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大阪高等裁判所 昭和60年(ネ)592号 判決 1987年1月30日

第五九二号事件控訴人兼第六一六号事件被控訴人(以下一審原告という)

甲野一郎

右法定代理人不在者財産管理人弁護士

松井忠義

右訴訟代理人弁護士

伊多波重義

山元康市

金子武嗣

森下弘

第六一六号事件控訴人兼第五九二号事件被控訴人(以下一審被告という)

大阪府

右代表者知事

岸昌

右訴訟代理人弁護士

前田利明

右指定代理人

西沢良一

外三名

主文

原判決を次のとおり変更する。

一審被告は一審原告に対し、一五万円及び内一〇万円に対する昭和五七年五月一三日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

一審原告のその余の請求を棄却する。

一審被告の控訴を棄却する。

訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを五分し、その一を一審被告、その余を一審原告の各負担とする。

この判決は、一審原告勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  申立

(第五九二号事件について)

一  一審原告

1 原判決を左のとおり変更する。

2 一審被告は一審原告に対し、一八〇万円及び内一五〇万円に対する昭和五七年五月一三日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

3 訴訟費用は第一、二審とも一審被告の負担とする。

4 第2及び第3項は仮に執行することができる。

二  一審被告

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は控訴人の負担とする。

(第六一六号事件について)

一  一審被告

1 原判決中一審被告敗訴部分を取消す。

2 一審原告の請求を棄却する。

3 訴訟費用は第一、二審とも一審原告の負担とする。

二  一審原告

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は一審被告の負担とする。

第二  主張

次のとおり付加、訂正するほか原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  右事実摘示中の「原告」を全て「一審原告」と訂正する(理由中の記載についても同様である)。

二  原判決二枚目裏一二行目の「セメント床」から同三枚目表二行目の「打ちつけたり、」までを、「サファリジャケット上下を着用したまま首を締め、正座させて頭を持つて壁に打ちつけたり、四つんばいの状態にさせ、腰に巻きつけられた腰紐を一人が持つて吊り上げたり落としたりし、他方が頭を押えて床に押しつけたりした後、右サファリジャケット上下を脱ぐように命じて四つんばいの姿勢をさせた中で、背中部分を踏みつけたり、蹴つたり、頭を床に押しつけたり、」と訂正する。

三  同三枚目表末行の「放置されたのであり、」の次に、「乙川及び丙山がなした暴行の態様、これらが故意による拷問という悪質なものであることや一審原告の受けた傷害の内容、程度等の事情を考慮すると、」を、同裏三行目の「委任したが」の次に「本件訴訟の内容、右代理人らの訴訟活動の態様等からみると、」をそれぞれ加える。

四  同六枚目裏六行目と同七行目の間に次のとおり加える。

「三 一審原告の反論

1  昭和五七年五月一二日午前の取調中において、乙川から丁谷を同行するよう指示を受けて、丙山が退席したことはない。すなわち、乙川は、右丁谷を一審原告と対質するため呼び出そうとしたというのであるが、このような対質という捜査方法は特殊なものであるから、上司である捜査四係長若しくは刑事課長の許可も得ずに、乙川が独断で丙山に右同行を命じることなどあり得ないことである。

2  また、一審原告が、右取調中において、乙川に対し、その胸倉を掴むなどの暴力的行為をなしたこともない。すなわち、身柄を拘束された警察署内の取調室で取調を受けている被疑者が、取調官に対し暴行を加えるなどということは稀有のことであり、一審被告の主張するような状況下で、その主張のような攻撃的行動を一審原告がとらなければならない必然性は全く認められない。

3  一審原告の本件受傷は、同人の乙川に対する暴行を乙川が制圧する際に生じたものではなく、取調官である乙川及び丙山が、自白を得る目的ないしはいわゆる「やき」を入れるために一審原告に対し一方的に暴行を加えたことにより生じたものである。」

