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大阪高等裁判所 昭和61年(行コ)50号 判決 1988年9月30日

大阪府堺市深井水池町三三五八番地

控訴人

小林武次

右訴訟代理人弁護士

中西裕人

岡崎守延

同市瓦町二-二〇

被控訴人

堺税務署長

門脇利穂

右指定代理人

森本翅充

石田一郎

中村嘉造

中西基勝

右当事者間の所得税更正処分取消請求控訴事件について、当裁判所は、昭和六二年一二月一五日終結した口頭弁論に基づき、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人に対し、昭和五七年一月一三日付で控訴人の昭和五五年分の所得税についてした更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(但し、国税不服審判所長の裁決によつて一部取り消された部分は除く。)のうち所得金額一四一万八七五九円を超える部分はこれを取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張は、次のとおり付加・訂正するほかは原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

(訂正)

原判決添付別表二の五行目の「一七、九五七、七二」を「一七、九五七、六七二」と、同別表の上から六行目の「17,032,46」を「17,032,464」と、それぞれ改める。

(当審における控訴人の主張)

一  控訴人の所属する堺東民主商工会が加盟する大阪商工団体連合会は、昭和六二年六月一〇日、加盟する単位民主商工会合に対し、次の基準で控訴人の同業者の昭和五五年分の売上金額、売上原価、外注費を照会した。

1  タイル工事業を営んでいる個人で他の事業を兼業していないこと

2  売上原価が九〇〇万円以上二五〇〇万円以下であること

3  事業専従者控除を除き、給与賃金の支払いをしていないこと

4  年間を通じて事業を継続していること

二  右照会に対し、別紙のとおり堺市在勤の同業者二名、和泉市在勤の同業者一名、大阪市在勤の同業者三名に関する回答を得た。これらの調査によると、売上原価率は四一・三〇パーセントであり、控訴人の確定申告に基づくそれ(四一・二四パーセント)とほぼ同一である。又、右調査による外注費率は三五・九一パーセントである。

右調査は、大阪商工団体連合会の各単位民商に対する照会に基づき機械的に行われたものであつて、恣意の介在する余地はなく、少なくとも被控訴人のなした同業者調査に比してその客観性・信用性において劣るところはない。

(右主張に対する被控訴人の反論)

被控訴人は、同業者の抽出対象を青色申告により所得税の確定申告をしている者に限定しているのであるが、被控訴人がこのように限定した理由は、青色申告者については、帳簿書類を備付け、これに事業所得金額が正確に計算できるように、事業所得を生ずべき事業に係る資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を、正規の簿記の原則に従い、その都度整然と、かつ、明瞭に記録し、その記録に基づき、総収入金額、必要経費、所得金額等を計算することを所得税法上義務づけられているため、青色申告者の場合は原価率等の数値が信頼しうるものであつて、同業者としての比較検討が正確になしうるからである。

これに対し、控訴人主張の如く青色申告者に限定しないで同業者を抽出した場合には、申告内容の正確性、信憑性について、青色申告者のような裏付けのない白色申告者も含まれてしまい、同業者としての各検討が正確になし得ないこととなるから、これを基準にして同業者比率を云々することは合理性を欠き、失当である。

証拠関係は、原審及び当審訴訟記録中の各書証目録、証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないものとしてこれを棄却すべきものと考えるが、その理由は次のとおり付加・訂正するほかは原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決二四枚目裏三行目の「四」の次に「、当審における控訴人本人尋問の結果とこれにより真正に成立したものと認められる甲第一〇号証の二」を、同二五枚目裏六行目の「たこと」の次に「、控訴人が同年三月一三日に提出した昭和五五年分の確定申告書には、前記各手形を貸倒金として記載していないこと」をそれぞれ加える。

二  当審における控訴人の主張について

控訴人は、大阪商工団体連合会がその主張にかかる基準により選定した七名の同業者に対する調査の結果によると、売上原価率の平均は四一・三〇パーセントで、外注費率の平均は三五・九一パーセントであつたと主張し、弁論の全趣旨により成立を認める甲第二五ないし第二八号証によるとこれに沿う事実を認めることができるが、被控訴人の反論するように、被控訴人選定の同業者が青色申告者でその申告も確定しているのに対し、控訴人選定の同業者は申告の確定した青色申告者という条件を具備するものに限定されていないのであるから、被控訴人の推計した売上原価率、外注費率のほうが控訴人のそれよりも正確であることは明らかである。従つて、控訴人の右主張事実も被控訴人の推計による所得金額の算定が合理性を欠くことの反証とはなりえないものというほかはない。

右によると、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中川臣朗 裁判官 杉山正士 裁判官富澤達は転補のため署名捺印できない。裁判長裁判官 中川臣朗)

別紙

<省略>

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