大阪高等裁判所 昭和58年(ラ)155号 決定 1983年7月11日
抗告人 小川隆雄 外二名
相手方 西山法子 外二名
主文
原審判を取り消す。
本件を大阪家庭裁判所に差戻す。
理由
一 抗告人小川、同石塚の抗告の趣旨及び理由は別紙(一)(同抗告人らの抗告申立書記載のもの)、別紙(二)(同抗告人らの抗告理由補充書記載のもの)のとおりであり、抗告人益子の抗告の趣旨及び理由は別紙(三)(同抗告人の即時抗告の申立書記載のもの)のとおりである。
二 原審判は、被相続人小川藤野の遺産である原審判別表(一)2ないし6の土地及び同別表(二)2ないし5の建物その他現金、預金を原審判主文掲記のとおり分割したが、その分割にあたり右土地建物及び被相続人の生前に抗告人小川に生計の資本として贈与されて特別受益となるものと認定判断した右別表(一)1の土地及び同別表(二)1の建物の価額を評価するについて、当事者全員が同意していることを認定したうえで、鑑定の方法によらず、次のような簡易な評価方法を採用した。すなわち、原審判理由に記録もあわせてみると、原審判は、大阪府宅地価格調査一覧表、不動産取引広告を主たる資料として利用した家庭裁判所調査官の土地建物価額評価に関する調査結果をほぼそのまま採用したものであるが、右評価(調査)は、まず昭和五七年一一月一二日ごろ(かりに、分割時という。)における土地建物の価額を右資料等により推定し、次いで分割時の価額を基礎として相続時(昭和四八年一〇月二五日)の価額を相続時から分割時までの土地等の価額上昇、建物の老朽化等を考慮のうえ推定するという方法によつたものといえる。分割時の土地価額は、右資料に基づいて更地価額を決め、そのうち貸家(アパートないし文化住宅)として使用されている建物(右別表(二)2ないし4)の敷地である右別表(一)2、3の土地は貸家建付借地権割合として二割の減価をしており、また現況が田であり将来宅地への転用が見込まれる同6の土地についても原審判理由2ロ(ホ)a掲記のような減価をしている。分割時の建物価額に関しては、耐用年数を経過しているため固定資産税、相続税の各評価額をそのまま分割時の価額とした右別表(二)2を除く建物について、復成式評価法を採用し、自宅用建物の建築費を坪当り四〇万円、貸家用建物のそれを坪当り三五万円とし、各建物の建築後分割時までの経過年数に応じた減価をして分割時の建物価額を算出しているが、建築費の坪当り単価として右の価額を採用した理由については何も説明していない。次いで、相続時の土地価額は、右別表(二)の各土地について一律に、分割時の各土地の価額の約五七パーセントと推定し、また、相続時の建物価額は、右別表(二)2の建物を除く各建物について前記坪当り四〇万円または三五万円という建築費を建築時から相続時までの経過年数に応じて減価して算出し、同2の建物についてのみは、前記分割時の価額をそのまま相続時の価額としている。
原審判における土地建物の評価は以上のとおりである。
ところで、原審判が右にいわゆる簡易評価の方法を採用したことに関し、記録に徴すると、抗告人益子は、貸家として利用されている建物及びその敷地たる土地と右のような借家権の負担のない土地建物を区別するなどいくつかの条件を設定してかなり詳しく土地建物の価額を鑑定することを求め(同抗告人の昭和五七年七月二九日付鑑定申立書)、相手方西山、同安井も鑑定の申立をし(同年一二月一七日付鑑定申立書)、また抗告人小川は家庭裁判所調査官の面接調査(同年一一月二二日)に対して、土地建物の鑑定を求めるとともに、その鑑定結果により自己の遺産分割の希望案を再考したい旨陳述していることが明らかであり、そして少なくとも右各抗告人が鑑定の希望を明確に撤回していわゆる簡易評価に同意したことは記録を精査しても認められないから、相続人全員が簡易評価に同意した旨の原審判の認定には疑いが残るといわなければならない。原審判の評価によると、右別表(一)(二)の土地建物の合計価額は、相続時において二億円をこえ、分割時において三億円をこえており、本件の遺産分割の対象となる不動産はかなり高価なものというべきであるが、このような場合には、相続人全員が明確に同意するなどの特別の事情のない限り、不動産価額の評価について右のような簡易評価の方法によることは妥当でなく、不動産鑑定士等専門的知識を有する者の鑑定の方法を採用するのが相当である。