五  一審原告の補充的主張

1  一審原告の肋骨骨折について

本件においてX線写真上肋骨骨折の存在が証明されていないが、一般に肋骨骨折については、亀裂骨折が多く、その場合には骨折線とX線投射線が一致しにくいこと及び肋骨骨折の多くが主に肋軟骨部の損傷であり、肋軟骨部はX線に撮影されないことから、X線写真で確認できない場合がある。従つて、本件においてX線写真上で骨折が確認されないからといつて、骨折を否定すべきではない。

そして、右のようにX線写真上で骨折が認められない場合でも臨床症状で骨折の存在を確認できるところ、昭和五七年五月一九日に一審原告を診察した安立良治医師の診断によれば、咳や深呼吸で局所の疼痛をきたし、局所に圧痛があり、介達痛も存在するなど骨折の臨床症状が存在したことが明らかである。従つて、一審原告は肋(軟)骨骨折を負つていたものというべきである。

2  一審原告の着用していた下着の靴跡について

(一) 右下着の背中部分には、「スポルディング」の紋様のついた靴底及び波型をした靴底の二種類の靴跡があるが、本件暴行事件が発生した日より五日後の昭和五七年五月一七日に、一審原告の訴訟代理人である森下弘及び同山元康市両弁護士は、大淀警察署の事務室内において執務中の丙山が前記「スポルディング」の紋様のある靴を履いているのを確認しているから、右事件発生当時丙山も取調室にいて乙川と共に一審原告に暴行を加えたことは明らかである。

(二) なお、同月一九日に行われた証拠保全としての検証の際に、乙川が前記事件当時に履いていたものとして提出された革靴の底の紋様は前記の波型とは異るものであるが、本件当時乙川が運動靴を履いていたことを一審原告は目撃しており、同人の右靴により前記波型の靴跡がついたものと推認すべきである。

(三) 以上のことから、乙川及び丙山の両名が、一審原告に対し、当時着用していた上衣(サファリジャケット)を脱がせたうえ、一方的に蹴りつけるなどの暴行を加えたことが明らかである。

六  一審被告の補充的反論

1  一審原告の肋骨骨折について

一審原告が肋骨骨折をしていなかつたことは、以下の点からみても明らかである。

(一) 一審原告は昭和五七年五月一九日に安立病院でX線撮影を受けているが、同写真上は肋骨骨折は認められておらず、他にX線写真上一審原告に骨折があつたことは確認されていない。

(二) 一審原告は右同日同病院で安立良治医師の診察を受け、左肋骨骨折と診断されている。しかし、一審原告は当時大阪市内に居住していたのに、わざわざその刑事弁護人の弁護士山下潔から同人とじつ懇であつた安立医師の紹介を受けて、京都市にある右病院で診察を受けたものであり、安立医師は、X線写真上骨折を確認できないのに、又、体温、血圧、脈拍さえ計らないまま、一審原告の呼吸をしたり咳をしたりするときに痛みがある旨の愁訴のみで骨折ありと診断したにすぎないから、右診断は信用できない。

(三) また、一審原告は、右のように安立病院で診察を受けた日の午后二時頃から大淀警察署で行われた証拠保全としての検証に立会つたが、その際には一抱えもある暗幕を包んだ風呂敷包みを持参し、約二〇分間にわたり右暗幕を張るために窓わくの上に登つていた弁護士の身体を両手で支えるなどの活動をしていた。これらの行動からみると、一審原告の前記愁訴も肋骨骨折自体も虚偽と推認せざるを得ない。

2  一審原告の着用していた下着の靴跡について

(一) 一審原告が着用していた半袖シャツの背中に「スポルディング」の紋様と波型のものと二種類の靴跡が存在していたが、昭和五七年五月一九日に大淀警察署で行われた証拠保全としての検証の際に、乙川及び丙山が当時履いていた靴としてそれぞれ提出した靴の裏には右二種類の靴跡に一致するものはなく、右両名は右靴跡に符合する紋様のある靴を所持していたことはない。

