宇都宮地方裁判所 平成7年(行ウ)4号 判決 1999年3月17日
宇都宮市塙田三丁目二番四号
原告
株式会社総合センター
右代表者代表取締役
木内紀夫
右訴訟代理人弁護士
田中徹歩
宇都宮市昭和二丁目一番七号
被告
宇都宮税務署長 福田征治
右指定代理人
戸谷博子
同
石井富信
同
田村利郎
同
山本廣美
同
田村一美
同
谷田部浩
同
今泉憲三
同
齋藤隆敏
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
被告が原告に対し平成四年三月三一日付けでした同人の平成元年八月一日から平成二年七月三一日までの事業年度分及び同年八月一日から平成三年七月三一日までの事業年度分の各法人税にかかる重加算税の賦課決定処分、平成二年八月一日から平成三年七月三一日までの課税期間分の消費税にかかる重加算税の賦課決定処分並びに平成二年七月から同年一二月までの期間分の源泉徴収にかかる所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分(ただし、いずれも裁決により一部取り消された後のもの。)をいずれも取り消す。
第二事案の概要
一 争いのない事実等
1 原告は、不動産の売買斡旋及び分譲などを業とする株式会社であり、代表取締役の木内紀夫(以下「木内」という。)が、発行済株式総数の八〇パーセント以上を有するいわゆる同族会社である。
2 原告は、平成元年八月一日から平成二年七月三一日までの事業年度分(以下「平成二年七月期」という。)の法人税について、平成二年一〇月一日に確定申告書を、平成三年六月一〇日に課税土地譲渡利益金額に対する税額部分を訂正した修正申告書をそれぞれ被告に提出した(乙二、三)。
3 原告は、平成二年八月一日から平成三年七月三一日までの事業年度分(以下「平成三年七月期」という。)の法人税及び平成二年八月一日から平成三年七月三一日までの課税期間分の消費税(以下「本件消費税」という。)について、平成三年九月三〇日に確定申告書をそれぞれ被告に提出した(乙二、四)。
4(一) 被告は、原告に対し、平成四年三月三一日付けで、別表一ないし四記載のとおり、平成二年七月期、平成三年七月期の各法人税及び本件消費税にかかる各重加算税の賦課決定処分(以下「本件各重加算税賦課決定処分」という。)並びに平成二年七月から同年一二月までの期間分の源泉徴収にかかる所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分(以下「本件納税告知処分」、「本件不納付加算税賦課決定処分」といい、これを合わせて「本件納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分」という。)をした。
(二) このため、原告は、被告に対し、平成四年五月一三日付けで、右各処分について異議を申し立てたが、被告は、原告に対し、同年八月一二日付けで、右各異議申立てを棄却する旨の決定をした。
(三) そこでさらに、原告は、国税不服審判所長に対し、同年九月一四日付けで、右各処分について審査請求をしたが、同所長は、平成七年四月二七日付けで、本件納税告知処分及び不納付加算税につき、別表四記載のとおり、その一部を取り消し、その余の審査請求を棄却する旨の裁決をし、右裁決書は同年五月二〇日原告に送達された。
二 争点
1 本件各重加算税賦課決定処分の適法性
(一) 被告の主張
(1) 原告は、株式会社あけぼのゴルフ(以下「あけぼのゴルフ」という。)に対し、宇都宮市一番町三番二一所在の土地建物(以下「本件土地建物」という。)を代金六〇〇〇万円で譲渡して右代金を受領したにもかかわらず、内一五〇〇万円を売上から除外し、平成二年七月期の法人税の確定申告において、右売買代金を四五〇〇万円であるとして所得金額の計算を行い、これに基づいて確定申告書を提出した。
(2) また、原告は、日本店舗リース株式会社(以下「日本店舗リース」という。)との間で締結したテナントビルの総合企画等の売買契約に基づき代金一〇〇〇万円を同社振出しの小切手で受領したにもかかわらず、これを売上から除外し、平成三年七月期の法人税及び本件消費税の各確定申告において、右売買代金を益金に算入せずに所得金額の計算を行い、これに基づいて各確定申告書を提出した。
(3) これは、いずれも国税通則法六八条一項に規定する「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出し」た場合に該当する。
