大阪高等裁判所 昭和57年(ネ)180号 判決 1982年9月08日
控訴人
宮原啓市
右訴訟代理人
原田甫
沼田弘一
山本哲男
破産者
株式会社豊喜工務破産管財人
被控訴人
牛田利治
請負人が破産した場合、破産法五九条二項の規定は適用されないとされた事例
(大阪高裁昭五七(ネ)第一八〇号、昭57.9.8第四民事部判決、棄却・上告(却下))
主文
本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実《省略》
理由
本件についての当裁判所の認定判断は左記に付加するほか原判決の理由に説示のとおりであるからこれを引用する。
控訴人は、請負人の材料提供方式で前渡金が支払われている形態の請負契約の場合と、前渡金を渡している形態の売買契約の場合とは実質的に区別する必要性に乏しいとして、請負人破産の場合にも双方未履行の双務契約の一般原則を適用すべき場合のあることを主張するので案ずるに、請負契約における請負人、注文者双方の債務の内容はそれぞれ仕事の完成と報酬の支払であつて、請負人が破産宣告を受けた場合には、その請負契約の内容が請負人の個人的な労務の提供を内容とするものではなく、代替的債務であつても、請負つた仕事を完成させること自体は財団を増加せしめて、その利益になると共に破産者、注文者双方にとつても利益となることを失わないことが多いと解せられるから、請負人の破産を請負契約解除の理由とする必要性は乏しいというべく、前者の場合、請負人が仕事を完成すること、すなわち労務を提供することそれ自体は破産財団の管理又は処分に属しないことであり破産財団とは無関係であるからこのような場合における請負人の仕事が未完成のときは破産法五九条の適用がないと解することは実質的にも相当であるし、後者(代替的債務)の場合にも破産法六四条により破産財団の介入により請負工事完成の方法が講ぜられていると解すべきであるから、この場合にも同法五九条の適用を認める実質的な理由は乏しいといわねばならない。
一方売買契約における売主、買主双方の債務の内容はそれぞれ財産権の移転と代金の支払にあり、仕事の完成の如く破産財団と無関係のものを含むのと異なるのであるから、売買契約において売主、買主のいずれが破産した場合にも破産法五九条が適用されるのは当然であつて、これを請負契約における請負人の場合と同一に論ずることはできないというべく、この点の控訴人の主張は採用し難い。<以下、省略>
(今富滋 西池季彦 亀岡幹雄)