まして、本件においては、右別表(一)(二)の土地建物のうち貸家(文化住宅ないしアパート)として利用されている建物とその敷地たる土地の占める比重が大きいことが、原審判に徴して明らかであるが、このような借家権の負担のある建物とその敷地の評価はもともとかなり困難なものであり、原審判のした評価のように、貸家たる建物価額を建築費と建築後の経過年数だけによつて算定し、また貸家の敷地たる土地価額を更地価額からその二割を減じる(二割を減じる理由は、具体的には明らかにされていない。)という方法だけで算定することによつて、相当な評価が得られるとはとうてい考えられないところであり、記録を精査しても、原審判のした右の評価を相当なものと認めうる資料はみあたらない。
以上のとおりであつて、本件遺産分割にあたり原審判のした不動産の価額評価には、重要な部分においてその相当性を疑わせる事情があり、原審判は相当でないといわざるを得ず、そして右評価いかんによつては、原審判がした各遺産の各相続人への分割及び抗告人小川、同益子に支払を命じたいわゆる遺産取得の代償金の額に影響のあることが明らかであるから、遺産の評価が相当でないことを理由として原審判の違法を主張し、その取消を求める本件の各抗告は、理由があるといわなければならない。
よつて、原審判を取り消すこととし、本件は右の点についてさらに審理を尽くして遺産分割をするのが相当であるから、本件を原審に差戻すこととして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 荻田健治郎 裁判官 岨野悌介 渡邊雅文)
別紙 抗告理由書及び別表<省略>
〔参照〕原審(大阪家昭五七(家)二九三九号 昭五八・四・一二審判)
主文
被相続人小川藤野の遺産を次のとおり分割する。
1 相手方益子はつえ保管の現金(○○信託銀行預金残金)二四六万円を同相手方に取得させる。
2 相手方土屋正子保管の現金(竹村勇に対する貸金回収分)三二万円を相手方の取得とする。
3 下記預金債権を相手方石塚幸子の取得とする。
株式会社○○銀行○○支店
定期預金 額面金一五万円
預入日 昭和四九年八月三一日
満期 昭和五〇年八月三一日
名義人 小川藤野(被相続人)
4 別表(一)番号5の土地を申立人安井エイ子の取得とする。
相手方石塚幸子は、同申立人に対し、同土地を明渡せ。
5 別表(一)番号6の土地を申立人西山法子と相手方石塚幸子の共同取得とする(持分各二分の一)。
6 別表(一)番号4の土地と別表(二)番号5の建物を相手方土屋正子の取得とする。
相手方石塚幸子は、相手方土屋正子に対し、同土地と同建物を明渡せ。
7 別表(一)番号2、3の各土地と別表(二)番号2、3、4の各建物を相手方益子はつえと相手方小川隆雄の共同取得とする(持分各二分の一)。
8 遺産取得の代償として、相手方益子はつえは、申立人安井エイ子、同西山法子、相手方石塚幸子、同土屋正子に対し、各金二二九万円あてを、それぞれ支払え。
9 遺産取得の代償として、相手方小川隆雄は、申立人安井エイ子に対し金一三五三万円、申立人西山法子に対し金二七七万円、相手方石塚幸子に対し金二六二万円、相手方土屋正子に対し金二三八万円を、それぞれ支払え。
理由
当裁判所は、一件記録及び調査・審問の各結果により、以下摘示の各事実を認定し、その他諸般の事情を考慮して、次のとおり判断する。
1 相続人と法定相続人
被相続人は、昭和四八年一〇月二五日死亡し、その相続が開始した。
その相続人は、長女申立人西山、二女申立人安井、三女相手方益子、四女相手方土屋、五女相手方石塚、三男相手方小川の六名である。
従つて、右相続人らの法定相続分は、昭和五五年法律第五一号による改正前の民法九〇〇条一号四号により、いずれも六分の一となる。
2 遺産の範囲及びその評価額
(1) 不動産
イ 範囲
(イ) 別表(一)番号2ないし6の各土地及び別表(二)番号2ないし5の各建物は、遺産である。
(ロ) 申立人は、別表(二)番号6記載建物も本件遺産である旨主張するけれども、その存在を認めうる確証はないから、これは遺産ではない。
(ハ) なお、八尾市の固定資産課税台帳には、八尾市○○×丁目×××番地所在未登記居宅一三八・二八m2が存在する旨の記載がみられる。ところで、同建物は、もと別紙図面の南側空地部分に存在したが、昭和五四年頃取壊されて現存しない。従つて、これは遺産ではない。
