大阪高等裁判所 昭和56年(行コ)36号 判決 1981年10月15日
控訴人(原告) 齋藤脩
被控訴人(被告) 宮井思葦子
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 当事者の求める裁判
1 控訴人
(一) 原判決を取消す。
(二) 被控訴人は京都府に対し、一億九八八三万二〇〇〇円及びこれに対する昭和五三年七月二一日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
(三) 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文と同旨。
二 当事者の主張
次に付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。
(控訴人)
本件監査請求が退職手当金支給の日より二年五ケ月遅れたことについては、地方自治法二四二条二項但書の「正当な理由」が存在する。
すなわち、控訴人は昭和五四年九月末に辞職願の写しを、昭和五五年八月末に退職副申書と人事事務原議書をそれぞれ入手したが、これを熟視熟考してはじめて、訴外蜷川虎三の犯罪行為により控訴人が退職させられたことを知つたものであり、京都府が故意に同訴外人の犯罪行為を隠していたものであるから、控訴人が右事実を知つた日から一年を経過しない同年一二月に監査請求したことは地方自治法二四二条二項但書の「正当な理由」がある場合に該当するというべきである。
三 証拠<省略>
理由
一 当裁判所も控訴人の本件訴えは不適法なものとして却下すべきものと判断する。その理由は次に付加するほか、原判決理由説示と同一であるからこれを引用する。
控訴人は、本件においては退職手当金支給の時から一年以内に監査請求ができなかつたことにつき「正当な理由」が存在すると主張するけれども、被控訴人が昭和五三年七月訴外人に対し退職手当金を支給したことは当時京都府の一般住民に広く知れわたつた公知の事実であり、一方、控訴人が右退職手当金支給を違法ならしめるものと主張する「控訴人の辞職を承認する行為」については、控訴人において右退職手当金支給以前からすでにその無効を主張して京都府職員たるの地位確認等を求める訴を提起していたことが成立に争いのない甲第三〇号証によつて明らかであるのみならず、本件全証拠によつても、控訴人が犯罪に該ると主張する訴外人の行為や退職手当金支給を違法視すべき関係書類等を京都府や訴外人においてことさら隠ぺいしていたことを認めることはできないから、控訴人が右退職手当金支給の時から一年以内に監査請求できなかつたことにつき「正当な理由」があるということはできない。
二 よつて原判決は相当で、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 奥村正策 広岡保 森野俊彦)