奈良地方裁判所 平成6年(行ウ)9号 判決
原告
株式会社和光
右代表者代表取締役
友松和浩
右訴訟代理人弁護士
矢田部三郎
被告
御所市長 芳本甚二
右訴訟代理人弁護士
横山昭
同
藤本卓司
事実及び理由
第三 争点に対する判断
一 争点一について
1 証拠(各項の末尾に摘示したもの)によれば、次のような事実を認めることができる。
(一) 御所市においては、平成三年三月までに、地方自治法に基づく第三次総合計画を策定して議会の議決を得、これを受けて廃棄物処理法六条一項に基づく一般廃棄物処理基本計画を策定した。右計画の中では、生活排水の収集・運搬計画に関する基本方針として、<1>現在汲み取りし尿及び浄化槽汚泥は、民間許可業者により収集・運搬を行っているが、これが有効に稼働していることから、今後もこの方針を維持するものとする、<2>住民から排出されるし尿及び浄化槽汚泥を環境衛生に配慮しながら速やかに収集・運搬し、住民サービスの維持向上に努める、<3>関係機関との連携のもとに浄化槽の設置、適正な使用方法、維持管理及び定期清掃の徹底などの指導強化を図るなどと定められており、また、その収集・運搬の方法及び量として、現在使用しているバキューム車による収集・運搬方法は、衛生的かつ機能的であり、この方法に優るものが今のところ考えられておらず、将来もこの方法によるものとする、と定められている。(〔証拠略〕)
(二) 御所市においては、右(一)に認定した一般廃棄物処理基本計画に基づき、本件各申請前の時点ですでに、し尿処理に関し御所市処理計画を定めていたところ、これによれば、し尿等の収集・運搬については、環境処理センターの一業者で、通常毎月一回行うものとし、し尿浄化槽の清掃及び汚泥の収集・運搬については、右業者で、概ね毎年一回又は適宜行い、収集・運搬されたし尿及び浄化槽汚泥は、右業者の所在地に設置所有する貯留槽に一時保管するものとする旨定められている。そして、右貯留槽に一時保管されたし尿及び浄化槽汚泥の処分については、御所市を含む三市六町が加入する組合により行うものとする旨定められている。(〔証拠略〕)
(三) 環境処理センターが設立されるまでは、高田清掃協同組合、松川清掃、岡本清掃及び丸山清掃の四社が、御所市から区域割りを受けずに一般廃棄物処理業の許可を受け、し尿等の収集・運搬を行っていたが、過当競争のため客の取り合いを生じたり、大雨が降ったときにし尿等を河川に投棄するなどの問題を生じていた。そこで、右問題を解消するため、昭和四八年ないし四九年に右四社が合併して環境処理センターが設立されたが、これ以後は、御所市の指導により収集回数の遵守やし尿の収集料金、浄化槽の清掃料金の適正化が図られて、住民からの苦情が寄せられることも余りなくなった。また、右のようにして収集・運搬されたし尿等の処理については、組合設立後、昭和四三年度から大和高田市所在の「緑樹園」で行われてきたが、右施設は地域住民との協定で昭和五六年八月三一日をもって閉鎖することとされたため、その後は、環境処理センターの設置した貯留槽を組合が賃借し、収集・運搬されたし尿等をここで一時保管した上、組合の委託した業者がこれを収集・運搬して海洋投棄船に積み込み、海洋投棄の方法で処理している。(〔証拠略〕)
(四) 御所市の人口は、昭和三三年の時点で三万六九七八人であり、その後昭和四八年から昭和六〇年までは三万七〇〇〇人台ないし三万八〇〇〇人台で推移していたが、昭和六一年以降は再び減少して三万六〇〇〇人台にとどまっている。このため、浄化槽の設置件数が多少増えたとしても、浄化槽の清掃需要がやや増加するだけで、し尿の収集・運搬需要が飛躍的に増大する見込みはない。
なお、右(一)に認定した一般廃棄物処理基本計画においても、汲み取りし尿及び浄化槽汚泥の年度別収集・運搬量の見通しについては、別紙一記載のとおり推定されており、平成六年九月に行われた一部見直しの結果によっても別紙二記載のとおり推定されている。(〔証拠略〕)
2 ところで、廃棄物処理法七条三項の本文及び各号の文言からすれば、市町村長が同法七条一項に基づく申請を許可するか否かを決定するにあたっては、同条三項各号に定める要件の有無を、当該市町村の処理能力、処理計画等に照らして技術的かつ政策的に認定判断するものであり、その認定判断については相当広範な裁量権が与えられているものと解される。したがって、市町村長がした一般廃棄物処理業の不許可処分は、右各号の要件該当性の認定判断において社会通念上著しく妥当性を欠き、その与えられた裁量権を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、違法となるものではない。
これを本件についてみるに、右に認定したところによれば、御所市においては、過去に四社の過当競争によりし尿、汚泥の不法投棄の問題等を生じたことがあり、環境処理センターの設立によって右問題は解消され、その後は特段の問題を生じることなく推移しているが、近い将来における人口の増加は見込まれず、し尿の収集・運搬需要が飛躍的に増大するとは考えられない状況にあることから、このような状況を踏まえ、前示のような内容で廃棄物処理法六条一項に基づく一般廃棄物処理基本計画を適法に策定し、これを受けてさらに前示のような内容の御所市処理計画を定めていることが認められる。そして、このような事実関係に照らせば、本件申請一及び三が一般廃棄物処理基本計画ないしは御所市処理計画に適合していないとした被告の認定判断に右裁量権の逸脱又は濫用があるとはいえないから、本件処分一及び三は適法というべきである。
二 争点二について
争点一について判断したところによれば、原告は、一般廃棄物処理業の許可を受けることができない者であるから、し尿浄化槽の清掃をしたとしても、引き出した汚泥を自ら運搬・処理することはできない。したがって、原告は、引き出した汚泥の運搬・処理を右の許可を有する業者に委託するなど、適正にその処分をする体制を整備することが必要である。
この点につき、原告は、本件申請二をするにあたり、本件申請一に対する許可が与えられない場合は、<1>廃棄物処理法六条の二第一項に基づき本来の処理責務者である御所市に処理を依頼するか、その許可を得た業者に対し業務提携により処理を依頼する、<2>浄化槽設置者から直接御所市又はその許可を得た業者に処理を依頼してもらう等の措置を講じることにより、引出し後の汚泥等を適正に処理する旨被告に通告していると主張する。
しかしながら、右一に認定した事実関係に照らせば、御所市の一般廃棄物処理許可業者である環境処理センターとの間で原告の主張するような業務提携が容易に行われうるとは考え難く、他に原告が汚泥の運搬・処理につき確実な方策を有していると認めるに足る的確な証拠もないから、一般廃棄物処理業の許可を有していない原告は、引出し後の汚泥を放置したり、これを不法投棄するなど、その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者に該当するというべきである。
そうすると、本件処分二もまた適法というべきである。
三 結語
以上の次第で、原告の本訴各請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 前川鉄郎 裁判官 井上哲男 石原稚也)