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奈良地方裁判所 平成4年(行ウ)2号 判決

原告

田中哲哉

橋本祥一

橋本裕子

早川洋

疋田清勝

疋田俊勝

壬生廣

右七名訴訟代理人弁護士

吉田恒俊

坪田康男

被告

上牧町長 武安正男

同(上牧町長)

武安正男

右両名訴訟代理人弁護士

大橋武弘

被告

秀英興産株式会社(Y)

右代表者代表取締役

小澤正雄

右訴訟代理人弁護士

植村公彦

本井文夫

事実及び理由

第三 争点に対する判断

二 本案の争点について

本件寄附が「郁慈会の建設する特別養護老人ホームに対する助成以外の目的に使用したときは右金額を寄付者に返還する」という負担付きであったか否かについて判断する。

1  前記当事者間に争いのない事実等、被告武安及び被告会社代表者小澤正雄(以下「被告会社代表者」という)の各供述並びに括孤内に掲記した証拠によれば、次の事実が認められる。

(一)  被告会社は、昭和六一年三月二八日、奈良市大宮町一丁目所在の奈良国際ホテルの土地建物を約四億円ないし五億円で買収し、昭和六二年一〇月二一日、右物件を約一一億円で売却した。(〔証拠略〕)。

右国際ホテルは、被告会社が買収する前からその管理は元町長で元参議院議員でもあった服部安司(以下「服部」という)が実質的経営者で、その次男が代表者となっているユニオン産業が行っており、ユニオン産業は、右売却に当たって国際ホテルに入っていたテナント店の立退き交渉を全て行った。(〔証拠略〕)。

(二)  被告会社代表者は、被告町長に対し、昭和六三年七月二五日ころ、服部の指示で売却代金の利益のうち四億円を町を通じて服部が理事を勤める郁慈会の特別養護老人ホームの建設資金のために寄附したい旨を申し出た(〔証拠略〕)。被告会社代表者は、同年八月二二日付けで老人福祉施設に対する寄附金と明示して四億円の寄附採納願(〔証拠略〕)を町に提出し、同月二四日、本件寄附をした。町長は同日付けで寄附採納許可書(〔証拠略〕)及び受納書(〔証拠略〕)を、収入役は同月二六日付けで領収書(〔証拠略〕)を発行した。右〔証拠略〕には、いずれも「但し、老人福祉施設に対する寄附金」との記載がある。本件寄附は、当初、服部から被告町長に対して話があり、寄附を受け入れた後、被告町長と服部との間で四億円のうち三億六〇〇〇万円については郁慈会に特別養護老人ホームの建設助成のための補助金として支出するが、四〇〇〇万円については、町の福祉作業施設等の建設のために使用する旨の合意ができていた。(〔証拠略〕)。

なお、町が郁慈会から寄附が返還された場合については、被告会社代表者、服部、被告町長の間で何ら話し合われていない(〔証拠略〕)。

(三)  法人税法上は、寄付金は当該事業年度の損金に算入しない(同法三七条一項)のが原則であるが、地方公共団体にした寄付金については損金に算入できる(同条三項一号)。したがって、以上の処理により、被告会社は、国際ホテルの売却によって得た利益とほとんど同額である四億円を損金として計上できることとなった。

(四)  当事者間に争いのない事実等二2のとおり、町議会は、本件寄附につき法九六条一項九号の要求する負担付き寄附である旨の議決をしていないが、町総務部長より、本件寄附金四億円のうち三億六〇〇〇万円については、被告会社の意向により老人福祉施設建設費補助とし、老人福祉費の負担金及び交付金の項目に歳出として計上し、残金四〇〇〇万円については町の社会福祉事業に使用したい旨の説明がなされていた(〔証拠略〕)。

(五)  当事者間に争いのない事実等二3のとおり、郁慈会は、平成元年一〇月九日に三億六〇〇〇万円の補助金を町収入役に返還してきた。そして、被告会社は、町に対し、同年一二月二二日付けでは金四億円(〔証拠略〕)を、平成二年一二月二〇日付けでは三億六〇〇〇万円(〔証拠略〕)を、各返還するように要求してきた。町は、寄附を受けた四億円のうち四〇〇〇万円については社会福祉施設の建設に費消して返還できず、被告会社との間で、三億六〇〇〇万円を返還することを合意した(〔証拠略〕)。そこで、当事者間に争いのない事実等二4のとおり、町長は、平成二年一二月七日、同年度第四回定例町議会に対し、被告会社からの寄附金のうち三億六〇〇〇万円につき、郁慈会の建設する特別養護老人ホームに対する助成以外の目的に使用したときは右金額を寄附者に返還する旨の寄付目的及び条件が付された旨の議案と同年度の予算の支出の諸費の項目に三億六〇〇〇万円の償還金を追加する旨の同年度第三回補正予算案を提出した。右各議案は同月二一日に町議会で可決され、被告町長は、同月二六日、本件公金支出をした。

2  以上の事実によれば、本件寄附が町になされた際、被告会社代表者と被告町長との間で四億円のうち三億六〇〇〇万円については郁慈会に対する補助金として使用するようにその用途・目的を定める合意をしていたことが認められる。そして、右合意内容の解釈として、右三億六〇〇〇万円が郁慈会に対する補助金として使用されない場合には被告会社に右金員を返還する旨の合意があったと解するのが相当である。

原告らは、本件寄附が法九六条一項九号の要求する議決がないことを理由に右の負担が付いていなかったと主張しているが、それは、被告町長が手続を誤ったものであり、そのことで本件寄附が負担付きでなくなることにはならない。

3  本件寄附は、右のとおり負担付きであるところ、当初は法九六条一項九号の議決がないため無効であったが、平成二年一二月二一日に前記の議決がされたことにより、その瑕疵が治癒され、遡及的に有効となったと解される。

4  したがって、本件寄附金のうちの三億六〇〇〇万円は、郁慈会に補助金として使用されないときは被告会社に返還すべきものであり、平成二年一二月二一日、三億六〇〇〇万円を償還金として追加する旨の平成二年度第三回補正予算案が議決されているから、本件公金支出は適法である。

第四 結論

以上のとおり、原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 前川鉄郎 裁判官 井上哲男 近田正晴)

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