(二) 同月一二日の取調の際に一審原告は右半袖シャツの上に腹巻をし、その上にサファリジャケットを着用しており、取調官が右ジャケットを脱がせたことはないから、右シャツに取調官の履いていた靴の跡が付着することは考えられない。

(三) 一審原告代理人森下及び山元両弁護士は、同月一七日に、丙山が「スポルディング」の紋様のある靴を履いているのを確認したというが、前記のように丙山は右のような靴を所持していたことはないし、また、両弁護士が右確認をしたという位置関係は、丙山が、その背後にキャビネットや書庫が並ぶ場所にあつて、右側に引出しがつき側板のある事務机に向つて、椅子に腰をかけていた際に、両弁護士が立つたまま丙山の右横方向から靴裏を見たというのであつて、その位置関係から云つても靴裏を見ることは不可能といわざるを得ない。さらに、山元弁護士は「スポルディング」の文字部分は茶色であつたというが、前記の確認したという時点では、文字部分が赤色のものしか製造されておらず、茶色のものはその後に製造されていること等を考慮すると、両弁護士が前記の確認をしたというのは見違いと考えざるを得ない。

第三  証拠関係<省略>

理由

一当裁判所の認定、判断は、次のとおり付加、訂正、削除するほか原判決の理由一ないし六項の説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決七枚目表四行目の「第一五号証」の次に「第二四号証の一、二」を、同五行目の「第五号証」の次に「第九号証、」を、それぞれ加え、同行の「弁論の全趣旨及び証人森下弘の」を「当審証人安立良治の」に訂正し、同七行目の「第八号」の前に「弁論の全趣旨及び原審証人森下弘の証言により真正に成立したものと認められる甲」を、同九行目の「被告」の前に「第二一号証(ただし、後記措信しない部分を除く)、原審における」を、同一一行目の「森下証言、」の次に「同安立証言、当審証人小山武俊の証言、原審における」を、それぞれ加える。

2  同八枚目表九行目の「被疑者」の前に「西側にあつた」を、同一〇行目の「乙川は、」の次に「右紐の端を机の引出しに挟み込んだうえ、」を、それぞれ加える。

3  同一一枚目裏八行目の「証拠保全手続」の前に「刑事訴訟法による」を加える。

4  同一二枚目裏三行目と四行目の間に次のとおり加える。

「以上の事実が認められ、右認定に反する甲第一七、二一号証の記載部分は、じ余の前掲各証拠と対比して措信できないし、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

なお、一審原告の肋骨骨折の点について付言すると、一審原告は本件受傷をした日より後に安立病院で胸部等のX線撮影をしたが、同写真上では骨折像が確認されていないことは当事者間に争いがない。しかし、<証拠>によれば、肋骨骨折の多くが主に肋軟骨部の損傷であつて、肋軟骨部はX線に撮影されないため、同部の骨折の有無は臨床症状で判定せざるを得ないことが認められる。そして、前記認定のように、本件取調室は狭く(約三・九平方メートル)、そこに事務机と椅子三脚が置かれて一そう狭隘となつた中で制圧行為がなされたのであるから、その際胸部を打撲する可能性は充分に推認できるのであり、現に昭和五七年五月一七日に行われた一審原告の身体の検証においても左側腹部に鈍痛があると訴えていたこと、<証拠>によつて認められるように、同月一九日に安立医師が一審原告を診察した際に、一審原告は深呼吸をしたり咳をすると左胸部が痛み、左を横にして寝られないことを訴えており、また、左第八肋骨の乳頭線上に圧痛と介達痛があり、他方、胸部をバスト・バンドで固定すると肋骨痛が減少することも確認されており、さらに同医師の診察で胸骨部の皮下に出血痕である変色部分が確認されていること、一審原告が前記制圧行為を受けた後右診察を受けるまでに他に胸部に打撃を受けたことを認めるに足りる証拠がないこと並びに<証拠>を総合すると、一審原告は前記制圧行為を受けた際に左肋軟骨骨折をしたものと認めるのが相当である。なお、一審原告は、右診察を受けた日の午后の証拠保全の際に、一審被告の指摘するようにかなり上半身に負担のかかる活動を行つていたことが<証拠>により認定でき、一般的にはこのような行動を骨折をした患者が行うのは不自然というべきであるが、<証拠>によれば、本件の一審原告については右時点(受傷後七日)で右行動をとることは不可能でないことが認められるし、前記認定に供した事情及び証拠と対比すると、右の一審原告の行動は、前記骨折の認定を否定するものではなく、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

