大阪高等裁判所 昭和59年(ラ)265号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【判旨】
本件抗告の趣旨及び理由は、別紙記載のとおりである。
そこで考えてみるに、本件記録によれば、本件申立は、民事執行法二二条五号所定の執行証書によつてなされたものであるが、当該執行証書は、公証人法四〇条により、抗告人と債務者野村俊夫との間において作成された公正証書作成嘱託用委任状に記載された「債務者野村俊夫は抗告人に対し、昭和五八年八月九日現在において、住友カード利用債務一七万六三三〇円と遅延損害金五一〇四円との合計確定債務一八万一四三四円及びこれに対する完済まで年三割の割合による遅延損害金の債務を負担していることを承認し、その債務元本一八万一四三四円は同年同月から同年一一月まで毎月六日に五万円宛、同年一二月六日に三万一四三四円を各分割して支払い、遅延損害金は同年一二月六日に一括して支払う」旨の債務確認並びに弁済契約条項なる書面を引用し、かつ添付して、作成されていること、ところが、右添付書面は、公証人法三七条二項及び三項・三八条三項の各規定に違反していることを認めることができる。元来、公証人の作成する証書に引用し、かつ添付して、公証人の作成した証書の一部とみなされる書面については、公証人法三七条ないし三九条の各規定が準用されること同法四〇条二項の明定するところであるから、右の添付書面たるべき書面を作成する場合においては、その書面の性質に応じ、可及的に右三七条ないし三九条の各規定に従つて作成されるべきであるが、本件における添付書面は、その点に関する配慮を著しく欠如しているものといわなければならない。しかしながら、本件添付書面は、原本をいわゆるゼロックス・コピーしたものであつて、その作成後において、恣にその記載文字が改ざんされたり、文字が挿入又は削除されたりした形跡は全く認められず、今後もそのおそれはないことが窺われるから、右各規定違反により、直ちに本件執行証書が公正の効力を有しないということはいえない。右認定の事情からすれば、本件執行証書は、その添付書面に前記各規定の違反があるけれども、その違反の態様及び程度からして、公証人の作成する証書に引用・添付する書面として効力を有しないとまでいい得る重大な法規違反であるとはいえず、右添付書面は、公証人の作成した証書の一部とみなし得るものとして効力があるというべきである。そうすると、本件執行証書は、民事執行法二二条五号所定の執行証書として効力を有し、本件申立の債務名義となり得るものであるから、そうでないことを前提とする原決定は不当である。よつて、原決定を取消した上、本件申立の審理のため、本件を原審の大阪地方裁判所に差戻すこととし、主文のとおり決定する。
(小林定人 坂上弘 小林茂雄)