(ニ) 相手方小川は、被相続人から生前に生計の資本として別表(一)番号1の土地と別表(二)番号1の建物の贈与を受けたが、税務対策上の理由から登記名義を被相続人のままに放置していたものである。
従つて、同土地・建物は、本件遺産に属せず、相手方小川の特別受益とみるべきである。
ロ 評価額
当事者全員は、以下の簡易な評価方法をとることに同意している。
(イ) 別表(一)番号2の土地について
a 評価の方法
昭和五七年度固定資産税評価額は金五、三八五、七九八円、相続税評価額は金一一、三四五、四〇〇円である。
その他、大阪府宅地価格調査一覧表、不動産取引広告等の資料に基いて簡易評価した。
b 相続開始当時の時価 金一、一一六万円
c 現在の時価 金一、九五九万円
(ロ) 別表(一)番号3の土地について
a 評価の方法
昭和五七年度固定資産税評価額は金二三、六一四、四八八円、相続税評価額は金四九、七四四、八六〇円、そのほか(イ)aと同じ。
b 相続開始当時の時価 金四、八九四万円
c 現在の時価 金八、五八八万円
(ハ) 別表(一)番号4の土地について
a 評価の方法
昭和五七年度固定資産税評価額は金八、二一九、二一六円、相続税評価額は金一八、五七七、六八〇円、そのほか(イ)aと同じ。
b 相続開始当時の時価 金二、一三九万円
c 現在の時価 金三、七五三万円
(ニ) 別表(一)番号5の土地について
a 評価の方法
昭和五七年度固定資産税評価額は金三、八五〇、五六〇円、相続税評価額は金一三、四七六、九六〇円である。
課税上は現況畑となつているが、周辺は宅地として整備されており、この土地も、宅地として十分利用可能であるから、宅地並みの評価をする。そのほか(イ)aのとおり。
b 相続開始当時の時価 金二、三〇七万円
c 現在の時価 金四、〇四七万円
(ホ) 別表(一)番号6の土地について
a 評価の方法
昭和五七年度固定資産税評価額は金九、〇九〇、〇〇〇円、相続税評価額は金三五、四五一、〇〇〇円である。現況は田であるが、周辺の事情からみて宅地転用が可能である。宅地造成費として坪当り金六八、九六〇円を控除し、市街地周辺農地として二〇%を控除し、周囲に道路がないということで二〇%を控除する。そのほか(イ)aのとおり。
b 相続開始当時の時価 金五、八四〇万円
c 現在の時価 金一億二四七万円
(へ) 別表(二)番号2の建物について
a 評価の方法
これは耐用年数を経過しているので、固定資産税評価額によることとする。
昭和五七年度固定資産税評価額、相続税評価額は、共に金三〇、六六七円である。
b 相続開始当時の時価 金三万円
c 現在の時価 金三万円
(ト) 別表(二)番号3の建物について
a 評価の方法
固定資産税評価額を基礎とし、復成式評価法により算定した。
床面積は現況床面積、耐用年数は木造であるから二四年とする。また、自宅用の場合の建築費は坪当り金四〇万円、アパート・文化住宅等賃貸用の場合の建築費は坪当り金三五万円とする。
昭和五七年度固定資産税評価額、相続税評価額は共に金二、三〇七、二一〇円である。
b 相続開始当時の時価 金三、六六二万円
c 現在の時価 金一、五九〇万円
(チ) 別表(二)番号4の建物について
a 評価の方法
(ト)aのとおり。
昭和五七年度固定資産税評価額、相続税評価額は共に金八八七、五六二円である。
b 相続開始当時の時価 金七三七万円
c 現在の時価 金四五七万円
(リ) 別表(二)番号5の建物について
a 評価の方法
(ト)aのとおり。
昭和五七年度固定資産税評価額、相続税評価額は共に金一、九三九、五五八円である。
b 相続開始当時の時価 金一、六四一万円
c 現在の時価 金九二六万円
(2) 預金債権
株式会社○○銀行○○支店
定期預金 額面金一五万円
預入日 昭和四九年八月三一日
満期 昭和五〇年八月三一日
名義人 被相続人
これは、本件遺産である。
なお、相手方益子は、他にも遺産に属する被相続人名義の預金が存在する旨主張するけれども、その確証はない。
(3) 現金
イ ○○信託銀行の被相続人名義の預金から相続税支払のための○○税務署長による債権差押強制執行後の残金二、四六一、六七九円を、相手方益子が昭和五〇年八月一四日受領したから、金二四六万円をもつて本件遺産であると認める。
