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大阪高等裁判所 昭和57年(う)1513号 判決 1983年3月15日

主文

本件控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人小川眞澄作成の控訴趣意書記載のとおりであり、これに対する答弁は検察官北側勝作成の答弁書記載のとおりであるから、これらを引用する。

一、控訴趣意第一

論旨は、要するに、本件マジツクホン設置、使用が有線電気通信法二一条にいう「有線電気通信を妨害した」事実はない、すなわち、本件マジツクホンは通話を妨げる機能を有するものでなく、発信局に設置された度数計の作動を妨げたに過ぎず、その度数計作動システムは同条にいう「有線電気通信」にあたらない、しかるに、原判決は右「有線電気通信」「妨害」の事実を肯認したのであつて、これは判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認であるから、破棄を免れない、という。

しかし、所論にかんがみ記録を精査して検討するに、原判決挙示の関係証拠によつて本件マジツクホンの設置、使用が有線電気通信法二一条にいう「有線電気通信」を「妨害」した事実を優に認めることができる。この点に関する原判決の説示はまことに適切であつて、これに付言する要は全くない。

そうしてみると、本件マジツクホン設置、使用について、これが有線電気通信法二一条にいう「有線電気通信を妨害した」事実を認めた原判決は正当であつて、所論のような事実誤認のかどはない。論旨は理由がない。

二、控訴趣意第二について

論旨は、要するに、刑法二三三条の業務妨害罪における保護法益は人の社会的行動の自由であつて、人の財産権又は財産的利益ではない、すなわち同罪は人の社会的行動の自由を直接侵害する行為を処罰する趣旨のものであるところ、本件マジツクホンの設置、使用は、第一次的には電電公社の料金請求権という財産権を侵害し、その結果、間接的に料金徴収業務の適正な運営が侵害されるに過ぎず、また電電公社の電気通信業務を妨害しなかつたから、電電公社の業務が妨害された事実はない、しかるに原判決は同事実を肯認したのであつて、これは判決に影響を及ぼすことは明らかな事実誤認であるから、破棄を免れない、という。

しかし、所論にかんがみ記録を精査して検討するに、関係証拠によると、被告人は本件マジツクホンの設置、使用が電電公社の継続的事務というべき一業務である電話通信の利用の把握とその対価である電話料金の登算、課金を不可能ならしめることを知悉しながら、原判示各所為に出たことが認められ、これが電電公社の通話先電話(発信側)に対する通話料金課金業務を妨害したことは明らかである。

所論は、本件マジツクホンの設置、使用は刑法二三三条の業務妨害行為にあたらない、偽貨による電話の不正利用、鉄道のいわゆるキセル乗車と同様である、というが、右認定と異なる事実認識を前提とするものであつて、到底採り得ない。

そうしてみると、本件マジツクホン設置、使用について、それが電電公社の通話先電話に対する通話料金課金業務を妨害した事実を認めた原判決は正当であつて、所論のような事実誤認のかどはない。論旨は理由がない。

よつて刑訴法三九六条により主文のとおり判決する。

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