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大阪高等裁判所 昭和61年(ネ)2430号 判決 1987年4月28日

控訴人 目川重治

右訴訟代理人弁護士 金井塚修

被控訴人 京都市

右代表者市長 今川正彦

右訴訟代理人弁護士 崎間昌一郎

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  控訴人

1  原判決を取消す。

2  被控訴人は控訴人に対し、金五万一〇〇〇円及びこれに対する昭和六一年二月二七日から支払ずみまで年五パーセントの割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨。

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、次のとおり付加、補正するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決二枚目表三行目の「事業」の次に「(以下「本件事業」という)」を加え、同四行目の「測量会社」を「訴外株式会社矢野建設コンサルタント(以下「訴外会社」という)」と、同七行目の「二点」を「三点」とそれぞれ改め、同裏二行目末尾に「本件看板は、道路の上空のみを使用するものであるうえ、即時に除去することが可能であるから、道路を継続して使用するものとは言えないので、道路の構造、効用達成を妨げるものではなく、道路の占用にあたらない。」を、同六行目の「している」の次に「ものであり、右許可を要する者は、これから継続して道路を占用使用する者であることは規定上明らかであり、更に既に道路を占用使用している者に対して同法を遡及的に適用することは許されない」をそれぞれ加え、同行の次に以下のとおり加える。

「3 被控訴人の道路上の看板等不法占用物件の実態調査はその趣旨が明らかでなく、右調査に基づいて実施を企図している本件事業は、以下のとおり、名分を欠き、違法である。

(一)  訴外会社社員が控訴人に交付した道路占用物件調査票には、少なくとも「不法」という文言はない。また、右調査票は被控訴人が作成したもので、被控訴人職員が行うべき調査を、民間の訴外会社社員が被控訴人職員を装って、職権を笠にきて行うことは許しがたい。

(二)  訴外会社社員が控訴人に交付したパンフレットの記載によれば、歩道上の占用物件の実態は既に明らかであり、このように明白な実態をさらに調査することは明らかに予算の濫費である。

(三)  道路上の看板類及び電線の存在による自動車運転者の視覚の混乱が交通事故の原因となっていることは、マスコミの伝えるところであるが、被控訴人は、本件事業により、むしろ道路上の看板につき占用許可を受けることを勧める施策を採ろうとするものであり、前記パンフレットに記載された「きれいな道は街の顔」という言葉と矛盾しており、公共団体の施策として一貫性がない。

(四)  被控訴人の右実態調査や、本件事業の真の目的には疑惑がある。被控訴人は、真の意味での行政改革を実施しないまま、本件事業により、京都市道路占用料条例に藉口して市民の正当な活動を制限し、放漫財政による財政赤字や古都税徴収の不手際による収入減を取り戻し、歳入の増加を図ろうとするものである。右のような意図に基づく被控訴人市長、同建設局道路管理課職員及びその委託を受けた訴外会社の事務執行は、地方自治法二条の趣旨に違反している。

(五)  控訴人は被控訴人が本件事業を大々的に企画立案準備し、実施のため多額の公金を不正使用しているので、昭和六一年二月二五日、監査委員に対し住民監査請求を行い、同年四月二二日、同監査結果について通知を受けた。右監査結果によれば、本件事業が道路法に違反しており、被控訴人市長に対し公金支出の差し止め及び既に支出した公金の損害賠償を求める旨の控訴人の請求は棄却されたが、監査委員は、同日付けで被控訴人市長に対して、被控訴人の道路占用許可手続に関する指導の不足のため、控訴人が、上空看板の設置につき一般に承認された慣行として許可を要しないと考えたことも、右監査請求の一因であると考えられるので、本件事業の実施にあたり、市民にその趣旨を十分に説明し、理解が得られるように万全の準備を整え、的確に対処されるべき旨の要望を行ったことを明らかにした。」

二  原判決三枚目表一〇行目から同裏五行目までを以下のとおり改める。

「1 被控訴人は、道路空間の解放と町並みの美化を図るため、本件事業を実施するものであり、「上空看板」等については、京都市道路占用許可基準に適合しないものは除去し、適合するものは道路法等に定める道路占用料を徴収することにより、道路占用許可手続の適正化を図るものである。このように、本件事業は、道路法に定められた道路管理の適正実施を図ったもので、なんら名分を欠くようなものではない。

