大阪高等裁判所 昭和60年(う)1354号 判決 1986年4月24日
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役一年に処する。
原審における未決勾留日数中三〇日を右刑に算入する。
理由
本件控訴の趣意は、弁護人長池勇作成の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。
論旨は、要するに、量刑不当を主張するのであるが、所論に対する判断に先だち、職権をもつて調査するに、原判決は、その判文上明らかなように、原判示の実口径21.8ミリメートル水平二連式改造銃をけん銃であるとして、これが所持につき銃砲刀剣類所持等取締法三一条の二第一号、三条一項を適用しているが、同法にいう「けん銃」は、同法自体に特にその定義は規定されていないものの、一般社会通念として、金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃器で、片手で発射操作のできるもの(東京高裁昭和四七年五月二三日判決高刑集二五巻二号二一九頁以下参照)と、解するのを相当とするところ、前示二連改造銃及び赤松啓之作成の鑑定書並びに当審において取調べた同人の検察官に対する供述調書などによれば、右改造銃は、いわゆるショットガンと称される散弾銃(全長44.7センチメートル、重量2.2キログラム)であり、銃身及び銃床を切断して短かくしているが通常の体格の日本人にあつては片手で発射操作することは困難であるものと認められること、形態が散弾銃に類似しており、使用実包も散弾銃用のものであることなどに徴すると、同銃はむしろ同法三一条の三第一号にいう猟銃に当たるものと解される。
従つて、右改造銃の不法所持の罪につき、前示のとおりけん銃所持の罰条を適用した原判決は、その法令の適用を誤つたものであり、この誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかといわなければならないが、原判決は、右改造銃一丁の不法所持と共に火薬類である実包四発の不法所持の事実を認定し、これらを刑法五四条一項前段の関係にあるとし一罪として重い改造銃所持の罪で処断しているから、その全体を刑訴法三九七条一項、三八〇条により破棄するのほかはない。
よつて、所論量刑不当の主張に対する判断を省略し、右法条により原判決を全部破棄し、同法四〇〇条但書により更に次のとおり判決する。
(罪となるべき事実)
原判示事実と同一である。
(証拠の標目)
当審において取調べた赤松啓之の検察官に対する供述調書を付加する以外は原判示と同一である。
(法令の適用)
改造銃所持の所為につき銃砲刀剣類所持等取締法三一条の二第一号を同法三一条の三第一号と変更する外は原判示適条と同一である。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官石田登良夫 裁判官梨岡輝彦 裁判官白川清吉)