宇都宮地方裁判所 平成5年(行ウ)3号 判決 1995年1月19日
主文
一 被告が平成五年二月二六日付けで原告に対してした別紙物件目録記載の土地についての特別土地保有税加算金賦課決定処分のうち、課税金額金四七万一〇〇〇円を超える部分を取り消す。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを五分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
事実
第一 原告の請求
一 被告が平成五年二月二六日付けで原告に対してした別紙物件目録記載の土地についての特別土地保有税更正処分及び加算金賦課決定処分を取り消す。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
第二 事案の概要
一 本件訴訟の法的性格
本件訴訟は、被告がした右特別土地保有税の更正処分及び加算金の賦課決定処分が違法であるとしてその取消しを求める訴訟であり、右各処分の適否が主要な争点である。
二 争いのない事実
1 原告は、平成三年一二月二〇日、藤岡町から別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を買い受けた(以下「本件売買」という。)。
2 原告は、被告に対し、平成四年九月二一日付けで本件土地について、特別土地保有税非課税土地認定の申請(以下「本件非課税土地認定申請」という。)及び特別土地保有税(取得分)について別表の更正前欄記載のとおり期限後申告(以下「本件特別土地保有税申告」という。)をした。
3 被告は、原告に対し、平成四年一〇月五日、本件非課税土地認定申請につき本件土地を非課税土地としない旨決定し(以下「本件非課税土地不認定決定」という。)、その旨の通知をし、本件特別土地保有税申告につき「平成四年九月二一日付けで提出のありました申告書の税額は、一〇〇未満の端数は切り捨てになり九、四二一、七〇〇円になりますので、通知いたします。」との通知をした。
4 被告は、原告に対し、平成四年一〇月三〇日付けで右通知にかかる税額を納税するよう督促をした。
5 原告は、被告に対し、平成五年一月二七日に本件非課税土地不認定決定について異議申立てをしたところ、被告は、同年三月二五日付けでこれを棄却する旨の決定をした。
6 被告は、原告に対し、平成五年二月二六日付けで別表の更正欄記載のとおり特別土地保有税の更正処分(以下「本件更正」という。)及び同表の不申告加算金欄記載のとおり加算金(以下「本件加算金」という。)の賦課決定(以下「本件加算金決定」といい、本件更正と併せて「本件更正及び加算金の決定」又は「本件課税」という。)をするとともに、平成四年一〇月三〇日付けの督促状を破棄するよう通知した。
7 原告は、被告に対し、平成五年四月二〇日付けで本件更正及び加算金の決定につき異議申立てをしたが、被告は、原告に対し、平成五年九月二七日にこれを棄却する旨の通知をした。
三 原告の主張
1 本件更正の違法性(課税権限の濫用)
原告の本件土地の取得は、以下に述べるとおり、本件売買に至るまでの経緯やその内容からして、本件特別土地保有税が非課税あるいは納税義務免除されるべき性質のものであるうえ、不平等で一貫しない課税であるから、被告がした本件更正は課税権限を濫用した違法なものである。
(一) 本件売買に至る経緯
藤岡町は、昭和四八年、地域開発のため、渡良瀬遊水池開発に伴う地域振興のための施設建設を中心の目的として本件土地を含む約三万八〇〇〇坪の土地を買収したが、この施設建設計画が進展しない場合には、右買収地に工場を誘致し工場用地とする副次的な目的をもっていた。
その後、右買収地の埋め立て工事等が行われたが、施設計画が進展しなかったため、工場用地としての使用が検討され、昭和六〇年、新規工場建設のための用地を探していた原告に対し、右買収にかかる町有地約三〇〇〇〇坪の土地全部の購入打診がされた。藤岡町としては、町有地を工場用地として売却するとしても、売却ができない土地が残っては困るという思惑があり、このため、原告に対して減税を含む優遇措置をとる旨言明するなど、強い勧誘があり、結局右土地全部を購入するという基本的な合意が成立することになった。
そこで、藤岡町は、昭和六二年九月八日に、栃木県工業課との間で右町有地を工場用地として造成する打合せを開始し、昭和六三年一二月には、売却代金については、造成の費用が確定できてから協議して確定することとし、土地代金二万円前後に造成費用の上乗せという合意のもと、三〇〇〇〇坪の土地を売買する旨の仮契約が、原告と藤岡町との間で締結され、その後も、藤岡町は、造成工事等について、原告の希望を聴取しながら、事業を進行させた。
右町有地の工場用造成等は、原告がすべての土地を買収することを前提として行われ、しかも、町議会の承認を得た売買仮契約があったにもかかわらず、藤岡町は、町有地の内、一八五〇坪あまりの土地を平成三年九月五日新日軽株式会社(以下「訴外会社」という。)に売却し、同社は、平成三年一〇月二日に所有権移転登記を経由した。
(二) 本件土地の本質的非課税
本件土地は、地方税法(以下「法」という。)五八六条に定める特別土地保有税非課税対象土地ではなく、原告も、同条にいう非課税対象者ではない。また、被告藤岡町も、本件土地取得を非課税とする条例を制定していない。
しかしながら、特別土地保有税は、地価抑制を目的とする政策税であるから、本件売買のように地方公共団体が売主で使用目的も工場用地に限定されているなどおよそ投機的土地取得と言い得ない土地取得については法の趣旨からして本質的に非課税とされるべきである。
(1) 特別土地保有税の免除について
法六〇三条の二は、特別土地保有税創設後の環境の変化に伴い、すでに社会通念上相当程度の利用が行われ最終的な需要に供されている土地については、特別土地保有税の性格上税負担を求めることが適当でないとの見地に立って、課税の合理化を図るための措置として、昭和五三年度の税制改正において設けられた特別土地保有税の免除制度であり、免税対象土地とされるためには、恒久的な利用に供される土地であり、当該土地に恒久的な建物又は建築物が存在すること(恒久性の要件)や、当該土地の利用が、当該土地を含む周辺の地域における計画的な土地利用に適合すること(土地利用計画適合性の要件)が要求されている。
2 ところで、本件土地についての右免除の可否を判定する基準日は平成四年七月一日であるところ、原告は、その時点で本件土地上の建物建築工事に着手しておらず、被告は、このことを免除対象としなかったことの理由としている。
しかし、この恒久的建物の存在の要件については、認定基準日に建物が完成していることまでは必要でないから、現実に建物そのものが存在しない場合には、当該土地上に恒久的な建物の建築されること及び工場施設として使用されることの確実性について、右土地の取得の経過、工事進行に当っての諸問題、土地取得者が恒久的に土地を施設として利用する意図が表明されている行為がなされているかなどを総合して判断すべきであるところ、本件土地は、特別土地保有税の課税をする藤岡町が、工場敷地としてのみ使用することを条件として売却したもので、原告が他の用途に転用したり、転売したりできないものであり、しかも、本件土地の造成工事が完了したのは、平成三年三月であり、その地質も軟弱であったことから、原告は、地盤が安定するのを待ったうえ、平成四年四月ころから、本件土地に建築する工事建物本体の周辺を整備する工事に着手し、工場操業予定の平成六年四月までに建物の建築工事を完了することを目指していたのであり、この点からみると、原告に対して、前記条項の適用による納税の免除がされるべきである。
(三) 課税の不平等と背信性
前記のとおり、平成三年一〇月二日に土地の所有権移転登記を受けた訴外会社の特別土地保有税の納税免除認定基準日は、取得分及び保有分とも平成四年一月一日であったが、被告はそのうち取得分について免除を不可としたものの、保有分については免除を可とする決定を通告している。
このように訴外会社に対しては、同一の判断基準で行わなければならない保有分と取得分の納税免除について矛盾した通告を行っているばかりか、原告と比較しても明らかに不平等な取り扱いをしており、前記の本件売買に至る経緯に照らすと被告が、原告に対して、納税義務を免除しなかったことは、背信的な悪意による行為であり、これは是正されなければならない。
2 本件更正の違法性(手続的違法)