2 控訴人の前記道路法の解釈は誤りである。一般に道路管理権はその路面を中心として、社会通念上道路の管理のため必要かつ十分と認められる範囲もしくは道路の構造の保全、安全かつ円滑な交通の確保、その他道路管理上必要な範囲で、その上下に及ぶものである。道路法三二条一項において「電線」が、同四号において「雪よけ」が規制対象として規定されているのはその趣旨による。本件看板は、同七号、同法施行令七条一号の「看板」に該当する。従って、本件事業はなんら道路法に違反するものではなく、むしろ同法に違反する現状を是正しようとするものである。」

第三証拠関係《省略》

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり付加、補正するほかは原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決四枚目表四行目末尾に「し、「明治 探偵調査(事)」と表示」を、同六行目の「突出」の次に「し、「目川探偵」と表示」をそれぞれ加え、同八行目の「突出したもの」を「突出し、目川探偵機動」と表示したものであって、いずれも控訴人の探偵興信業を広告宣伝するために設置されたものであること、本件看板が突出している道路は、歩道が両端に設置され、大型自動車の走行が可能な二車線の市道」と改め、同九行目の次に「二 請求原因二の事業のうち、被控訴人の本件事業実施の事実及び昭和六一年二月一八日に被控訴人の依頼した訴外会社の社員が控訴人方を訪問した事実は当事者間に争いがないが、同項後段の、被控訴人が右社員及び被控訴人建設局道路管理課課員をして、控訴人に対し、京都市道路占用規則による道路占用許可申請書の提出を求めさせた事実についてはこれを認めるに足る証拠がない。」を加え、同一〇行目から同裏八行目までを「三 請求原因三について 1 同1について、道路法第三二条一項は、同項七号に概括されているように、「道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある工作物、物件又は施設」につき道路の占用の許可にかからしめる目的を有すると解せられ、かかるものであれば、道路の路面に限らず、道路の管理若しくは道路交通の安全上必要かつ十分な範囲での上空に存する物件の設置についても道路占用許可を要するものであることは、同項に、道路上の空間を占有する電線(同項一号)、道路に面する建物に設置されて道路上の空間に突出する歩廊、雪よけ(同項四号)が右許可の対象物件として規定されていることから明らかである。さらに、同項七号の政令への委任を受けて制定された道路法施行令第七条一号には看板が掲記されていることが認められる。従って、道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある看板は道路法第三二条一項七号に該当すると言うべきである。

そこで、本件看板が同号に該当するかを案ずるに、前記一認定のとおり、本件看板は、道路に面する建物に設置されて道路上の空間に突出するものであり、右状態にある本件看板は、前記電線同様、道路の管理上必要な範囲での上空に存する工作物であると認められるばかりでなく、さらに、看板はまた道路交通法第七七条一項二号により同法所定の道路の使用の許可をも要する物件であると解されるところ、同法施行令第二二条三号によれば、自動車の積載物の高さは、自動車の車体の高さを含めて三・八メートルが限度とされていることに徴し、前記位置における看板の設置はいずれも道路交通に支障を及ぼす虞が十分に存在することが認められ、本件看板は、控訴人の主張するように、路上交通に必要な空間とは無関係な上空のみの使用とは言えず、また、《証拠省略》によれば、本件看板が道路を継続して占用使用するものであることはあきらかであるから、道路法施行令第七条一号所定の看板として、道路法第三二条一項七号所定の工作物に該当し、道路占用許可を得なければならないと言うべきである。そうすると、請求原因三1の事実を認めることはできず、同主張は理由がない。」と、同九行目冒頭から同末行末尾までを「2 同2について 被控訴人において従前から道路上空の看板につき、道路占用許可を必要としないこととする慣行が存在した事実を認めるに足る証拠は存しない。また、控訴人は、既に道路を占用使用している者に対して、同条を遡及的に適用することは許されないと主張するが、同条につき、右許可を受けるべきであるにもかかわらず、これを受けないで道路を占用使用する者は右許可が不要となると解することは、同条の趣旨を没却するものであり、右主張は到底採用できない。則ち、被控訴人は、道路法第一六条一項により、本件市道の管理者であると認められ、同法第三二条一項の許可権者である反面、同項」とそれぞれ改める。

2  原判決五枚目表三行目の「国法」を「同法」と改め、同六行目末尾に「従って、本主張は採用できない。3 同3について 同(一)ないし(四)主張の各事実の存在を認めるに足る証拠は存在せず、同(五)の事実は《証拠省略》によって認められるものの、右事実の存在のみから直ちに本件事業が違法と判断すべきものではない。従って、本主張は理由がない」を加える。

二  そうすると、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 安達昌彦 裁判官 杉本昭一 三谷博司)

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