ロ 被相続人は、生前中村勝に貸金債権を有していたが、相手方土屋は、相続開始後右中村から合計金三二七、六六〇円を受領したから、金三二万円をもつて本件遺産であると認める。
(4) 管理費用の清算
遺産に属する不動産の改築費、火災保険料、公租公課等の必要経費の出損と自用あるいは家賃等の法定果実の取得との清算は、いわゆる訴訟事項に属するので、本件遺産分割手続中においては清算をしないこととする。
また、本件においては、相手方益子が収取した法定果実を上廻るだけの管理費用を出損した確証がないので、この点においても、本件遺産分割の対象としないこととする。
(5) 本件遺産の総額
イ 相続開始当時
次式のとおり金二億二、六三二万円となる。
1,116万円+4,894万円+2,139万円+2,307万円+5,840万円+3万円+3,662万円+737万円+1,641万円+15万円+246万円+32万円 = 2億2,632万円
ロ 現在
次式のとおり金三億一、八六三万円となる。
1,959万円+8,588万円+3,753万円+4,047万円+1億247万円+3万円+1,590万円+457万円+926万円+15万円+246万円+32万円 = 3億1,863万円
3 特別受益
(1) 相手方土屋は、昭和四八年四月頃、被相続人から、生計の資本として金三一九万円の贈与を受け、同年五月四日、○○○○株式会社から三重県鈴鹿郡○町大字○○字○○○×××番×××雑種地二二三m2を購入し、同年七月五日所有権取得登記を経由した。
右贈与をうけてから相続開始まで間がないので、右金三一九万円をもつて同相手方の特別受益と認める。なお、相手方土屋は、他の相続人が貰つている結婚費用に見合うものであるから、特別受益に該当しない旨主張するけれども、他の相続人らが生前被相続人から結婚費用として相手方土屋が受領した前記金員に見合うものを受領したことを認めうる確証はない。従つて、同相手方の右主張は理由がない。
(2) 相手方石塚は、相手方益子が生前に被相続人から金五〇万円の贈与を受けた旨主張するけれども、これを認めうる確証はない。
(3) イ 相手方小川は、前記二(1)イ(ニ)認定のとおり、別表(一)番号1の土地と別表(二)番号1の建物の生前贈与を受けているから、これらを特別受益とみるべきである。
ロ 別表(一)番号1の土地について
(イ) 評価の方法
前記二(1)ロ(イ)aのとおり。なお、昭和五七年度固定資産税評価額は金二、七二六、五〇〇円、相続税評価額は金六、二七〇、九五〇円であつた。
(ロ) 相続開始当時の時価 金六二三万円
ハ 別表(二)番号1の建物について
(イ) 評価の方法
前記二(1)ロ(ト)aのとおり。なお、昭和五七年度固定資産税評価額、相続税評価額は、共に金三六二、二四六円であつた。
(ロ) 相続開始当時の時価 金四一三万円
(4) 特別受益の総額
上記(1)と(3)を合計すると、金一、三五五万円となる。
4 相続分の計算
(1) みなし相続財産 金二億三、九八七万円
2億2,632万円+1,355万円 = 2億3,987万円
(2) 各自の本来の相続分 金三、九九七万円
2億3,987万円×1/6 = 3,997万円
(3) 申立人両名、相手方益子、同石塚の結局の相続分 いずれも金三、九九七万円
(4) 相手方土屋の結局の相続分 金三、六七八万円
3,997万円-319万円 = 3,678万円
(5) 相手方小川の結局の相続分 金二、九六一万円
3,997万円-623万円-413万円 = 2,961万円
5 各相続分の価額
(1) 申立人両名、相手方益子、同石塚 各金五、六二九万円
3億1,863万円×(3,997/3,997×4+3,678+2,961) = 5,629万円
(2) 相手方土屋 金五、一七八万円
3億1,863万円×(3,678/3,997×4+3,678+2,961) = 5,178万円
(3) 相手方小川 金四、一六九万円
3億1,863万円×(2961,/3,997×4+3,678+2,961) = 4,169万円
6 分割の方法
(1) 分割の基準
遺産分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年令、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをしなければならない(民法九〇六条)。
