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奈良簡易裁判所 昭和41年(ろ)67号 判決 1966年10月25日

被告人 飯田繁文

主文

被告人は、無罪

理由

本件公訴事実は、「被告人は、公安委員会の運転免許を受けないで昭和四一年九月五日午前一〇時一五分頃奈良県天理市長柄町八四八番地飯田秀夫方前道路上において、小型特殊自動車(天理市の一五二八号)を運転したものである。」というにあり、検察官は、当公判廷において、本件の小型特殊自動車は、道路交通法施行規則二条小型特殊自動車の表に掲記する「農耕作業用自動車」に該当するものであると釈明した。

被告人は、当公判廷において、自分は、昭和三〇年三月二九日奈良公安委員会から第二種原動機付自転車の運転免許を受け爾来この免許証を有しているのであるから起訴状記載の日時場所で本件農耕用の特殊自動車を運転をしたことは相違ないが、これをもつていわゆる無免許運転の罪に問われる筋合でないとの旨の主張弁解をした。

よつて審按するのに、司法巡査乾末男ほか一名作成の道路交通法違反現認報告書と右巡査ら作成の小型特殊(農耕用テーラ)自動車の道路交通法違反被疑事件検挙報告書及び被告人の当公判廷の供述とによると、被告人が、起訴状記載の日時場所において道路交通法施行規則二条の表小型自動車の欄掲記の農耕作業用自動車即ち小型特殊自動車を運転したことが肯認できる。ところで被告人の当公判廷の供述と奈良公安委員会発行(交付日付昭和三九年三月二三日)の第一五三六四〇号被告人名義の第二種原動機付自転車の運転免許証謄本によると、被告人は、本件当時奈良公安委員会から第二種原動機付運転免許を受けていたことが明らかである。すると、昭和四〇年六月一日法律第九六号道路交通法の一部を改正する法律附則一条、二条により、右法律施行の日である同年九月一日以降は、改正前の「第二種原動機付自転車免許」は、改正後の右法律により「自動二輪車免許」とみなされることとなり、右改正法八五条一項、二項により、二輪免許を受けた者は、自動二輪車、小型特殊自動車及び原動機付自転車の運転ができることとなつた。但し前記四〇年六月法律第九六号附則四項の「改正法の施行の際現に旧法の規定による第二種原動機付自転車免許を受けている者・・・が運転することができる自動二輪車は、政令(即ち、昭和四〇年七月二一日政令二五八号附則九項。)で定めるところにより公安委員会が行なう審査に合格するまでの間旧法の規定による第二種原動機自転車に限るものとする」との規制が存するため、被告人の場合のように、改正後の道路交通法の規定により、自動二輪車免許の有資格とみなされた者は、これによつて直ちに道路交通法施行規則二条の「自動二輪車」に限つて、前記のとおり公安委員会が施行する審査合格までその運転が許されないものと考えられるのである。しかしながら、「小型特殊自動車」については、かかる規制が存在しないので前示の改正後の道路交通法により「自動二輪免許とみなされた」運転免許を有する被告人の場合には、改正後の同法八五条二項に明示するとおり「小型特殊自動車」を運転することが許容されるものと解するを相当とする。

そうだとすると被告人は、本件小型特殊自動車に運転につき公安委員会の運転免許を受けていることとなるので、この車輛を運転しても道路交通法一一八条一項一号の罪を犯したものとはいえないから、被告人に対し、刑事訴訟法三三六条に則り無罪の言渡をする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 若木忠義)

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