奈良地方裁判所 昭和52年(わ)36号 判決 1978年1月23日
本籍
天理市櫟本町八三三番地の一
住居
同 町二、四三四番地
経木製造業
堀川コト
明治四〇年二月一五日生
本籍
天理市櫟本町八三三番地の一
住居
同 町三、一二八番地の四
経木製造業
堀川新是
昭和九年八月一一日生
所得税法違反罪
検察官
田井正己 出席
主文
被告人堀川コトを罰金一、〇〇〇万円に、
被告人堀川新是を懲役一年に
各処する。
被告人堀川新是に対し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
被告人堀川コトにおいて、右罰金を完納できないときは金一五、〇〇〇円を一日に換算した期間、右被告人を労役場に留置する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人堀川コトは、奈良県天理市櫟本町三、一二八番地において、堀川経木の商号で折箱用経木の製造販売等を営んでいるもの、被告人堀川新是は、右コトの次男で同商店の事業全般を統轄しているものであるが、被告人堀川新是は、右堀川コトの事業に関し、所得税を免れようと企て、
第一、昭和四八年分の総所得金額は、四、〇九四万三一八円、これに対する所得税額は、二、一〇八万四、二〇〇円であるのに、公表経理上、売上げの一部を除外し、よって得た資金を架空名義定期預金として留保するなどの不正手段により、その所得のうち、三、六二二万四、五六五円を秘匿したうえ、昭和四九年三月一五日所轄奈良税務署において、同署長に対し、所得金額が四七一万五、七五三円、これに対する所得税額が、八九万四、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって、右年分の正規の所得税額二、一〇八万四、二〇〇円との差額二、〇一八万九、九〇〇円をほ脱し
第二、昭和四九年分の総所得金額は、七、〇五一万七、〇七八円、これに対する所得税額は、三、九三二万四、四〇〇円であるのに、前同様の不正手段により、その所得のうち、六、五四〇万三、九七〇円を秘匿したうえ、昭和五〇年三月一三日所轄奈良税務署において、同署長に対し、所得金額が、五一一万三、一〇八円、これに対する所得税額が、八六万二、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって右年分の正規の所得税額三、九三二万四、四〇〇円との差額三、八四六万二、〇〇〇円をほ脱し
第三、昭和五〇年分の総所得金額は、三、一〇四万九、四八〇円これに対する所得税額は、一、三一二万五、四〇〇円であるのに前同様の不正手段により、その所得のうち、二、五九七万三、四七〇円を秘匿したうえ、昭和五一年三月一五日所轄奈良税務署において、同署長に対し、所得金額が、五〇七万六、〇一〇円、これに対する所得税額が、七九万七、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって、右年分の正規の所得税額一、三一二万五、四〇〇円との差額一、二三二万八、四〇〇円をほ脱した
ものである。
(証拠の標目)カッコ内の数字は検察官の請求番号・検号証である。
一、被告人両名の当公判廷における供述
一、被告人両名の検察官に対する供述調書(115127)
一、被告人両名の大蔵事務官に対する質問てん末書(114116ないし124)
一、堀川京子(112)堀川新麿(113)の検察官に対する供述調書
一、堀川京子(98ないし107)堀川新寛(108109)堀川新麿(6667110111)の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、大蔵事務官作成の所得税確定申告書謄本(1・2・3)、脱税額計算書(4・5・6)及び脱税額計算書説明資料付表(7)
一、国税査察官作成の調査報告書(8ないし28)
一、大阪屋証券株式会社奈良支店次長ら各作成の確認書(29ないし40)
一、中川佳己の大蔵事務官に対する質問てん末書(41)
一、堀川京子ら各作成の確認書(4245ないし53)
一、大阪屋証券株式会社奈良支店の報告書(4344)
一、大蔵事務官作成のたな卸商品等在庫高確認書(5455)
一、東武産業株式会社等の送付書類(56ないし59)
一、加井靖司らの回答書(606970)
一、小西匡夫(61)和田武光(62)の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、日置一ら各作成の確認書(636465687172)
一、預金帳(昭和五二年押第四三号の一、二、一七、一九、二一)
一、当座帳(同号の三、一八、二二、二三)
一、経費帳(同号の四、五、二〇)
一、銀行セールスマン日誌(同号の六)
一、申告書決算書綴(同号の七)
一、登記権利証関係書綴(同号の八、九)
一、昭和四六年土地売買領収証綴(同号の一〇)
一、領収証綴(同号証の一一)
一、国民年金領収書綴(同号の一二)
一、租税公課領収証綴(同号の一三)
一、大阪屋証券買付支払計算書綴及び預り書残高照会書(同号の一四、一六)
一、継続投資関係書類綴(同号の一五)
(法令の適用)
判示各所為 所得税法二三八条二四四条一項(被告人堀川新是につき各懲役刑選択)
併合罪 刑法四五条前段四八条二項(被告人堀川コトの罰金刑)四七条本文(被告人堀川新是の懲役刑)一〇条(第二の罪の刑に加重)
懲役刑の執行猶予 刑法二五条一項
労役場留置 刑法一八条
(情状)
堀川商店は、被告人コトを補佐する次男の被告人新是が営業全般を統括掌理し、新是の妻京子が経理を、三男新寛夫妻、四男新麿夫妻が製造等を各分掌する労務を主とする型態の同族企業であり、被告人新是らは老朽化した工場の改築資金をねん出するため、本件犯行に及んだものである。
資金ねん出の方法は、企業を法人化するか、被告人ら従業者が適正な給与を受けたうえで生活費をきりつめ、これを資金とする等の適法な方法があるのに、被告人らの無知と経理専門家の適切な指導を受けなかったために、その方法を誤ったものと考えられる点、被告人らも改悛している等諸般の情状に照らし、主文のとおり判決する。
昭和五三年二月一五日
(裁判官 岩田清)