奈良地方裁判所 平成3年(わ)328号 判決 1992年9月22日
本店所在地
奈良県御所市大字室五〇〇番地の一
平和工業株式会社
(右代表者代表取締役 裴贊斗)
国籍
韓国(慶尚南道海郡昌善面玉川里四〇八)
住居
奈良市学園大和町一丁目一三七五番地の三
会社役員
裴贊斗
一九一九年一〇月二八日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官栗坂滿、弁護人豊島時夫出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告会社平和工業株式会社を罰金一億円に、被告人に、被告人裴贊斗を懲役一年に各処する。
被告人裴贊斗に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社平和工業株式会社は、平成元年六月三〇日まで大阪市生野区巽中四丁目一六番一一号に本店を置き、合成樹脂成形加工業を目的とする資本金四、八〇〇万円の株式会社であり、被告人裴贊斗は、右会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人裴贊斗は被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、
第一 昭和六一年七月一日から同六二年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が、三億三、八九〇万六、八三三円でこれに対する法人税額が一億三、八七一万一〇〇円であるにもかかわらず、売上の一部を除外し、架空の仕入れを計上するなどの方法により所得を秘匿した上、同六二年八月二五日、大阪市生野区勝山北五丁目二二番一四号所在の所轄生野税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二、二七七万三、七四九円で、これに対する法人税額が五九三万四、三〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一億三、八七一万一〇〇円との差額一億三、二七七万五、八〇〇円を免れ
第二 昭和六二年七月一日から同六三年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が、三、四八二万六、四九二円でこれに対する法人税額が一、一四六万四、五〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その所得金額の全額を秘匿した上、同六三年八月二六日、前記生野税務署において、同税務署長に対し、所得金額は欠損の一億四、八五二万五、六六一円で、これに対する法人税額はない旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一、一四六万四、五〇〇円を免れ
第三 昭和六三年七月一日から平成元年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が、七億三、七六四万三、六五三円でこれに対する法人税額が三億二九七万五、九〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その所得金額のうち四億八、五六九万四、六三〇円を秘匿した上、平成元年八月三〇日、前記生野税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二億五、一九四万九、〇二三円で、これに対する法人税額は九、六一六万五、一〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額三億二九七万五、九〇〇円との差額二億六八一万八〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示各事業を通じ
一 被告人裴贊斗の当公判廷における供述
一 被告人裴贊斗の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 東茂一こと権寧錘、陽川春夫こと禹起馥、人見隆夫、韓菊の検察官に対する各供述調書及び大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 植西明人の検察官に対する供出調書
一 野村和子こと朴和子、坂田孝一、福井満、井村昇、神田安彦、裴勝杓、裴幸枝、天羽清一、木下孝男、金村裕人の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官泉康之、同柿本員伸、同後藤明男作成の各査察官調査書
判示第一の事実につき
一 大蔵事務官柿本員伸作成の平成三年二月二五日付脱税額計算書(検1)
一 同中村匡克作成の同年二月二七日付証明書(検4)
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官柿本員伸作成の同年二月二五日付脱税額計算書(検2)
一 同中村匡克作成の同年二月二七日付証明書(検5)
判示第三の事実につき
一 大蔵事務官柿本員伸作成の同年二月二五日付脱税額計算書(検3)
一 同中村匡克作成の同年二月二七日付証明書(検6)
判示各事実中、被告会社について
一 登記官堺奉載認証の商業登記簿謄本
(法令の適用)
法律に照らすと、判示各所為は、各事業年度ごとに法人税法第一五九条第一項(被告会社については、さらに同法第一六四条第一項)に該当するところ、被告会社については情状に鑑み同法第一五九条第二項を適用し、被告人については所定刑中懲役刑を選択することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法第四八条第二項により合算した金額の範囲内において罰金一億円に、被告人については同法第四七条本文、第一〇条により犯情重いと認める判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において懲役一年にそれぞれ処し、被告人に対し同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 菅納一郎)