ところで、一審原告は、本件暴行は自白を強要するため捜査官から一方的に加えられたものであり、その方法も頭を持つて壁に打ちつけたり、腰紐を持つて吊り上げて落としたり、四つんばいの姿勢にさせて背中等を踏みつけたり蹴つたりするなど過酷なものであつた旨主張し、<証拠>には、右主張に沿う記載があり、また、一審原告は、昭和五七年五月一七日に行われたその身体の検証及び着用していた衣服の検証並びに同月一九日に行われた本件取調室の検証の際に右主張に一部沿う指示をしており(<証拠>により認定)、同日行われた勾留理由開示手続において右同様の意見陳述(<証拠>により認定)をしている。しかし、右の一審原告の供述ないし指示は、本件訴訟における証拠調においてなされたものではなく、対立当事者からの反対尋問も経ていないものであつて、一方的に述べ或いは指示したものとしてその証拠価値には疑問が残る。また、右供述ないし指示内容のうち、腰紐で吊り上げて落とす行為を何回も繰り返したという部分については、このような行為は物理的には不可能でないとしても異常なものであつて、このような行為にまで出ることを首肯しうる特段の事情があつたとは証拠上認めがたい。また、前記認定の一審原告の受傷の個所や程度、着用していた衣服の汚れや損傷は、必ずしも一審原告主張のような暴行がなされたことを推認しうるものではない。さらに、<証拠>によれば、前記の昭和五七年五月一九日に行われた本件取調室の検証及び鑑定において、右取調室の床面にルミノール反応が表われたことが認められるが、<証拠>によると、右反応のみで人血の存在を推認するのは困難であることが認められるし、もとより右床面に一審原告の血液が付着していたことを認めるに足りる証拠はないから、右血痕の点から前記暴行の存在を推認しうるものではない。また、一審原告の本件についての全般的な供述を記載した<証拠>には、昭和五七年五月一二日午前中の取調は午前九時過ぎから同一一時半頃まで約二時間半との記載があるが、右取調時間は前記認定のように同日午前一〇時過ぎから同一〇時半頃までの三〇分足らずであつて、一審原告は拘束されて取調を受けていたため正確な経過時間の記憶を期待するのは酷な状況にあつたことを考慮しても、右供述部分には誇張があるといわざるを得ない。以上に検討した点や<証拠>と対比すると、前記一審原告の供述記載ないし指示によつて、その主張するような具体的な暴行を認定することは困難といわなければならず、また、右主張に沿う<証拠>は、一審原告から聞いたことを述べたものであつて、一審原告の供述等に疑問がある以上、右主張事実を認定しうるものではないし、他にこれを認定するに足りる証拠はない。」

5  同一二枚目裏六行目の「によるものであり」を「を制止した際に生じたものであり、右制止行為は相当なものであつて」に、同一〇行目の「下着」から同一二行目の「ほか」までを「着衣には広い個所にわたつて前記のように血痕が付着したり、汚れたり、破損した個所があつたほか」に、それぞれ訂正する。

