大判例

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大阪高等裁判所 昭和58年(ネ)1867号 判決

【主文】

原判決を次のとおり変更する。

控訴人と被控訴人ら間の別紙物件目録記載の土地についての賃貸借契約における賃料は、昭和五三年一月一日から同年一二月三一日までは月額四万〇七五六円、昭和五四年一月一日から同年一二月三一日までは月額四万二〇七二円、昭和五五年一月一日から同年一二月三一日までは月額四万五七五三円、昭和五六年一月一日からは月額四万九〇八一円であることを確認する。

被控訴人らのその余の請求を棄却する。

訴訟費用<略>

【判旨】

一被控訴人らは、戦前から控訴人に対し、本件土地(面積は除く)を建物所有の目的で賃貸してきたが、昭和五〇年における賃料は月額四万円であることは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、本件土地の面積は1302.19平方メートルであることが認められる。

二<証拠>によれば、本件土地上には控訴人所有の木造瓦葺平家建の建物(二一戸分)があり、その建物はいずれも昭和一五年以前に建築されたものであるが、それぞれ居住用として賃貸に供され、かつ一戸分の床面積がいずれも九九平方メートル以下であることが確認され、これに反する証拠はない。

右一、二の事実によれば、本件土地の賃貸借契約は地代家賃統制令の適用があると解される。

三被控訴人らは、控訴人に対し、昭和五〇年一二月ころ、昭和五一年以降の本件土地の賃料を増額する旨の意思表示をしたことは当事者間に争いがない。

<証拠>によれば、被控訴人らは、昭和五一年から同五五年まで毎年一二月初旬ころ、いずれも翌年一月一日から本件土地の賃料を増額する旨の意思表示をしたことが認められ<る。>

なお、控訴人は、本件賃貸借契約においては賃料の増額を三年毎に一度とするとの慣行があつたので、被控訴人らの毎年の増額請求は理由がない旨主張するが、右慣行の存在を認めるに足る証拠はないから、控訴人の右主張は採用できない。

四被控訴人らは、右賃料増額請求により本件土地の賃料は昭和五一年一月一日から同年一二月三一日までは月額五万八三三三円、昭和五二年一月一日から同年一二月三一日までは月額五万九九一七円、昭和五三年一月一日から同年一二月三一日までは月額六万二〇〇〇円、昭和五四年一月一日から同年一二月三一日までは月額六万五五八三円、昭和五五年一月一日から同年一二月三一日までは月額七万二七五〇円、昭和五六年一月一日からは月額七万九〇八三円と増額された旨主張する。

そこで本件土地の相当賃料につき検討するに、証拠によれば、本件土地を含む吹田市片山町四丁目三六番の宅地、公簿面積1761.58平方メートル、実測面積1795.23平方メートル(前掲の本件土地の実測面積と甲第四号証による本件土地以外の土地四カ所の実測面積とを加えたもの、以下三六番の土地という)の地代家賃統制令による統制賃料は別表「三六番の土地の統制賃料(年額)」欄記載のとおりであり、本件土地の統制賃料は両土地の実測面積比で計算すると、別表「本件土地の統制賃料(年額)及び(月額)」欄記載のとおりとなること、仮に本件土地が同会ママの適用がないとした場合の適正賃料はほぼ被控訴人ら主張の賃料のとおりとなることが認められる。

ところで、地代家賃統制令による統制賃料は、原則として授受しうる賃料の上限を定めたもの(同令三条、一二条)であるところ、裁判所が同令一〇条により行政庁の定める統制賃料を超えて賃料を定めることができるのは、同令の趣旨に鑑み、土地建物につき改良工事等がなされたのにそれが賃料に反映していないとき(同令七条一項参照)、その他統制賃料が画一的であるため当該土地建物の賃料が具体的妥当性を欠くとき(昭和五一年六月三日最高裁判所第一小法廷判決民集三〇巻六号五七一頁参照)などの特別の事由があるときに限られると解するのが相当である。

ところで本件における全立証をもつてしても、本件土地の賃料を統制賃料を超えて増額すべき特別の事由を認めることができない。被控訴人らは、控訴人が本件土地上の建物につき同令違反の家賃を取得していることを考慮すべき旨主張するが、仮に控訴人が同令違反の不法な利益を得ているとしても、被控訴人らも同様の不法な利益を得てよい理由とはならないのであるから、控訴人の右主張は右特別の事由にあたらず採用できない。

以上によれば、本件土地の相当賃料は別表「本件土地の統制賃料」欄記載のとおりであると認定するのが相当である。

そうすると、被控訴人らの本件賃料増額の意思表示により、本件土地の賃料は、昭和五三年から同五六年の各一月一日時点において、従前の賃料四万円が不相当となつたと認められるので、右各時点に対応する統制賃料の限度において増額されたと解せられるが、昭和五一、五二年の各一月一日時点においては、従前の賃料が不相当になつているとは認められないから、右各時点においては賃料増額を求めることができない。

五被控訴人らの本訴請求は、従前当事者間で授受されていた賃料月額四万円を超える増額賃料の確認を求めていると解されるところ、以上によれば、本件土地の賃料が昭和五三年一月一日から同年一二月三一日まで月額四万〇七五六円、昭和五四年一月一日から同年一二月三一日まで月額四万二〇七二円、昭和五五年一月一日から同年一二月三一日まで月額四万五七五三円、昭和五六年一月一日から月額四万九〇八一円であることの確認を求める限度で理由があるのでこれを認容することとし、その余は失当であるから棄却すべきである。

これと一部異なる原判決は相当でないから、右判断のとおり変更することとする。

(乾達彦 緒賀恒雄 馬渕勉)

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