大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和56年(ラ)535号 決定 1982年4月02日

抗告人

甲山花子

右代理人

平野光夫

井関照夫

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一抗告人の抗告の趣旨は、「原審判を取消す。本件禁治産宣告の申立を却下する。」との裁判を求めるにあり、その理由は別紙(一)、(二)、(三)に記載のとおりである。

二当裁判所の判断

<中略>

(六) 抗告人は、原審判が後見人として禁治産宣告申立人たる乙山一夫を選任したのは不当であると主張する。しかし、家事審判法一四条は審判に対して最高裁判所の定めるところにより即時抗告のみをすることができるとするとともに、家事審判規則二七条は民法七条に掲げる者が禁治産宣告の審判に対し即時抗告をすることができる旨を規定しているが、右の趣旨は民法七条に掲げた者で禁治産宣告に不服のある者に即時抗告の権利を与えたものであり、これと同時になされた後見人選任の審判に対し即時抗告を認めたものではなく、他に後見人選任の審判に対し即時抗告をすることができる旨の規定はない。したがつて、禁治産宣告と後見人選任が同時になされた審判に対する即時抗告において禁治産宣告が相当であるときは、抗告裁判所は原審判中の後見人選任の部分についてはその当否を審査することができないものというべきである(高松高裁昭和四一年四月二六日決定、家裁月報一八巻一二号三五頁)。

なお附言するに、後見人が後見の任務に適しない事由があるときは、被後見人の親族その他民法八四五条に定める者が家庭裁判所に後見人の解任を請求すべきものであつて禁治産宣告の審判に対する即時抗告の理由として後見人選任についての不当をいうことはできず、この点については当裁判所が判断する限りではない。<以下、省略>

(今富滋 藤野岩雄 亀岡幹雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例