(一) 被告は、期限後に申告された本件特別土地保有税申告を受理したうえ、原告に対し、平成四年一〇月五日付けで前記争いのない事実3、4記載のとおり、期限後申告であるが受理する意思を表示し、右申告を前提とした納税督促をしている。
被告は、前記納税督促手続を撤回しているが、右手続に違法はないから右撤回は許されない。
(二) 被告は、原告に納税意思がないと認定して本件更正をした旨主張するが、納税に異議のある納税者が、異議を留保して納税するか、納税そのものを延期して異議を申し立てるのかは、その自由である。もしも、納税をしないままで争い、最終的に敗訴した場合には、納税者はその間の延滞金を支払わなければならないという不利益を被る。しかし、この不利益を受けても納税を延期することは、異議申立ての権利行使の裏面にすぎない。結局、被告は、原告が権利行使をしていることに対して、不利益処分を課したものにほかならない。
3 本件加算金の決定の違法性
本件特別土地保有税申告は、たまたま申告が期限後になったというだけのものであり、不申告による更正等のなされることを予知してされたのではないから、本件加算金の決定は違法である。
四 被告の主張(本件更正及び加算金の決定の違法性)
1 本件更正及び加算金の決定は、いずれも適法にされたものであり、原告の主張には理由がない。
(一) 本件売買に至る経緯
当初は原告に本件土地を含む町有地全てを売却する方向で話が進んでおり、昭和六三年一二月二七日には、売買代金は後日決めることで右土地の売買の仮契約もされたが、右仮契約について町議会の承認を得た事実はない。
ところが、その後被告が、不動産鑑定士の鑑定評価額に基づいて右土地の売却代金を一平方メートル当たり金二万五五五〇円で売却することを決定し、その旨原告に伝えたところ、その価格では右土地全部を購入することができないとのことであったため、平成三年九月五日、本件土地のみ売却することを原告との間で合意し、その余の土地を訴外会社に売却した。
なお、藤岡町の関係者が、原告に対し、減税を含む優遇措置をとる旨約束したことはない。
(二) 訴外会社に対する特別土地保有税課税の減免
市町村長は、特別の事情がある場合において、特別の事情がある者には市町村長の条例の定めるところにより、特別土地保有税を減免することができるところ(法六〇五条の二)、藤岡町は、藤岡町税条例一三九条の二で減免できる場合とその手続を定めている。
被告は、訴外会社の特別土地保有税(取得分)の非課税土地認定申請及び免除認定申請については、いずれも該当しないとして認定しない旨の通知をしたが、同社から同税(保有分)についても減免申請がされたので、右規定に基づき減免の是非を検討し、前記のとおり、町有地売却の経過の中で土地の一部を訴外会社に売却することになり、調整池の位置の変更等に伴う新たな開発行為許可と調整池変更工事等に時間を要するため、訴外会社が基準日に建物の建設に着手することは事実上不可能であったことを考慮し、減免することを決定した。
(三) 原告に対する課税
これに対し、原告については、右のような減免事由はなく(減免申請もされていない。)、本件土地取得が非課税対象でないことも勿論であるから、課税するのは当然である。
2 本件加算金の決定の適法性
原告が被告に提出した本件特別土地保有税申告書の「算出税額」欄には九四二万一七九〇円と記載されていたが、「納付すべき税額」欄は空白になっており、右申告と同時に本件非課税土地認定申請が提出された。
右申告書の「納付すべき税額」欄の空白につき、当初被告は、単なる記入漏れであると善解し、同年一〇月五日付けで納付すべき税額は一〇〇円未満の端数は切り捨てである旨通知するとともに、非課税土地には該当しない旨通知したが、その後原告が右申告について何も言って来ないので、同月三〇日付けで右税の納税督促をした。
ところが、原告は、同年一一月一六日に、「西前原工業団地取得に関する特別土地保有税の件」という文書を持参し、被告に文書による回答を求め、これに対し非課税とならないとの回答を同年一二月三日にすると、同月二四日に、「西前原工業団地取得に対する特別土地保有税適用への弊社見解」という文書を提出し、さらに、平成五年一月二七日には本件非課税土地不認可決定に対する異議を申し立てるに至った。
