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大阪高等裁判所 昭和56年(行コ)40号 判決 1981年11月26日

控訴人(原告) 古野信三郎

被控訴人(被告) 地方職員共済組合大阪府支部長

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人が昭和五四年六月二五日付でなした控訴人に対する退職年金決定処分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人代理人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張、証拠の提出、援用、認否は、以下に訂正、付加する外原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する(ただし原審被告地方職員共済組合審査会に関する部分を除く)。

(訂正)

原判決九枚目裏一行目に「身分取扱とし……」とあるのを、「身分取扱は現役とし……」と訂正し、同一〇枚目裏四行目に「審査課長からの文書回答がなかつた点については正式回答とは考えられない等とし、」とあるのを、「審査課長からの文書回答を正式回答とは考えていない旨主張し、」と訂正する。

(控訴人の主張)

陸軍の幹部候補生、見習士官、海軍の海軍予備生徒、少尉候補生は、昭和二一年法律三一号による改正前の恩給法(以下改正前の恩給法という)二一条二項及び昭和二一年勅令五〇四号による改正前の恩給法施行令七条の明文の規定によりいずれも準軍人の取扱とされているが、陸軍の幹部候補生には昭和三年恩発第五五七号例規により恩給法上は現役の取扱とされた。しかし海軍予備生徒及び海軍少尉候補生は恩給法上準軍人の取扱とされ、陸軍と海軍の恩給法上の取扱に差異のあることは、学徒出陣し、海軍予備生徒、海軍少尉候補生となつた控訴人としてはとうてい納得できない。

理由

当裁判所も被控訴人が昭和五四年六月二五日になした控訴人に対する退職年金決定処分になんら取消すべき違法はなく、控訴人の請求は棄却すべきものと判断するものであつて、その理由は以下に付加する外、原判決理由の第一の一、二、および第二の一ないし三に説示のとおりであるからこれを引用する。(但し原判決一五枚目裏四行目に「(同法一九条二項)」とあるのを「(同法一九条一項)」と訂正し、同五行目に「準教育職員ヲ謂フ」の次に「(同法一九条二項)を加え、同九行目に「又ハ補充兵ニ」とあるのを「又ハ補充兵役ニ」と訂正する。)

控訴人は陸軍の幹部候補生、見習士官と海軍の海軍予備生徒、少尉候補生との間に、一方が軍人の取扱を受けるのに、他方が準軍人の取扱を受け恩給法上の差異のあることを非難する。しかし、地方公務員共済組合法(昭和三七年法律第一五二号)による年金制度は従来地方公務員に適用されていた各種年金制度を統一したものであり、旧制度から新制度へ移行するため地方公務員共済組合法の長期給付に関する施行法(昭和三七年法律第一五三号)が制定され、旧制度の適用を受けていた在職期間と新制度の組合員期間との通算等の経過措置が定められ、恩給法等旧制度の適用を受けていた在職期間の取扱については恩給法等の法令の規定及び解釈により恩給法上の恩給公務員として在職した期間に該当するかどうかが決定されるものであるところ、控訴人の海軍予備生徒、海軍少尉候補生であつた期間については原判決に説示のとおりの理由で、昭和一九年二月一日から同年七月九日までは改正前の恩給法上の公務員としての在職期間ではないと解するのが相当である。

たしかに陸軍の幹部候補生、見習士官については昭和三年恩発第五五七号例規により現役にある幹部候補生は恩給法第二一条第一項第一号に規定する軍人と解することとされていることは当裁判所に顕著であり、その限りにおいて控訴人の様にいわゆる学徒出陣した者について控訴人が当審で主張するとおり陸海軍による恩給法上の取扱に差異があることは否めないところであるが、右の例規の様な特別の定めのない以上海軍予備生徒や少尉候補生についての旧恩給法の規定に反する解釈をとることはできず控訴人の当審主張は控訴人の独自の見解に基づくものとして排斥を免れない。

してみれば被控訴人が控訴人の退職年金についてなした本件決定には何ら違法のかどはなく、これと同旨の原判決は相当であつて本件控訴は理由がないからこれを棄却すべく、控訴費用の負担について民事訴訟法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 今富滋 藤野岩雄 亀岡幹雄)

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