奈良地方裁判所 昭和59年(わ)89号 判決 1984年8月21日
本店所在地
奈良県桜井市大字桜井九〇四番地の二
株式会社光楽
右代表取締役
伊藤惠皓こと 尹男植
国籍
韓国(慶尚南道居昌郡神院面陽地里三二八番地)
住居
奈良県桜井市大字箸中五三二番地
会社役員
伊藤惠皓こと
尹男植
一九四五年四月一日生
右被告人株式会社光楽、被告人伊藤惠皓こと尹男植に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官清水治出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社光楽を罰金一、二〇〇万円に、被告人尹男植を懲役一〇月に、それぞれ処する。
被告人尹男植に対し、この裁判が確定した日から二年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社光楽は、奈良県桜井市大字桜井九〇四番地の二に本店を置き、遊技場および飲食店の経営等を営業目的とする株式会社であり、被告人伊藤惠皓こと尹男植は、同会社の代表取締役として同会社の業務全般を統轄しているものであるが、被告人尹男植において、被告人会社の業務に関し、その所得を秘匿して法人税を免れようと企て、
第一 昭和五五年九月一日から同五六年八月三一日までの事業年度における所得金額は五、二九五万六、三六〇円、これに対する法人税額は二、一一三万九、三〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上、パチンコ店の売上の一部を除外するほか、飲食業の一部を従業員恒岡誠二の事業と仮装し、よって得た資金を仮名の預金及び簿外の貸付金として留保する等の不正手段により、その所得金額の全額を秘匿したうえ、昭和五六年一〇月三一日奈良県桜井市粟殿一八五番地の四所在の所轄桜井税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額はなく、納付すべき法人税額もない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額二、一一三万九、三〇〇円をほ脱し
第二 昭和五六年九月一日から同五七年八月三一日までの事業年度における所得金額は一億三、三九八万〇、五五六円、これに対する法人税額は五、四八一万一、四〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正手段により、その所得金額のうち九、九六二万〇、八六五円を秘匿したうえ、昭和五七年一一月一日前記桜井税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三、四三五万九、六九一円、これに対する法人税額が一、二九七万〇、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額五、四八一万一、四〇〇円と右申告税額との差額四、一八四万〇、九〇〇円をほ脱し
たものである。
(証拠の標目)
判示冒頭の事実につき
一 奈良地方法務局桜井出張所登記官作成の登記簿謄本および閉鎖登記簿抄本
判示冒頭、第一および第二の事実につき
一 被告人会社代表者および被告人尹男植の大蔵事務官に対する昭和五八年一月二一日付質問てん末書(検四一号)
一 被告人会社代表者および被告人尹男植の検察官に対する供述調書
判示第一の事実につき
一 大蔵事務官作成の昭和五八年六月二八日付脱税額計算書(検一号)
一 大蔵事務官作成の昭和五八年六月二七日付証明書(検四号)
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の昭和五八年六月二八日付脱税額計算書(検二号)
一 大蔵事務官作成の昭和五八年六月二七日付証明書(検三号)
判示第一および第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料付表
一 大蔵事務官作成の昭和五八年五月一一日付、同年五月一七日付、同年五月一八日付、同年五月二五日付、同年五月二七日付、同年五月三一日付、同年六月一〇日付、同年六月一四日付(三通)(検九号、同一二号、同一三号)各査察官調査書
一 左京税務署長作成の申告所得税の納付状況照会に対する回答書
一 京都府東府税事務所長作成の事業税等の納付状況照会回答書
一 第三相互銀行桜井支店長作成の昭和五八年二月九日付(二通)(検一九号、同二〇号)、同年五月六日付各確認書
一 富士銀行河原町支店長作成の確認書
一 恒岡誠二の大蔵事務官に対する昭和五八年一月三一日付、同年五月九日付各質問てん末書
一 脇田政治の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 伊藤益靖こと尹漢根の大蔵事務官に対する昭和五八年二月八日付、同年三月九日付、同年四月一四日付、同年六月四日付、同年六月一四日付、同年六月二九日付各質問てん末書
一 伊藤益靖こと尹漢根の検察官に対する供述調書
一 被告会社代表者および被告人尹男植の大蔵事務官に対する昭和五八年一月二一日付(二通)(検四一号、同四二号)、同年一月二四日付、同年一月二八日付(二通)(検四四号、同四五号)、同年二月三日付、同年二月一六日付、同年二月二五日付、同年三月四日付、同年三月二一日付、同年四月六日付、同年四月一三日付、同年五月一三日付、同年五月二〇日付(二通)(検五四号、同五五号)、同年六月六日付、同年六月一〇日付(二通)(検五七号、同五八号)、同年六月一四日付(二通)(検五九号、同六〇号)、同年六月二四日付各質問てん末書
を総合して、それぞれこれを認める。
(法令の適用)
被告人尹男植の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に、被告人会社の判示各所為は、いずれも同法一六四条一項、一五九条一項に、それぞれ該当するところ、被告人尹男植については所定刑中懲役刑を選択し、以上はそれぞれ刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人尹男植については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人会社に対しては法人税法一五九条二項、刑法四八条二項により免れた法人税額に相当する金額以下である各罪所定の罰金の合算額の範囲内において、被告人尹男植を懲役一〇月に処するとともに諸般の情状を勘案して同法二五条一項を適用してこの裁判が確定した日から二年間右刑の執行を猶予し、被告人会社を罰金一、二〇〇万円に処することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 梨岡輝彦)