大阪高等裁判所 昭和57年(け)14号 決定 1982年10月18日
主文
本件異議申立を棄却する。
理由
<前略>
所論は、本件控訴趣意書差出最終日通知書の送達の効力を争うので、按ずるに、原決定は、右通知書を受領した酒井房惠が、被告人の義弟の妻で、右通知書の被告人方における送達が行われた当日被告人方の留守を預つていたものであり、同人はこれまでしばしば被告人方の留守居を頼まれており、その際被告人宛の書留郵便物等が配達されたときにはいつも被告人の印鑑を使用してこれを受領したうえ、被告人宅に置いて帰るのが常であり、被告人もそれを諒としていたと認定しているところ、右の認定は、被告人に対する監禁致傷被告事件記録並びに原裁判所の事実調の結果によればこれを首肯できる。右認定事実によれば、酒井房惠は、被告人から、裁判所より被告人方に届けられる書面を含め被告人宛の書類を被告人の印鑑を押捺して受領する権限を与えられていた者であると認めることができるから、右酒井に対する交付をもつて本件通知書の送達(補充送達)は有効になされ、かつ完了しているというべきである。所論は失当である。
<中略>
以上のとおり、原決定には所論のような違法はなく、本件異議申立は理由がないから、刑訴法四二八条三項、四二六条一項後段により、主文のとおり決定する。
(石松竹雄 緒賀恒雄 竹澤一格)