(二) 原告の主張
(1) 原告は、平成二年七月期の法人税の確定申告の際、右申告手続を委任していた株式会社久保井六郎会計事務所(税理士久保井一臣。以下「久保井会計事務所」という。)に対し、あけぼのゴルフから六〇〇〇万円を受領した旨記載のある現金出納帳、領収書の控え、売買契約書(売買価格六〇〇〇万円と記載のあるもの。)を提示している上、久保井会計事務所の顧問である舘野光明(以下「舘野」という。)は、本件土地建物の売買価格が六〇〇〇万円であることを知っていた。
(2) また、原告は、平成三年七月期の法人税及び本件消費税の確定申告の際、久保井会計事務所に対し、日本店舗リースから一〇〇〇万円を受領した旨記載のある現金出納帳、入金伝票、売買契約書を提示している。
(3) したがって、平成二年七月期、平成三年七月期の法人税及び本件消費税の各確定申告が過少申告となったのは、もっばら久保井会計事務所の過誤によるものであり、原告が国税通則法六八条一項にいう「隠ぺい又は仮装」をした事実はない。
2 本件納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分の適法性
(一) 被告の主張
(1) 平成二年二月二日にあけぼのゴルフから受領した本件土地建物の売買手付金四〇〇万円について
原告は、平成二年二月二日、あけぼのゴルフから本件土地建物の売買手付金として四〇〇万円を受領したが、右金員を売上として計上していないところ、右金員に対応する原告の預金その他の資産の増大はなく、右金員を原告の経費として支出したと認められる証拠もないこと、原告は、木内がその発行済株式の八〇パーセント以上を所有し、経理、営業等経営の一切にわたって実権を握っている同族会社であり、木内は、原告の代表者として右金員を自己の管理下において、自己の意思により自由に処分することができる立場にあったことなどを考慮すれば、右金員は原告代表者の木内が費消あるいは享受していると認められ、同人に対する役員賞与の支給があったものと認められる。
(2) 平成二年八月一日に日本店舗リースから受領した一〇〇〇万円について
原告は、平成二年八月一日、日本店舗リースから、テナントビルの総合企画等の売買契約に基づき一〇〇〇万円の小切手を受領したが、右金員を売上として計上していないこと、右小切手は、同日、木内個人の名義で裏書され、一〇〇〇万円全額が木内名義の預金口座に入金されたこと、右口座は木内の個人的な支払のために使用されていること、右金員がその後原告に返戻された事実もないことからすれば、木内の預金口座に振り込まれた右一〇〇〇万円は、木内に対して支払われた臨時的な給与、すなわち役員賞与と認められる。
(3) したがって、被告は、原告の右売上除外金一四〇〇方円に相当する金員について、原告代表者木内の役員賞与と認定したものであるところ、これと金額を同じくする源泉所得税の本件納税告知処分(裁決により一部取り消された後のもの。)は適法である。
そして、原告が本件納税告知処分にかかる源泉所得税を納付しなかったことについて国税通則法六七条一項ただし書の正当な理由があるとは認められないから、本件不納付加算税賦課決定処分も適法である。
(二) 原告の主張
(1) 平成二年二月二日にあけぼのゴルフから支払を受けた四〇〇万円について、木内が個人的に取得した事実はない。
(2) また、平成二年八月一日に木内名義の預金口座に入金された一〇〇〇万円は、木内の原告に対する左記<1>ないし<20>の貸付金の返済として支払われたものであり、木内に対する賞与の支払ではない。
記
<1> 昭和五九年一〇月三一日貸付の五〇万円。
<2> 昭和六〇年五月三一日貸付の三七万円。
<3> 同年九月三〇日貸付の三六万円。
<4> 同年一〇月三一日貸付の五〇万円。
<5> 同年一一月三〇日貸付の四〇万円。
<6> 昭和六一年四月三〇日貸付の三五万円。
<7> 同年五月三一日貸付の五五万円。
<8> 同年七月三一日貸付の三〇万円。
<9> 同年八月一日貸付の五一万七五四四円。
<10> 昭和六二年一〇月三一日貸付の一〇〇万円。
<11> 昭和六三年三月三一日貸付の三〇万円。
<12> 平成元年四月二八日貸付の九〇万円。
<13> 同年五月三一日貸付の六六万八五〇〇円。
<14> 同年八月一八日貸付の三〇万円。
<15> 平成二年四月二七日貸付の二九〇万円。