右過程での原告の態度から、そもそも原告には特別土地保有税の納税意思はなく、申告書の「納付すべき税額」欄は故意に空白にして提出したものであることが明らかになったので、被告は、先に記入漏れとして取り扱ったのは誤りであったと気づき、原告に対し、同年二月二六日付けで法六〇六条一項に基づく本件更正及び同法六〇九条二項に基づく本件加算金の決定をするとともに、平成四年一〇月三〇日付け納税の督促状を破棄するよう依頼したのである。
よって、被告がした本件更正及び加算金決定は適法なものであるから、原告の請求は棄却されるべきである。
また、本件加算金の決定は、本件特別土地保有税申告が提出期限後の申告であったので、法六〇九条二項二号により、納付すべき税額に一〇〇分の一五の割合を乗じた額を不申告加算金額として賦課したものであるから、法律の規定に基づく適正なものである。
なお、法六〇九条三項の規定は、不申告による更正等があるべきことを予知してなされたものでない場合の不申告の加算金の率を前記一〇〇分の一五から一〇〇分の五に減じるものであるが、納税意思のない原告にその適用がないのは当然である。
三 証拠
証拠は、本件記録中の証拠関係目録に記載のとおりであるから、ここに引用する。
第四 当裁判所の判断
一 課税権限の濫用について
1 本件土地取得が本質的に非課税である旨の主張について
本件土地は、法五八六条に定める特別土地保有税の非課税対象ではなく、原告も同条にいう非課税対象者ではない。また、原告が自認しているように、藤岡町も本件土地取得を非課税とする条例を制定していないから、本件土地取得は特別土地保有税の課税対象となる。
原告は、本件土地取得が本質的に非課税とされるべきである旨主張しているが、特別土地保有税が地価抑制を目的とする政策税制であることは原告の指摘するとおりであるにしても、同制度は投機的土地取得以外の土地取得の全てを非課税とするのではなく、法に定めた要件に合致するものに限って非課税としているのであるから、本件土地取得が本件売買の経過に照らして投機的土地取得でないと言えるとしても、そのことから本件土地取得が本質的に非課税であるというのは困難であるし、藤岡町が本件土地取得を非課税とする条例を制定していないことが見過ごしがたい怠慢であるとも評価できない。
2 特別土地保有税の納税義務免除について
次に、原告は、被告が原告に対し、納税義務を免除すべきであった旨主張するので判断する。
法六〇三条の二第一項二号において定める免税対象土地とされるためには、工場施設等で、その整備状況、利用状況等が恒久的な利用に供される特定施設に係る一定の基準に適合するものの用に供する土地であることが必要である。右は、すでに社会通念上相当程度の利用が行われ最終的な需要に供されている土地については、土地の投機的取得の抑制と宅地供給の促進を図るために創設された特別土地保有税の負担を求めるのが相当でないとの趣旨に基づくものであるから、現実に認定基準日に建物が完成していることまでは必要でないものの、最終的な需要に供されている事実の確認を合理的かつ明確なものにするためには、少なくとも、認定基準日において、建物の建築工事等に着手していることを要するものと解するのが相当である。原告は、認定基準日の時点で本件土地上に所定の建物の建築されることが確実であれば免除の要件を満たしている旨主張しているが、このようなあいまいな認定基準は法文上の根拠もなく、また、課税実務に無用の混乱をもたらすものであって、採用の限りではない。
そこで、これを本件についてみると、原告は、本件非課税土地認定申請の認定基準日である平成四年七月一日には未だ本件土地上の建物の建築工事に着手していなかった(弁論の全趣旨)のであるから、免税制度適用の要件を欠くというべきである。従って、被告が、納税義務を免除しなかったことは適法である。
3 課税の不平等と背信性について
原告は、訴外会社に対する課税との比較において原告に対する本件課税が不平等であると主張するが、被告は、訴外会社と原告のいずれに対しても、特別土地保有税(取得分)の非課税認定及び免除認定をしておらず(弁論の全趣旨)、また、弁論の全趣旨によると、訴外会社の申請により、同社に対して特別土地保有税(保有分)の減免(藤岡町条例一三九条の二によると、被告が特に認めた場合には特別土地保有税の減免ができる。乙第一号証)をした事実はあるも、弁論の全趣旨によると右は被告主張の事実を考慮してなされたものであると認められるから、右減免をもって被告の裁量逸脱ということはできないし、原告に右訴外会社と同様の事情があったことや、原告が右同様の申請をしたとの事実を認め得る証拠はないから、訴外会社と比較して不平等な課税がされたとの原告の主張は採用できない(なお、乙第一〇号証によると、原告が被告に対し、平成五年五月三一日に特別土地保有税(保有分)の免除認定申請を行い、同年六月二八日付けで右免除の決定がされていることが認められるから、この点から見ても、原告が主張するような不平等な扱いはなかったものというべきである。)。