(2) 当事者の年令、職業、心身の状態、生活の状況
イ 申立人西山
同申立人は、五三才の健康な主婦で、夫は農業を営み、三人の子供と共に、夫所有の家屋に居住している。一同健康である。
ロ 申立人安井
同申立人は、五二才の健康な主婦で夫は会社員で、姑、長男夫婦、孫と夫所有家屋に居住している。一同健康である。
ハ 相手方益子
同相手方は、四八才の主婦で、夫は現在所在不明であり、娘と二人で生活している。そして、同相手方は、別表(二)番号2、3、4を占有管理している。
ニ 相手方土屋
同相手方は、四三才で学校給食調理員をしており、健康で、二子と同居している。普通の経済生活をしている。
ホ 相手方小川
同相手方は、健康な四〇才の男子で、妻、四子とともに八尾市○○○○×丁目××番地の自宅に居住し、別表(二)番号1の建物を店舗・倉庫として利用して電機商を営み、普通の経済生活をしている。
へ 相手方石塚
同相手方は、三七才の健康な主婦で、夫、二子とともに別表(二)番号5の建物に居住し、別表(一)番号5の土地を家庭菜園として第三者に使用貸し、同番号6の土地を自己の家庭菜園として利用している。
夫は、建築業を自営しており、普通の経済生活をしている。
(3) 各相続人の分割についての希望
イ 申立人西山
別表(一)番号6の土地の西側半分の取得を希望する。
ロ 申立人安井
別表(一)番号5の土地の取得を希望する。
ハ 相手方益子
別表(一)番号2、3の各土地、別表(二)番号2、3、4の各建物の取得を希望する。
ニ 相手方土屋
借家のある部分の土地・建物の単独取得を希望する。
ホ 相手方小川
別表(一)番号1、5の土地と別表(二)番号1の建物、借家のある部分の西側部分の土地・建物の取得を希望する。
代償金の支払も予定している。
へ 相手方石塚
不動産を売却し、代金を分割したい。
不動産の現物分割の場合には、代償金支払の不要な部分を取得したい。現在居住している別表(二)番号5の建物は老朽化しているので取得を希望しない。
(4) 分割の方法
以上認定の各事実その他一切の事情を勘案して、次のとおり分割する。
イ 現金について
(イ) 前記2(3)イ認定の現金二四六万円を相手方益子の取得とする(残額は5,629万円-246万円 = 5,383万円となる)。
(ロ) 前記2(3)ロ認定の現金三二万円を相手方土屋の取得とする(残額は5,178万円-32万円 = 5,146万円となる)。
ロ 預金債権について
前記2(2)認定の預金債権金一五万円を相手方石塚の取得とする(残額は5,629万円-15万円 = 5,614万円となる)。
ハ 不動産について
(イ) 別表(一)番号5の土地を申立人安井の取得とする(残額は5,629万円-4,047万円 = 1,582万円となる)。
従つて、同土地を占有している相手方石塚は、申立人安井に対しこれを明渡すべき義務がある。
(ロ) 別表(一)番号6の土地は、申立人西山と相手方石塚の共同取得(持分各二分の一)とする(申立人西山の残額は、5,629万円-5,123万円 = 506万円、相手方石塚の残額は5,614万円-5,123万円 = 491万円となる)。
(ハ) 別表(一)番号4の土地と別表(二)番号5の建物は、相手方土屋の取得とする(残額は5,146万円-4,679万円 = 467万円となる)。
従つて、同土地と同建物を占有している相手方石塚は、相手方土屋に対しこれらを明渡すべき義務がある。
(ニ) 別表(一)番号2、3の各土地と別表(二)番号2、3、4の各建物は、相手方益子と相手方小川の共同取得(持分各二分の一)とする(相手方益子の超過額は6,299万円-5,383万円 = 916万円、相手方小川の超過額は6,299万円-4,169万円 = 2,130万円となる)。
(ホ) そこで、相手方益子は、遺産取得の代償として、申立人安井、同西山、相手方石塚、同土屋に対し、各金二二九万円あてを、それぞれ支払うべき義務がある。
従つて、その支払を命ずることとする。
また、相手方小川は、遺産取得の代償として、申立人安井に対し金一、三五三万円、申立人西山に対し金二七七万円、相手方石塚に対し金二六二万円、相手方土屋に対し金二三八万円を、それぞれ支払うべき義務がある。
従つて、その支払を命ずることとする。
よつて、主文のとおり審判する。