大阪高等裁判所 昭和59年(行コ)44号 判決 1985年3月13日
京都市山科区音羽初田町一番地三
控訴人兼附帯被控訴人(以下、控訴人という)
若林加幸
右訴訟代理人弁護士
高田良爾
同
吉田隆行
同
安保嘉博
同
小川達雄
同
松村いづみ
同
佐藤克昭
同
竹下義樹
同市東山区馬町東大路西入ル新町
被控訴人兼附帯控訴人(以下、控訴人という)
東山税務署長
伴恒治
右指定代理人検事
田中治
右指定代理人
山下博
同
宮本昭和
同
田中邦雄
主文
控訴人の本件控訴を棄却する。
被控訴人の附帯控訴に基づき原判決中被控訴人の敗訴部分を取消す。
控訴人の請求を棄却する。
訴訟費用は第一、二審とも(控訴費用、附帯控訴費用を含む)控訴人の負担とする。
事実
第一申立
一 控訴人
1 原判決中控訴人の敗訴部分を取消す。
2 被控訴人が控訴人に対し、昭和五五年三月三日付でした昭和五一年分、同月七日付でした同五二年分、同五三年分の所得税の更正決定のうち、総所得金額が同五一年分は一一六万五〇〇円、同五二年分は一二六万四〇〇〇円、同五三年分は九一万五〇〇〇円を超える部分及びこれに対応する過少申告加算税賦課決定処分を取消す。
3 本件附帯控訴を棄却する。
4 訴訟費用は第一、二審とも(附帯控訴費用を含む)被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文と同旨
第二主張
次のとおり付加するほか原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
1 控訴人
(一) 同業者A及びC、C'は控訴人の類似同業者ではない。仮にそうでないとしても、僅か二件の同業者の所得によって控訴人の所得を推計するのは合理性に欠け許されない。
(二) 同業者A及びC、C'の青色事業専従者(妻を含む)の給与額を雇人費に加算すべきである。そうすると、同業者A及びC、C'の雇人率は本判決添付別表一記載のとおりであり、これにより控訴人の所得を算定すると同別表第二記載のとおりとなる。
2 被控訴人
(一) 同業者Bも控訴人の類似同業者である。したがって、同業者A、B、C、C'の所得により控訴人の所得を推計すると、控訴人の昭和五三年分の所得に関する請求も理由がない。
(二) 同業者の事業専従者はいずれも妻であり、控訴人の事業専従者も妻であるから、同業者の雇人費率を算出するにあたって事業専従者の給与額を雇人費に加算する必要はない。
第三証拠
原、当審記録の証拠目録記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 当裁判所の判断は次のとおり付加、訂正するほか原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。
1 本件各更正処分のうち昭和五一年分、同五二年分並びにこれに対応する過少申告加算税賦課決定処分について
(一) 原判決一一枚目裏四行目及び一二枚目表九行目の「証人」を「原審における証人」と、同行の「原告」を「原、当審における控訴人」と、一五枚目表五行目の「証人」を「前記証人」と、同八行目の「原告」を「前記控訴人」と、同九行目の「看板や」を「看板用の」と、同末行の「仕事の中にも同様のものが」を「仕事は間仕切のパネル紙やクロスを貼るもので」と、一七枚目表六行目の「原告」を「原審における控訴人」と各訂正する。
(二) 同一四枚目表末行から同裏七行目までの同業者Bについての説示を削除する。
(三) 前記乙第四号証の二、三によると、同業者Aの事業専従者は妻だけであり(前記乙第六号証の二、三によると、同業者Cに事業専従者はいない)、他方、成立に争いのない乙第四六、第四七号証によると、控訴人は住民税について妻を専従者として申告しているのであるから、このような場合、同業者Aの雇人費率を算定するにあたり同業者Aの給与額を雇人費に加算しなくても格別不合理とはいえない。
(四) 当裁判所は後記のとおり同業者Bも控訴人の類似同業者であると認めるが、これを除外して考察しても、控訴人の請求は理由がない。比準同業者の数が二件であるからといって、控訴人の所得の推計が不合理であるとはいえない。
2 同五三年分及びこれに対応する過少申告加算税賦課決定処分について(以下、同五一年分、五二年分に関する原判決理由説示を重ねて引用のうえ、次のとおり付加、訂正する。)
(一) 原判決一四枚目裏一行目の「当裁判所」から同七行目の「えない。」までを次のとおり訂正する。
当裁判所が真正に作成されたものと認める乙第五号証の四によると、同業者Bの昭和五三年分の収入金額、売上原価、一般経費、雇入費、外注費は原判決添付別表2記載のとおりであることが認められ、この認定に反する証拠はない。
その方式及び趣旨により公務員作成の文書として真正に成立したものと推定される乙第四八号証、当審における証人河尻一雄、同田中邦雄の各証言によると、同業者Bは京都市内で展示装飾及び襖張りを行い、昭和五三年において襖張りの仕事は全体の二割程度であったことが認められるから、同業者Bは控訴人の類似同業者ということができる。右認定に反する原当審における控訴人の供述及び弁論の全趣旨により真正な成立を認める甲第一〇号証の供述記載は信用し難い。
そこで、当裁判所は同業者Bを選定したことは合理性があると認める。
(二) 同一六枚目表二行目の「A、」の次に「同業者B、」を付加し、同三行目の「8記載」を「2記載の昭和五三年分」と、同八行目及び同裏三行目の「8」を「3の昭和五三年分」と、一七枚目裏七行目の「本件係争」を「昭和五三年」と、同八行目の「8」を「3の昭和五三年分」と、一八枚目表四行目の「七二二万五六九七」を「七八二万四四〇七」と、同五行目の「本件」から同一〇行目の「筋合」までを「昭和五三年分の本件更正処分並びに過少申告加算税賦課決定処分は正当」と各訂正する。
(三) 前記乙第四号証ないし第六号証の各四によると、同業者A、B、Cの事業専従者は妻だけであるから、雇人費率算定にあたり妻の給与額を雇人費に加算しなくても不合理とはいえない。
二、よって、控訴人の本件控訴は理由がないから棄却し、被控訴人の本件附帯控訴に基づき原判決中被控訴人の敗訴部分を取消し、控訴人の請求を棄却することとし、民訴法九六条、九五条、八九条を各適用し、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤野雄 裁判官 仲江利政 裁判官 蒲原範明)
別表1 同業者率(所得率・雇人費・外注費率)一覧表
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別表2
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