大阪高等裁判所 昭和56年(行コ)41号 判決 1981年11月27日
和歌山市黒田一二番地
控訴人
株式会社東洋精米機製作所
右代表者代表取締役
雑賀和男
右訴訟代理人弁護士
澤田脩
同
藤田正隆
和歌山市湊通り北一丁目一番地
被控訴人
和歌山税務署長
木村富
右指定代理人
小林敬
同
西峰邦男
同
城尾宏
同
木下昭夫
同
杉山幸雄
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 当事者の申立
1 控訴人
(一) 原判決を取消す。
(二) 被控訴人が、控訴人の昭和五三年四月一日から昭和五四年三月三一日までの事業年度の法人税確定申告について、昭和五四年五月三〇日付で控訴人に対してなした申告期限延長申請却下の処分を取消す。
(三) 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文と同旨
二 当事者の主張及び証拠
次の点を付加するほか原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。(但し原判決四枚目表四行目の「亦ひに」を「並びに」と訂正する。)
1 控訴人の主張
(一) 控訴人の昭和四七年度の「仮申告書」、同四八年度の「確定申告書」と題する書面の提出が確定申告の意思でなされたものではない。このことは右各書面の添付書の内容及び前後の事情から明らかである。
(二) 本件の事業年度について控訴人が決算できないことの責任は、無題ノートの所在を明らかにしない和歌山地方検察庁にあって、控訴人にはない。
(三) 控訴人は雑賀慶二との間でこれまでの債権債務関係について協議すべく準備中であってこの協議が整えば決算は可能となるがそれまで若干の期間を必要とする。
2 証拠
被控訴人は乙第一四、第一五号証を提出し、控訴人は右乙号各証の成立を認めた。
理由
一 当裁判所も、控訴人の法人税確定申告期限延長申請を却下した被控訴人の本件処分に瑕疵はなく、控訴人の本訴請求は理由がないと判断するが、その理由は次に付加するほか、原判決理由の記載と同一であるから、これを引用する。
1 控訴人は、昭和四七年度、同四八年度の各申告書の提出は確定申請の意思をもってなされたものではない旨主張するが前認定の事実(原判決九枚目表七行目の「原告は」から一〇枚目表五行目末尾まで)によると、控訴人は帳薄類等を押収されていて正確な決算ができない事情にあったとは云え、可能な限りでの決算資料に基づいて決算し、これに基づいて右申告書を作成して提出したものであり、右提出について、無申告として取扱われる不利益を避け、各申告書によりその時点での各年度の税額を確定して還付を受ける各意図を有したことは明らかであるし、将来、右押収が解かれた段階で右決算の誤りが判明したときは、右各申告書を基礎として修正申告や更正の請求等の手続をとる意図をも有したことは明らかであって、右両年度の申告書の提出が確定申告の意思のないものであったと云うことはできない。
2 控訴人は、昭和五三年事業年度について控訴人が決算できないことの責任は和歌山地方検察庁にあると主帳するが、控訴人が右事業年度について決算し得ないものでないことは前説示(原判決一〇枚目表三行目から一一枚目表二行目まで)の通りであって、右主張は採用できない。
3 控訴人は雑賀慶二との間でこれまでの債権債務関係について協議すべく準備中であって、この協議が整えば決算は可能となる旨主張するが、斯る事実は被控訴人の本件処分の取消事由とはならない。
二 そうすると、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であって本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文の通り判決する。
(裁判長裁判官 大野千里 裁判官 林義一 裁判官 稲垣喬)