また、原告は、原告に対する本件課税が本件売買に至る経過に照らして背信的であるとも主張しているが、原告の本件土地取得が非課税となり得ないことは前記のとおりであり、これを非課税とする藤岡町条例も存在しなかったから、被告は、当初から法の規定により原告に特別土地保有税を課税すべき立場にあったのであり、これを遵守することが背信的行為であるとは到底いえず、原告が主張する本件売買に至る経過(原告は減税を含む優遇措置をとるとの口頭の約束があった旨主張しているが、被告はこれを否定しており、当事者の売買交渉において特別土地保有税を意識した交渉がなされたことを窺わせる資料もないことからすると、特別土地保有税についての具体的約束があったと見るのは困難である。)を考慮しても、被告が原告に対し、特別土地保有税を課したことが背信的であるということはできず、原告の右主張も失当である。
二 本件更正の手続的違法について
原告は、被告が原告の期限後申告を受理し、納税督促までしながら、その後に本件更正をしたことの違法を主張する。
しかしながら、原告が特別土地保有税の申告をした後であっても、あるいは申告にかかる税額を納付した後であっても、更正すべき理由があれば、右税の徴収権が時効により消滅するまでの間は被告において更正処分することを妨げないから、原告の期限後申告が受理されたこと、あるいは被告が納税督促をしたことをもって、本件更正が違法とはいえない。従って、原告の右主張は失当である(本件更正の金額も適正なものである。)。
三 本件加算金の決定について
期限内に特別土地保有税の申告をしなかったことに正当な理由があると認められない限り、不申告加算金の賦課は免れないものであるところ、本件において、原告が期限内に納税の申告をしなかったことを正当化する特段の事由は何ら窺われない。
そこで、本件加算金の額について検討するに、法六〇九条二項は、期限後申告の後に更正処分等があった場合は、これより新たに納税すべき額に一〇〇分の一五の割合を乗じて計算した金額に相当する不申告加算税を賦課すべき旨規定し、被告はこれを根拠として本件加算金の決定をしたものである。
しかしながら、法六〇九条三項が、右期限後申告が更正又は決定があることを予知してされたものでないときの右加算金率を一〇〇分の五に更に減ずる旨規定していることに照らすと、同項の趣旨は、申告期限を徒過したものの任意に申告をした納税者について右加算金率を減額するというものであり、同項にいう「更正又は決定があることを予知してされた」とは、納税者が右更正等のあることを事前に知りこれを回避する目的で期限後申告をした場合をいうものと解されるところ、弁論の全趣旨によると、原告は、本件土地取得の特別土地保有税が非課税であるとの見解に立ち、本件非課土地認定申請とともに、同税を納付する意思のないことを示すため同税の申告書の納付すべき税額欄をあえて空欄としたままの本件特別土地保有税申告をしたのであるから、右加算金率の減額規定が適用されるべきものである。
被告は、納税意思のないことが明らかな場合には右減額規定の適用がない旨主張しているが、納税者がその見解に基づいて納税を行うことは、申告制度上当然予定されたことであり、これをもって更正等のあることを予知していたということはできないから、被告の右主張は採用できない。
第五 結論
以上によれば、原告の本件各請求は、本件加算金の決定のうち、加算金率一〇〇分の五を乗じて算出した金四七万一〇〇〇円を超える部分の取消しを求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条本文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 髙橋一之 裁判官 宮岡章 裁判官 安藤範樹)
別紙<省略>