大阪高等裁判所 昭和57年(行コ)32号 判決 1983年9月30日
大阪市西淀川区御幣島一丁目一二番二二号
控訴人
田淵電気株式会社
右代表者代表取締役
田淵三郎
右訴訟代理人弁護士
中川一郎
同
太田全彦
同市同区野里西三丁目三番三号
被控訴人
西淀川税務署長
赤見光男
右訴訟代理人弁護士
兵頭厚子
右指定代理人
高田敏明
同
中野英生
同
辻彦彰
同
西浜温夫
同
多田光宏
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
控訴人
一 原判決を取消す。
二 被控訴人が控訴人に対し昭和五二年一二月二六日付でした、控訴人の昭和四九年七月二一日から昭和五〇年七月二〇日までの事業年度(以下、三七期という)分の法人税更正処分のうち、差引き納付すべき法人税額(以下、増差税額という)一〇万九三〇〇円をこえる部分並びに同期分の過少申告加算税賦課決定処分のうち税額五四〇〇円をこえる部分を取消す。
三 被控訴人が控訴人に対し昭和五二年一二月二六日付でした、控訴人の昭和五〇年七月二一日から昭和五一年七月二〇日までの事業年度(以下、三八期という)分の法人税更正処分のうち、増差税額二六八万六〇〇〇円をこえる部分並びに同期分の過少申告加算税賦課決定処分のうち税額一三万四三〇〇円をこえる部分を取消す。
四 被控訴人が控訴人に対し昭和五四年九月二九日付でした、控訴人の昭和五一年七月二一日から昭和五二年七月二〇日までの事業年度(以下、三九期という)分の法人税更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を取消す。
五 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
被控訴人
主文同旨
第二当事者双方の主張及び立証
当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり附加するほか、原判決の事実摘示(但し、原判決六枚目表九行目の「子会社から」とあるのを「子会社からの」と訂正する)と同一であるから、これを引用する。
控訴人の主張
一 法人税法上の寄付金とは、「寄付金、きょ出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、法人の事業活動に関係なく行う金銭その他の資産の贈与又は経済的な利益の無償の供与」であるから、本件経営指導料等の免除は控訴人の事業活動に属するもので寄付金とはいえない。
二 控訴人が各子会社から取得すべき経営指導料等を月次会計処理をしたのは、内部取引とみるべき各子会社の経営実績把握のための試算に過ぎないものであるから、各事業年度末日付で雑収入又は受取利息の額から月次計上していた経営指導料等の収入合計額を減額したことは債務免除をしたものというべきである。
被控訴人の主張
一 控訴人の寄付金についての見解は、法律上の寄付金の定義(法人税法三七条五項)を無視した独自の見解である。
二 債務免除である旨の控訴人の主張は、親子会社に関する法律上の関連と法律上の問題を混同し、商業帳簿及び決算の制度を無視するものであって、不当である。
証拠
控訴人において甲第二四ないし二八号証を提出し、当審証人徳島米三郎の証言を援用し、被控訴人において右甲号各証のうち第二六号証の成立は認め、その余は不知と答えた。
理由
当裁判所も、控訴人の本訴請求はいずれも、次のとおり理由のないものと認める。
一 法人税法三七条五項は、かっこ内で、たんに、広告宣伝及び見本品の費用その他これに類する費用並びに交際費、接待費存び福利厚生費とされるべきもののみを寄付金から除く旨規定していることに加え、同法三七条二項によれば統一的な損金算入限度額内の金額は費用として損金算入を認めていることに徴すると、右かっこ内所定のような販売経費及び一般管理費としての性質を有するものでない限り、事業との関連を有している場合にも、法人税法は経済的な利益の供与等を寄付金としているものである。
従って、たんに控訴人の事業に関係があるとの理由で本件経営指導料等の免除が寄付金でないとの控訴人の主張は、採用できない。
二 その余の当事者双方の主張に対する判断は、原判決理由を左のとおり訂正、付加するほか、当審での証拠を併せ考慮しても、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。
1 原判決二〇枚目裏八行目の「同一の権利主体」とあるのを「同一の経済主体」と訂正する。
2 同二二枚目表二行目の次に、「鳥取電子、熊本電子はいずれも控訴人の子会社とはいえ、控訴人とは別個の法人格を有する独立の会社であることに徴すると、前記月次会計処理を経営実績把握のためのたんなる試算に過ぎないものとみることはできない。」を加える。
3 同二三枚目表五行目以下の、「特に鳥取電子が製型していた中型トランスの受注量の減少が著しかったことと、当時鳥取電子では人員整理をめぐる労働争議が重なったことによるものであることが認められる。」とあるのを、「特に鳥取電子が製造していた中型トランスの受注量の減少が著しかったことによるものであることが認められる。」と訂正する。
4 同二四枚目裏九行目の「貸付け金銭の利息で既に発生した利息債権の免除」と同一〇行目の「既発生利息債権の免除」とあるのを、いずれも「受取利息の返戻」と訂正する。
よって、控訴人の本訴請求をいずれも棄却した原判決は正当であって、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、行訴法三八四条、九五条、八九条に則り主文のとおり判決する。
(裁判所裁判官 乾達彦 裁判官 緒賀恒雄 裁判官 馬渕勉)