大阪高等裁判所 昭和61年(行コ)19号 判決 1987年4月28日
控訴人(原告) 倉橋正一 外四名
被控訴人(被告) 京都市長
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
控訴人らは、「原判決を取り消す。本件を京都地方裁判所に差し戻す。」との判決を求め、被控訴人は、主文と同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張は、次のとおり付加・訂正・削除するほか、原判決事実中、控訴人ら関係部分摘示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決四枚目裏九行目の「前記」から同末行末尾までを「被控訴人は、昭和五九年五月七日に市道岩倉一号線の一部(起点は京都市左京区岩倉東五田町二四番地地先、終点は同区松ケ崎北裏町二九番地地先、延長は四四二・〇〇メートル、幅員は三・三〇メートルないし四・五五メートル、以下「本件市道」という。)につき、京都市告示第三〇号をもつて市道路線廃止処分、京都市告示第三一号をもつて市道供用廃止処分をした。」に、同五枚目表六行目の「リクレーシヨンの場」を「リクリエーシヨンの場、」に各改める。
2 原判決六枚目表一〇行目末尾に「換言すると、本件市道は、単なる歩行者用通行路としての生活用道路としてだけではなく、遊歩道としても利用するために設けられたものであり、そのため、宝ケ池公園の中心部に通じる連絡路としても、公園の散策路としても、広く一般市民に「歩行の場、憩いの場、コミユニケーシヨンの場、子供の遊び場」として利用されてきたのである。すなわち、本件市道は右のように利用されるために設けられたのであり、京都市もそのような利用を広く市民に推奨してきたわけであり、右のような利用こそ本件市道の本来的な利用方法ともいうべきものである。したがつて、控訴人らは本件市道に面して居住している者ではないが、本件市道の周辺に居住し、右のような方法で日常的に本件市道を利用してきたのであるから、控訴人らの本件市道利用の利益は、決して一般的・抽象的なものではなく、極めて具体的・個人的な利益であり、決して「国民一般」と同視されるものではない。それは、「住居又は所有地がその道路に近接していることにより、当該道路の利用が生活上不可欠である者」と同視し得る程度に密接な利害関係を有するものである。」を、同六枚目裏二行目末尾に「なお、本件市道近くに在る国際会議場専用通路は、私道であるため、いつでも一般の通行が禁止されるおそれがあるのであり、また、本件市道周辺において一般の交通の用に供せられている道路は、いずれも本件市道とはかなり離れているだけでなく、宝ケ池公園に通ずる道路はアスフアルトによつて舗装されている車道であり、いずれも本件市道に代替し得るものではない。」を各加え、同六枚目裏五行目の「他」を「ほか、」に改め、同七枚目裏八行目の「同原告の言葉をかりれば、」を削る。
証拠関係<省略>
理由
一 当裁判所も、控訴人らは本件市道の路線廃止処分及び供用廃止処分の取消しないし無効確認を求める法律上の利益を有せず、本件訴えは却下すべきであると判断するが、その理由は、次のとおり付加・訂正するほか、原判決理由中、控訴人ら関係部分説示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決一二枚目裏九行目の「植えられていたため」の次に「(本件市道が宝ケ池公園内に存していて、無舗装であり、両側に椿の木が植えられていたことは、当事者間に争いがない。)」を、同一三枚目表六行目の「記載のとおりであり」の次に「(控訴人らの住所が別紙第一地図記載の所に位置することは、当事者間に争いがない。)」を各加える。
2 原判決一四枚目表五行目と同六行目との間に「なお、いずれも成立に争いのない甲第一九号証の一ないし三、第二〇号証の一、二、乙第一、第二号証と弁論の全趣旨とによれば、前記国際会議場専用通路(以下、「専用通路」という。)は、国立京都国際会館の利用の便宜のため、その出入りの円滑を図つて設けられたものであるが、国(大蔵省)と京都市との所有に係るものであり、財団法人国立京都国際会館において管理しているものであること、専用通路は、国立京都国際会館管理規則により、通常の場合は一般の通行の用に供することにされているのであり、必要があるときは、管理者において日時を定めて一般の通行を禁止することができるが、その禁止をするためには、あらかじめ所轄警察署と協議をなすこととし、その禁止を決定したときは、速かにその旨を専用通路の出入口に掲示して、一般通行者に予告することにしていること、及び専用通路は、昭和五四年二月一一日から同六一年一一月二日までの間においては、別紙一覧表記載の理由により、その記載の期間、一般車両の進入が禁止されたことはあつたが、歩行者の通行が禁止されたことはなかつたこと(もつとも、右期間前の昭和四一年七月中に三日間、同四四年一月中に四日間それぞれ公安上の必要性から歩行者を含めて全面的に通行が禁止されたことはある。)が認められる。そうすると、専用通路は、従来から道路法による道路とほぼ同一の態様をもつて一般交通の用に供されてきているのであり、その所有者及び管理者の公共性からして、その供用態様はたやすく変更されることなく将来に継続されるものと思料されるから、それは一般の交通の用に供されている道路であると優にいい得るものである。」を加える。
3 原判決一四枚目裏九行目の「必要」を「必要の有無」に、その末行から同一五枚目表一行目の「国民一般の利益であつて、これが」を「国民一般の利益であり、いわゆる「反射的利益」ともいうべきものであるが、通常の場合は、これが「権利」にまで高められるものではないから、」に、同一五枚目裏六行目の「他の道路」を「専用通路その他の道路」に各改め、その一〇行目末尾に「換言すれば、市道路線廃止処分は、市長において、当該道路につき、「一般交通の用に供する必要がなくなつたと認める場合」になし得るものであることは道路法一〇条一項によつて明らかであり、その場合における「一般交通」とは、一般住民の徒歩又は交通機関による当該道路の通過自体を目的とする通行をいうのであつて、右趣旨の通行以外の単なる健康の維持・増進を図るための散歩、ジヨギング、サイクリング及び日光浴などをする場所、憩いの場所、他人とのコミユニケーシヨンを良好にする場所、子供の遊び場所などとして当該道路を利用する必要性の有無などは、市道路線廃止処分をなすか否かの際において、市長においてとくに強く考慮すべき事項ではないというべきであるから、右の各使用形態により道路を利用しているにすぎない者らは、当該道路の路線廃止処分につき取消しないし無効確認を求める訴えを提起し得る適格を有しないものといわなければならない。」を加え、同一六枚目裏一行目の「昭和五七年」を「昭和五三年」に、その九行目の「一〇九五号」を「一〇九五頁」に各改める。
二 よつて、右と同旨の見解の下に控訴人らの本件訴えを却下した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、民訴法三八四条一項により、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民訴法九五条本文、八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 日野原昌 坂上弘 大谷種臣)