<16> 同年五月三一日貸付の一二〇万円。
<17> 同年六月二九日貸付の一六〇万円。
<18> 平成三年五月一三日貸付の四二一万四七〇〇円。
<19> 同月三一日貸付の一五五万九二〇〇円。
<20> 同年六月二八日貸付の八〇万円。
(3) したがって、本件納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分は違法である。
第三争点に対する判断
一 前記争いのない事実等に証拠(甲三の4、乙一ないし四、八、九の2、3、一一ないし一三、一五、一六の1、2、一八、証人舘野光明、同田﨑昇吉、原告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。
1 原告は、代表取締役である木内が発行済株式総数の八〇パーセント以上を有する同族会社であり、事務員として近能芳子(以下「近能」という。)がいたものの、営業、経理等の実際は、木内が行っていた。
2 原告は、平成二年一月ころ、あけぼのゴルフに対し、本件土地建物を代金六〇〇〇万円で譲渡し、あけぼのゴルフから同月三〇日に申込金として一〇〇万円、同年二月二日に手付金として四〇〇万円、内金として一〇〇〇万円、同年三月六日に残代金として四五〇〇万円の支払を受けたが、三月六日の四五〇〇万円を除く一五〇〇万円については、これを現金出納帳に記載するなどして原告の売上金として計上することをしなかった。なお、右売上除外金一五〇〇万円は、原告の益金となるべきものであるが、原告には右益金に見合った資産の増加は認められない。
3 原告は、昭和五四年の会社設立以来、納税申告手続を久保井会計事務所に委任していた。
4 原告は、平成二年九月中旬ころ、平成二年七月期の法人税の確定申告を行うため、久保井会計事務所の事務員である田﨑昇吉(以下「田﨑」という。)に対し、現金出納帳、入出金伝票及び原告名義の預金通帳のコピーを預けた。
5 田﨑は、現金出納帳と入出金伝票とを照合確認し、原告預金口座からの自動振替分については振替伝票を起票して、入出金伝票、振替伝票の内容を久保井会計事務所内にあるコンピューターに入力し、総勘定元帳を作成するという手順で決算書を作成したが、現金出納帳には、本件土地建物の売買代金として平成二年三月六日に支払を受けた四五〇〇方円のみが記載されており、差額の一五〇〇万円についての記載はなく、これに沿う入金伝票もなかったため、総勘定元帳に本件土地建物の売買代金として四五〇〇万円のみを計上し、これに基づき決算報告書、勘定科目内訳明細書を作成し、これらを添付して確定申告書を作成した。
6 原告は、平成二年一〇月一日、右確定申告書を被告に提出し、平成二年七月期の法人税の確定申告をした。
7 原告は、平成二年四月二七日、日本店舗リースとの間で、テナントビルの総合企画等を代金一〇〇〇万円で譲渡するとの契約を結び、同年八月一日、右契約に基づき、日本店舗リースから代金一〇〇〇万円を同社振出しの小切手で受領したが、これを現金出納帳に記載するなどして原告の売上金として計上することをしなかった。
7 右小切手は、同日、木内個人の名義で裏書され、一〇〇〇万円全額が木内の個人的な支払に使用されている同人名義の栃木銀行の普通預金口座(口座番号三一六三一六一)に振り込まれた。
8 原告は、平成三年七月期の法人税及び本件消費税の各確定申告を行うため、久保井会計事務所の田﨑に対し、現金出納帳、入出金伝票及び原告名義の預金通帳のコピーを預けた。
10 田﨑は、前記5と同様の手順で決算書を作成したが、現金出納帳には日本店舗リースから一〇〇〇万円を受領した旨の記載はなく、これに沿う入金伝票もなかったため、総勘定元帳に右一〇〇〇万円を計上せず、そのまま決算報告書、勘定科目内訳明細書を作成し、これらを添付するなどして各確定申告書を作成した。
11 原告は、平成三年九月三〇日、右各確定申告書を被告に提出し、平成三年七月期の法人税及び本件消費税の各確定申告をした。
二 争点1について
1 前記認定のとおり、原告は、本件土地建物の売買代金としてあけぼのゴルフから支払を受けた六〇〇〇万円のうちの一五〇〇万円及び日本店舗リースから支払を受けた一〇〇〇万円の各売上金を所得の計算に用いる金銭出納帳に記載せず、入金伝票も作成せず、これらを所得に加算して各確定申告をしなかったというのであるから、原告が課税標準又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づき各納税申告書を提出したものと認められる。
