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大阪高等裁判所 昭和59年(行コ)5号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一当事者間に争いのない事実、本件一〇年定年制が、被控訴人において採用、施行された経緯及び実情並びに税法上退職所得の軽課優遇される理由に関する当裁判所の認定判断は、原判決<中略>一〇枚目裏四、五行目の「原則として」から一一枚目表八行目末尾までを「その金員が退職すなわち勤務関係の終了に伴い、従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部後払いの性質を有する一時金として支払われるか、形式的には右要件を備えていなくても実質的にみて右要件の要求するところに適合し、課税上これと同一に取り扱うことを相当とするものであることを要すると解すべきである。」に訂正するほか、原判決の理由一、二の1、2に記載のとおりであるから、これを引用する。

二そこで、本件一〇年定年制に基く「退職金」が所得税法上退職所得に該当するか否かについて考えてみるに、前記認定のとおり被控訴人の勤続一〇年定年制によつて右退職金を受給した従業員一五名のうち、二名はその後ほどなく退職したがいずれも自己の都合によるものであり、その余の者は原判決添付第一目録A欄記載の一二名を含め全て改めて再雇用契約を締結することなく、引続き被控訴人に勤務し、給与、役職、待遇等につき何の変化もなく、社会保険の切りかえもなされなかつたのである。

そもそもかゝる定年制が採用された直接の動機は、前記のように、主として従業員の側から会社倒産の危険に備えて、満五五才の定年時まで待たなくても退職金の支給を受けられる方法として、右定年制の採用が要望され、被控訴人もこれに同意し、労使の一致した意見に基くものであり、租税回避の目的に出たものとは認められないけれども、右定年制に対する従業員の関心は、専ら勤続一〇年の段階で退職金名義で金員を支給されることにあり、その段階で退職しなければならないとは考えておらず、むしろ従前の勤務関係の継続を当然のこととして予定しており、使用者側もこれと異なる意識をもつていたとはみられない。

そして本件定年制の適用により退職金名義の金員を受給した原判決添付第一目録記載従業員一二名について、その受給後存続する勤務関係が従前の勤務関係の延長ではなく、新たな雇用契約に基くものと認めるに足る証拠はなく、更に右金員が定年延長、退職年金制度の採用等の合理的理由による退職金支給制度の実質的改変による精算の必要に基く支給であるとか、勤務関係の性質、内容、労働条件等において形式的に継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特段の事情の存在は、本件の全証拠を精査しても認めることができない。

そうすると、勤続満一〇年の時点で退職金名義で前記従業員一二名の受給した本件金員は、勤務関係の継続中における給与であつて、退職すなわち勤務関係の終了という事実によつて初めて給付されるものではなく、実質的にみて課税上「退職により一時にうける給与」と同一に取り扱うことを相当とするものでもないといわなければならないから、控訴人において右金員を給与所得であるとしてなした本件各処分は、適法であり、その取消しを求める被控訴人の請求はいずれも失当として排斥を免れない。

(石川恭 仲江利政 蒲原範明)

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