大阪高等裁判所 昭和58年(ネ)2180号 判決 1984年12月21日
昭和五八年(ネ)第二一八〇号事件控訴人(以下、第一審被告という)
東本美代治
昭和五八年(ネ)第二一八〇号事件被控訴人、
同第二二九七号事件控訴人(以下、第一審参加人という)
兵庫県信用保証協会
右代表者理事
田中正己
右訴訟代理人
丸山富夫
原田昭
永原憲章
昭和五八年(ネ)第二二九七号事件被控訴人(以下、第一審原告という)
東本ツゲノ
右訴訟代理人
髙橋悦夫
主文
1 原判決中第一審被告敗訴部分を取消す。
2 第一審参加人の第一審被告に対する訴えを却下する。
3 第一審参加人の第一審原告に対する本件控訴を棄却する。
4 訴訟費用中、第一審参加人と第一審原告との間で生じた控訴費用は第一審参加人の負担、第一審参加人と第一審被告との間で生じた第一、二審費用は第一審参加人の負担とする。
事実《省略》
理由
一第一審参加人の第一審原告に対する請求について<省略>
二第一審参加人の第一審被告に対する訴えについて<省略>
三第一審原告の第一審被告に対する訴えについて
第一審原告は当審において、第一審被告に対する訴えを取下げ、第一審被告はこれに同意したが、民訴法七一条前段の参加人である第一審参加人は右訴えの取下げに異議を述べた。
ところで、民事訴訟法七一条前段の目的は、参加人の原、被告に対する訴訟の判決と、原告の被告に対する訴訟の判決との間に矛盾を生じさせないとすることによつて、原告の被告に対する訴訟における馴合判決を防ぐところにあると解される。ところが、原告の被告に対する訴えが取下げられてしまえば、馴合判決が取得される基礎がなくなつてしまうし、参加人の原、被告に対する訴訟の判決との矛盾を考慮する余地もなくなる訳であるから、原告の被告に対する訴えの取下が参加人の同意がなくとも効力を生ずるとしても、それが民事訴訟法七一条前段の右目的に反するとすることはできない。そのうえ、参加人の原、被告に対する訴えは右取下に拘らず存続し、参加人はその訴えに対する判決で目的を達することができる。これらの点を考慮すると、第一審原告の第一審被告に対する訴えの取下についてはその訴えの直接の当事者ではない第一審参加人の同意がないことは、訴え取下の効力が生ずることの妨げとはならないと解すべきである。
そうすると、右訴えは適法に取下げられ、これに対応する部分の原判決も効力を失つたから右訴えについては当裁判所の判断を示さないこととする。
四結論<省略>
(上田次郎 道下徹 井関正裕)