大阪高等裁判所 昭和59年(ラ)244号 決定
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【説明】
同旨の裁判例として、大阪高決昭58.10.26(本誌五一五号一五五頁)がある。
【判旨】
疎明によれば、(1)相手方会社は、会社更生手続中に従業員の持株制度を採用したが、それに伴つて、昭和五三年、比叡山観光タクシー株式会社共済会(以下「共済会」という。)を設け、株主は株主である共済会正会員の中から選任された共済会理事に対して株式信託をするという株式信託制度を創設したこと、(2)この制度のもとにおいては、従業員は株式信託契約を締結しない限り株式を取得することができず、また、信託期間は信託者が株主の地位を失う時までとされていること、(3)もつとも、株主権のうち利益配当請求権及び残余財産分配請求権は信託の対象とされていないこと、(4)各株主の持株数は平等とされ、昭和五八年二月一〇日現在の株主数は抗告人らを含め一二五名であり、いずれも右株式信託制度に従つて共済会の理事との間で株式信託契約を締結していること、(5)相手方会社は昭和五八年二月一〇日に前記臨時株主総会を開催するについて、右株式信託制度に従つて、同年一月二七日、当時の共済会理事五名に対し臨時株主総会招集通知書を交付し、同年二月一〇日、右理事全員出席のもとに右総会が開催され、取締役として相手方東前良一、同平山憲夫、同柳本五郎、同日月康晴を、監査役として同上羽光男をそれぞれ選任する旨の決議がなされた上、右総会に引き続いて取締役会が開催されて相手方東前良一が代表取締役に選任されたこと、(6)右総会については抗告人らを含む一般株主に対しては招集通知がなされず、その出席もないまま開催され右決議がなされたこと、以上の事実が一応認められる。
ところで、右認定の事実によれば、本件株式信託契約のもとにおいては、相手方会社の株主は、株主として株式信託契約を締結するかどうか及びこれを解約するかどうかを選択する自由を有せず、かつ、自ら株主として株主総会において議決権を行使する機会が全くないこととなるのであつて、該契約は株主の地位を著しく害し、会社法の精神に反するということができる。のみならず、右株式信託契約の対象から、株主権のうちいわゆる自益権に属する利益配当請求権及び残余財産分配請求権が除外されており、この点においても該契約は株主の地位を不可分のものとする会社法の精神にもとるものというべきであつて、これらの点に徴して、該契約は無効と解するのが相当である。
そうしてみると、共済会の理事は信託契約に基づいて株主総会の招集通知を受け、議決権を行使する立場にないことになり、しかも、前記認定のように右株式信託制度は相手方会社の関与のもとで創設されたものであるから、右株式信託契約は相手方会社に対する関係でも無効というほかなく、前記認定の五名の共済会理事に対してなされた招集通知をもつて一二五名の株主全員に対する招集通知とみなし、また、右五名の理事のみの出席のもとでなされた取締役等の選任決議をもつて右株主の出席のもとになされた決議とみなすことはできないのであつて、右五名の理事がもともと各自二〇〇株の株主であることを考慮しても、右株主総会の招集の手続及び決議の方法は違法であり、したがつて右株主総会の決議には瑕疵があるといわなければならない。
(村上明雄 堀口武彦 安倍嘉人)