大阪高等裁判所 昭和57年(行コ)19号 判決 1982年7月20日
兵庫県西宮市二見町一三番地二一-五〇二号
控訴人
富田和雄
右訴訟代理人弁護士
明尾寛
兵庫県西宮市江上町三番三五号
被控訴人
西宮税務署長
小幡隆
右指定代理人
一志泰滋
同
西峰邦男
同
志水哲雄
同
熊本義城
同
岡本雅男
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の申立
一 控訴人
「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対して昭和五四年七月一六日付でした昭和五三年分所得税の再更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決
二 被控訴人
主文と同旨の判決
第二当事者の主張及び証拠関係
次のとおり附加するほか、原判決事実摘示と同じであるから、これを引用する(但し、原判決別表三の備考欄の「富田和男」をいずれも「富田和雄」に改める)。
控訴人の主張
控訴人は、大阪市による本件旧建物の一部及びその敷地の買収が予定されていたため、その買収が終わるまでは残存部分である本件土地を第三者に売ることも自己が使用することも事実上困難な状況にあったこと、控訴人がサラリーマンで他に全く居住用財産を有せず、右買収後本件土地上に居住用建物を新築するつもりで本件土地を所有していたが、右買収後本件土地を売却し、その売買代金で新たに居住用のマンションを購入していること等の事実が認められる以上、措置法三五条一項及び同法基本通達の趣旨からみて右売却による譲渡所得の計算については特別控除がされるべきである。また、右条項が譲渡について居住の用に供されなくなった日から三年等の期間に限っている趣旨も、通常の場合は右期間内に任意に当該居住用財産を処分しうることを考慮したためと解されるから、本件のように事実上その処分が一定期間困難であった場合は、その制限的事情(本件の場合は大阪市による買収)が解消してから遅滞なく処分されている限り、右法定の期限にとらわれることなく、特別控除が認められるべきである。
理由
当裁判所も控訴人の本訴請求を失当としていずれも棄却すべきであると判断するが、その理由は次に附加するほか、原判決理由説示と同じであるからこれを引用する(但し、原判決一三枚目表一行目の「二〇二号」を「二〇二番二号」に改める)。
大阪市による本件買収の話が進行中であったとしても、控訴人が大阪勤務となった昭和四八年二月頃から右買収がされた昭和五三年七月までの間、本件旧建物に居住したり、又は本件土地を他に売却することが不可能であったわけではないのであり、右買収の話が進行していたことその他控訴人主張の特殊事情を考慮しても、控訴人が所有者として本件旧建物に居住したことがない以上、本件土地の譲渡は措置法三五条一項に定める要件に該当しない。これに反する控訴人の主張は同条項の明文の規定を離れた独自の解釈に基づくものというほかなく、採用することができない。
よって、原判決は相当であるから本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小西勝 裁判官 青木敏行 裁判官 吉岡浩)