6  同一三枚目裏二行目の「打たれた」を「着けられた」に、同八行目の「いわば絶体絶命の」を「圧倒的に劣勢の」に、それぞれ訂正する。

7  同一四枚目表二行目の「取調べに」から同三行目の「全くなく」までを「取調べが厳しいものとなる可能性は否定できないし」に訂正し、同一二行目冒頭から同一五枚目表末行の末尾までを削除する。

8  同一五枚目裏三行目の「一七」の次に「、二一」を、同六行目の「供述」の次に「して右主張の事実を否定」を、同九行目の「及び」の前に「当審証人山元康市の証言」を、それぞれ加える。

9  同一六枚目裏八行目の「一七」の次に「、二一」を加え、同七行目の「しかし、」の次に以下のとおり加える。

「前記の下着の靴跡の点について検討してみると、昭和五七年五月一九日に行われた証拠保全としての検証に際し、本件取調当時乙川及び丙山が履いていたとして両名から提出された革靴の底は、前記下着の靴跡といずれも符合していない。そして、いずれも<証拠>によれば、右証拠保全の決定書は、大阪府庁に送達された後、右同日の午後一時五〇分頃、検証場所である大淀警察署に右手続が行われることの連絡があつたが、証拠保全として前記靴の検証をすることを右署長ないし乙川、丙山らが知つたのは、来署した担当裁判官からその具体的内容について説明を受けた同日午后二時五分頃であり、同日午后二時三〇分頃からは右両名から提出された前記の靴について検証が行われたことが認められるのであつて、右のような靴提出に至るまでの時間ないし経緯からみて、警察官である乙川及び丙山が取調当時履いていたのと異る靴を提出したものと推認するのは困難といわなければならない。他方、いずれも弁護士である前記森下及び山元は、同月一七日午前一〇時三〇分頃、大淀警察署に一審原告と面接するため赴いた際に丙山がその事務机の椅子に坐つて足を十字形に組み、その靴裏が見える状態となつていて、その裏の紋様が前記下着の靴跡の紋様と同じ「スポルディング」の英文字であつたことをその背後を通りかかつた際に確認した旨述べているのであるが、<証拠>によれば、右同日当時丙山が使用していた事務机の背後(東側)にはキャビネットないし書庫があつて、これらと右机との間隔は六四センチメートル程度しかなく、右机の右側(北側)には側板があることが認められ、前記の森下及び山元の供述のように椅子に十字の型で足を組んでいたとすると、足は椅子の台座の下にあつたこととなつて、その背後(北方向)の離れた所から立つたままの姿勢で右靴裏を確認するのは困難であり、見えたとしてもその紋様まで正確に確認できる状態であつたか疑問が残る。さらに、前掲山元証言では、靴裏の紋様部分は茶色であつた旨述べているが、<証拠>によれば、茶色の紋様が使用され始めたのは昭和六〇年六月以降であつて、それ以前の製品はすべて赤色のものであつたことが認められるから、右の色に関する証言部分にも疑問が残る。以上の点を考え合わせると、前掲の森下及び山元の供述ないしその記載から、前記の下着の靴跡が丙山の当時履いていた靴により生じたものと認定することは困難である。そして、」

10  同一七枚目表末行の「内容、」の次に「一審原告の治療経過」を加え、同裏二行目の「五万」を「一〇万」に、同九行目の「三万」を「五万」にそれぞれ訂正する。

二以上のとおりであつて、一審原告の一審被告に対する本訴請求は、慰藉料一〇万円と弁護士費用五万円の合計一五万円及び慰藉料一〇万円に対する乙川の不法行為が行われた日の翌日である昭和五七年五月一三日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので認容し、その余は失当として棄却すべきである。

よつて、一審原告の本件控訴は一部その理由があるから、原判決を主文第二、三項のとおり変更することとし、一審被告の本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法第九六条、第八九条、第九二条、仮執行の宣言につき同法第一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官藤野岩雄 裁判官仲江利政 裁判官大石貢二)

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