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大阪高等裁判所 昭和58年(ラ)447号 決定 1984年1月27日

抗告人 崔順伊

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一、抗告の趣旨及び理由

別紙のとおり

二、当裁判所の判断

一件記録によれば、抗告人は本件物件の期間入札について中村友隆を代理人に選任し、昭和五八年一一月二一日京都地方裁判所執行官に入札書を提出したのであるが、右入札書の代理人欄には「京都市右京区梅津南上田町五八番地(富商ビル)株式会社富商代表取締役中村友隆」の記名印が押捺され、捺印は「株式会社富商代表取締役」と刻した丸判が押捺されているところ、同封添付の抗告人作成の委任状の代理人氏名は「中村友隆」とのみ記載されていたこと、そこで執行官は委任状表示の代理人氏名と入札書表示の代理人氏名が不一致であることを理由に右入札書を無効としたことが明らかである。

抗告人は、入札書記載の代理人の表示中「株式会社富商代表取締役」の記載は単なる肩書の記載であって意味のないものであるから、委任状と入札書の代理人氏名は「中村友隆」として一致している旨主張するけれども、前記入札書の代理人欄の記載は株式会社富商が代理人である旨の表示と解するほかはない(因みに右会社の代表者中村友隆は本件物件の所有者であり、その住所は登記簿上京都市右京区梅津高畝町三六番地となっていて、入札書の住所の表示とも異なっている)。また抗告人は「株式会社富商代表取締役」の記載は余事記載として抹消を許すべきである旨主張するけれども、入札書を執行官に差し出した後においては入札書の記載の訂正、追加、抹消は一切許されない(民事執行規則三八条六項、四九条)のであるから、右は主張自体失当である。そのほか一件記録を精査してみても原決定を取消すに足りる違法事由はみあたらない。

よって原決定は相当であって、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 荻田健治郎 裁判官 堀口武彦 渡邊雅文)

<以下省略>

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