大阪高等裁判所 昭和57年(行コ)44号 判決 1982年10月29日
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴人は、「原判決を取消す。本件を京都地方裁判所に差戻す。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張及び証拠の関係は、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
理由
控訴人の本件訴えは、被控訴人が本件予納法人税を財団債権に該当するものであるとしてなした交付要求の取消を求めるものであるが、このように、特定の租税債権が財団債権であるとして破産管財人に対してなす交付要求が、取消訴訟の対象となりうるかについて検討する。
特定の租税債権についてそれが財団債権に該当するか否かは破産法四七条二号によつて定まり、財団債権とされる租税債権は破産手続によることなく随時弁済するものとされている(同法四九条)。すなわち、交付要求の法的効果として当該租税債権が財団債権になるのではなくて、破産管財人が右法条(同法四七条二号)を自己の責任において解釈し、その結果、財団債権であると判断した租税債権については、交付要求があると否とにかかわらず、これを随時弁済すべき義務を負うこととされているのである。したがつて、交付要求は破産管財人に対し弁済義務を設定したり、その管理処分権を制限したりするものではなくて、単にその弁済を催告するものにすぎないのである。そして、その催告が破産管財人の判断に優越していわゆる公定力を生ずる性質のものでないことはいうまでもないから、交付要求によつては破産者ないし破産管財人の地位或いは権利義務に何らの変動を生じることはないといわなければならない。
それゆえ、本件交付要求は、これを行政事件訴訟法三条二項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とみることはできないから、取消訴訟の対象とはなり得ないものである。そうすると、本件訴えは、その余の点について判断するまでもなく、不適法として却下するほかはない。
よつて、控訴人の本件訴えを却下した原判決は相当であるから本件控訴を棄却し、訴訟費用につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 荻田健治郎 岨野悌介 渡邊雅文)