大判例

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大阪高等裁判所 昭和60年(う)1241号 判決

論旨は,要するに,原判決の量刑不当を主張し,被告人に対し死刑を科した原判決の量刑は重きに失し不当である,というのである。

そこで,所論と答弁にかんがみ記録を調査し,当審における事実取調べの結果をもあわせて検討し,次のとおり判断する。

本件は,住宅分譲,不動産取引仲介等を営業内容とするユニテの代表取締役である被告人が,経営の不振から多額の負債を抱え,その弁済,とりわけ,手形の決済資金に窮したことから,かつて業務提携して土地開発事業を行ったことがあり,また,ゴルフ等を通じて個人的にも交際のあったダイケンの代表取締役A男(当時39歳)との間で進めていた土地の造成・販売の業務提携契約を至急にまとめ,その前渡金として1,000万円程の支払いを受けようと考え,同人に土地取引の架空の儲け話を持ち掛けて同人の気を引くことを思いつき,昭和57年3月20日,同人に会って業務提携契約を促し1,000万円程の援助の依頼をしたものの,これを拒絶されたが,同人が被告人の持ち出した架空の商談に乗り気になりダイケンに電話して手付金の都合もついたとまで言うのを聞くに及んでこの際,この架空の商談を詰め,同人に手付金名下の現金か小切手を持参させることができれば,前記の援助が受けられない時には,同人を殺害してこの小切手等を奪う機会も生ずるものと考え,あえてその物件の現地なるものに案内するなどしたのち,すっかりその気になっている同人に対し,翌21日にユニテの事務所で地主に会わせるので小切手を持参すること及び23日に現金化できる金額が5,000万円に満たない時は追手付金として後日支払うことにするなどと言い寄ってこれを取り決めたうえ,正午ころに来るように約束させ,その直後に,同人を殺害して小切手等の強取を実行する事態になった場合に備えて大人用金属バット1本(重さ907グラム)を購入して準備し,21日午後零時5分ころ,ユニテの事務所を訪れた同人に対し,業務提携の契約金の前払いを懇願したものの拒否されたうえ,「大体今日はそんな話を聞きにきたんと違いまんがな。なんやったら日改めましょか。」などと文句を言われたり,侮辱的言辞を弄されたりしたことから,予め考えていたとおり同人を殺害してその持参した小切手を強取するほかないと決意し,同日午後零時25分ころ,右の金属バットで同人の後頭部を数回殴打し,さらに倒れている同人の息の根を止めるべく,事務所内の物入れから麻縄を取り出して同人の首に巻きつけて約5分間緊縛し続けて同人を窒息死させたうえ,同人着用の背広上着内ポケットにあった財布からダイケン振出にかかる金額3,000万円の小切手1通を強取し(原判示第2の1),ついで,右犯行を隠蔽するため,翌22日午前4時30分ころ,同人の死体を大阪府下の山中まで運んだうえ,雑木林の中に掘った穴に埋めて遺棄し(原判示第2の2),さらに,強取した小切手の現金化の方法を考えるうち,これをダイケンの経理担当取締役B男(当時56歳)にさせるとともに,同人から前記の架空の商談の追手付金名下にさらに2,000万円程を手に入れようと考え,その口実として,A男がスナックで客と喧嘩して相手に怪我をさせ,示談交渉のため軟禁状態にあり,同人から前記小切手を現金化し,追手付金2,000万円を捻出して地主に渡すこと及び示談金の準備をすることの指示があった旨の嘘の話を作り上げ,同月23日,電話でそのことをB男に話したのち同人と会って小切手を渡し,現金化してきた3,000万円を受領したうえ,翌24日,同人から追手付金2,000万円及び示談金100万円ができた旨の連絡を受けるや,同人を滋賀県内の人気のない分譲用別荘まで誘い出し,前記の金属バットで同人を殺害して同人の持参する現金2,100万円を奪い,あわせてA男に対する犯行の隠蔽を図ろうとの考えのもと同月25日,B男と会って,A男から前記別荘をB男に見せて値踏みをさせておくようにとの指示があった旨の嘘の話をして同人を右別荘まで誘い出し,同日午前10時20分ころ,同人の隙をみてその背後から用意した金属バットで同人の右側頭部を連続して4回くらい強打して即死させ,現金2,100万円を強取し(原判示第4の1),ついで,犯跡を隠蔽するため,その直後別荘敷地内に穴を掘って同人の死体を埋めて遺棄した(原判示第4の2),という事犯であるが,本件の罪質,動機,態様ことに犯行に至る経緯の狡猾さやその計画性,殺害の手段方法の執拗性・残虐性及び結果の重大性すなわち殺害された被害者の数,遺族の被害感情,社会的影響等について検討してみると,本件はわずか5日の間に,仕事や個人的な付き合いを通じて親交面識のあった2名の者を金員強取の目的で相次いで絞殺あるいは撲殺したうえ,その都度額面3,000万円の小切手1通と現金2,100万円という多額の金員を強取し,さらにはその度毎に犯跡隠蔽のため死体を土中に埋めて遺棄したもので,その犯行の態様は全く人を人と考えない極めて残虐かつ冷酷なものであり,その結果もまた極めて重大であること,しかも各犯行の動機は一方的に自己の金銭欲を満たすためのものであるとともに,ことにB男に対する犯行は,あわせてA男に対する犯行の隠蔽を図ったものであり,その動機において一片の人間性をもみられないのみか,A男に対する犯行についても,犯行回避に一縷の望みは抱いていたとはいうものの,予め殺害の意図のもと,結局は自分の意に沿わないとみるや,やにわに殺害するに及んだものであり,かつ,いずれの犯行の際も,前記のような冷徹な計画のもと,巧妙な作り話で被害者らを罠に陥れて誘い出し,事前に凶器の金属バットを準備携行するなどして着実に自己の意図の実現におよび,しかも犯行後においても種々の証拠隠滅工作をするなどして平然たる態度でいたこと(本件犯行が偶発的なものであり,動機において利欲的ではないとする所論が採用しえないことは,前示のとおりである。),本件被害者らにはもとよりなんらの落度もなく,むしろ,被告人を信じ,これに関わり合いをもつに至ったものであるにもかかわらず,その信頼に乗じ,否応なしに殺害されるに至ったものであり,その無念さは勿論,各妻子ら家族の受けた衝撃,その後の生活における精神的,経済的苦痛にははかりしれないものがあり,被害者の妻らはいずれも極刑を望み,とりわけ相次いで内縁の夫(B男)と弟(A男)を失ったC女は当審においても一審どおりの判決をお願いする旨述べるなど,その被害感情はいまなお厳しいことのほか,白昼,金員強取の目的で取引を仮装して日頃から面識のある者を相次いで殺害した本件が,当時の一般社会ことに経済取引の世界に与えた影響には深刻なものがあること,しかるに被告人は,前記のとおり本件犯行につき,当審に至っても,被害者両名の一方的で理不尽な言動が直接の原因であるなどと強弁して被害者らを誹謗するなど自らが犯した罪に対する反省の情は必ずしも十分であるとはいえない等の事実を考えあわせると,被告人には交通違反以外に前科はなく,これまでの社会生活においても格別問題はなかったこと,現在では被害者らを死に至らしめたことにつき一応の反省や悔悟の情を吐露し,宗教に帰依して日々写経をするなどし,あるいは被害者に対し謝罪の手紙やお花料を送る等それなりに謝罪反省の態度を示していること,妻や子供は被告人の寛刑をひたすら望んでいること,被害金員のうち,2,700万円余は還付されていることのほか所論の各情状を十分斟酌しても,その罪責は誠に重大であって,死刑の適用が慎重のうえにも慎重でなければならないことを十分考慮しても,罪刑の均衡の見地からも,また,一般予防の見地からも極刑はやむをえないものと認められる。

してみると,A男及びB男に対する各強盗殺人の罪についていずれも死刑を選択したうえ,被告人に対し死刑をもって処断することとした原判決の量刑が,重すぎて不当であるとはいえない。

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