗告人会社に対し昭和五五年七月三〇日本件建物につき原因同年同月二七日付根抵当権設定契約の根抵当権登記を経由したが、右契約は相手方からの追及を免れるため抗告人実、葉子と抗告人会社が通謀してなした虚偽の意思表示によるものであるから、無効である。」と主張し、抗告人会社に対し右登記の抹消登記手続を求めて、本件訴訟を提起したことを認めうる。

従つて、抗告人実に対する損害賠償請求訴訟は民法四八四条民訴法五条により義務履行地の大阪地方裁判所の管轄に属し、抗告人実に対する仮登記手続請求訴訟は民訴法二一条により同裁判所の管轄に属する。

判旨XのY1に対するA請求のXのY2対するB請求との間に併合審理を相当とする実質的関連性がある場合、A請求につき管轄権を有する裁判所に、Xは民訴法二一条によりAB両請求併合訴訟を提起しうる、と解するのが相当である。両請求が民訴法五九条前段(訴訟ノ目的タル権利又ハ義務カ数人ニ付共通ナルトキ又ハ同一ノ事実上及法律上ノ原因ニ基クトキ)に該当する場合、一応右の実質的関連性ありといえるが、五九条前段に該当しない場合でも、五九条前段に該当する事例以上に密接な実質的関連性を認めうる事例があるから、右の実質的関連性肯定を、五九条前段に該当する場合に限定するのは相当でない。

抗告人実に対する仮登記手続請求と抗告人葉子に対する仮登記手続請求との間に併合審理を相当とする実質的関連性がある(両請求は民訴法五九条前段にも該当する)から、前者の請求につき管轄権を有する大阪地方裁判所に、相手方は民訴法二一条により両請求併合訴訟を提起しうる。

抗告人実、葉子に対する所有権移転請求権保全仮登記手続請求(右両名共有建物の昭和五五年四月一日付代物弁済予約に基づく請求)と抗告人会社に対する根抵当権設定登記抹消登記手続請求(右設定登記の原因同年七月二七日付根抵当権設定契約は、右両名が右共有建物につき抗告人会社と通謀していた虚偽の意思表示による無効の契約であることを理由とする請求)との間に併合審理を相当とする実質的関連性があるから、前者の請求につき管轄権を有する大阪地方裁判所に、相手方は民訴法二一条により両請求併合訴訟を提起しうる。

抗告人らの民訴法三一条に基づく主張に対する判断は、原決定理由記載と同一であるから、これを引用する。

よつて、本件各抗告を棄却し、抗告費用の負担につき民訴法八九条を適用し、主文のとおり決定する。

(小西勝 坂上弘 大須賀欣一)

〔抗告の趣旨〕

原決定を取消す。

本件を東京地方裁判所に移送する。

との決定を求める。

〔抗告の理由〕

一、原決定は、抗告人青木実の賠償義務は持参債務であり、その履行地は民訴法第五条により大阪市にあり、また、抗告人青木両名の登記手続義務は契約に基づくものでありその履行地は大阪市であるとして申立を却下した。

二、しかし義務履行地は実体法により定まるもので民訴法によるものではない。本件の義務履行地は賠償義務についても、登記義務についてもいずれも東京であつて大阪ではない。

本件債務は、相手方がいつたん免除した青木繊維株式会社に対する売掛債権を抗告人両名に賠償請求しているのである。債務者を異にする別個の債務である。その義務履行地が何故大阪市になるのであろうか。

もともと青木繊維の相手方に対する買掛金債務も永年の商慣習によつて持参債務ではなく取立債務であつた。即ち、青木繊維は相手方とは二〇年来の取引があり、代金支払方法は、相手方の東京支店から集金に来て、青木繊維振出の支払場所を株式会社協和銀行浅草橋支店又は朝日信用金庫豊島町支店とする約束手形を交付して手形を決済してきたのである。売掛金は商行為によつて生じた債務ではあるが、商慣習によつて取立債務であつたのである。

また原審は登記手続義務は契約に基づくもので履行地は大阪市であるというが、契約による登記義務は常に登記権利者の住所が義務履行地になるのであろうか。不動産所在地は東京であり、東京でなければ登記はできないのである。

以上のとおり賠償義務も登記義務も履行地は東京であつて大阪ではない。

よつて本件を管轄違により東京に移送すべきである。

三、抗告人は裁量移送の申立もしたが原審はこれを却下した。

しかし抗告人が原審で主張したように、本件の当事者や証人が大部分東京在住であること、ことに本件では相手方が清算型の代物弁済を主張しているので不動産価格の鑑定が必要であること、東京地裁で行われる仮処分異議事件があることを考慮すれば裁量をもつても本件を東京に移送するのが相当である。

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