そうだとすれば、平成二年七月期の法人税の重加算税の基礎となる税額は一〇五〇万円、平成三年七月期の法人税の重加算税の基礎となる税額は三〇七万円、本件消費税の重加算税の基礎となる税額は一一万円であり、右各金額に一〇〇分の三五の割合を乗じて算出した各重加算税の金額は、平成二年七月期の法人税について三六七万五〇〇〇円、平成三年七月期の法人税について一〇七万四五〇〇円、本件消費税について三万八五〇〇円であるところ、右各金額は、本件各重加算税賦課決定処分の原告の各重加算税の金額を上回るか同額であるから、本件各重加算税賦課決定処分はいずれも適法と認められる。
2(一) これに対し、原告は、平成二年七月期の法人税の確定申告手続の際、久保井会計事務所に対し、あけぼのゴルフから六〇〇〇万円を受領した旨記載のある現金出納帳(甲一の1)、領収書の控え、売買契約書(乙七)を渡していること、久保井会計事務所の事務員があけぼのゴルフに対し本件土地建物の売買代金をいくらで計上したか問い合わせていること(乙八)、右確定申告手続の前に、舘野の指導により、売買代金が五〇〇〇万円となっている契約書(乙一〇)を六〇〇〇万円の契約書(乙七)に作成し直しているのであるから、舘野は本件土地建物の売買代金が六〇〇〇万円であると知っていたといえることなどを理由に、久保井会計事務所は、本件土地建物の売買代金が六〇〇〇万円であることを認識し、その旨の資料の提示も受けながら、これを見落として四五〇〇万円で所得計算等をしたと主張し、木内も原告代表者尋問において右主張に副う供述をする。
しかしながら、契約書や領収書の控えを久保井会計事務所に渡したという木内の右供述は、事務員である近能からそのように報告を受けたというものに過ぎない上、田﨑及び舘野は、原告からは入出金伝票、現金出納帳、頭金通帳のコピーしか預かっていない、預かった現金出納帳には平成二年二月二日にあけぼのゴルフから五〇〇万円及び一〇〇〇万円の支払を受けた旨の記載はなかった(乙一八、証人田﨑)、原告に対し、本件土地建物の売買契約書を作成し直すことを指導したことはない(証人舘野)などと木内と異なる供述をしていること、久保井会計事務所の事務員から本件土地建物の売買代金をいくらで計上したか問い合わせがあったとのあけぼのゴルフの関係者の質問への答弁(乙八)も、問い合わせをしてきた者が誰であるのか明らかでなく、その内容に具体性がないこと、現金出納帳(甲一の1)の平成二年二月二日のあけぼのゴルフからの五〇〇万円及び一〇〇〇万円の入金の記載は、一月分の記載の後に続けて書かれており、記載方法が極めて不自然であることなどに照らし、木内の前記供述を採用することはできない。
(二) また、原告は、平成三年七月期及び本件消費税の決算等の際、久保井会計事務所に対し、日本店舗リースから一〇〇〇万円を受領した旨記載のある現金出納帳(甲一の2)、入金伝票(甲二)、契約書(乙五)を渡していると主張し、木内も原告代表者尋問において右主張に副う供述をするが、木内の右供述は、右(一)と同様、事務員の近能から報告を受けたというものに過ぎない上、田﨑は、原告から現金出納帳、入出金伝票及び原告の預金通帳のコピーしか預かっていないなどと木内と異なる供述をしていること(乙一八、証人田﨑)、原告提出にかかる現金出納帳(甲一の2)の一枚目は久保井会計事務所から返還された後に差し替えられている(争いのない事実)が、差し替えた理由について、木内は、汚れたので舘野の指示で書き直したなどと不合理な供述をしていること、右一〇〇〇万円に関する入金伝票(甲二)は筆跡等から近能が作成したものと堆認されること、現金出納帳に記載があり入金伝票もあるのに会計事務所がこれを見落とすということは通常考えられず、また、久保井会計事務所が右一〇〇〇万円を原告の所得からことさら除外する理由も認められないことなどに照らし、採用することはできない。
三 争点2について
1 前記認定のとおり、原告は、あけぼのゴルフから平成二年二月二日に支払を受けた四〇〇万円について売上から除外しているところ、原告には右売上除外金に対応する預金その他の資産の増加はなく(なお、平成二年二月五日に原告の預金口座に四〇〇万円が振り込まれている(乙一四)が、右四〇〇万円は会計帳簿上原告の手持ち現金から振り込まれたものとして経理処理されていること(弁論の全趣旨)などから、右売上除外金が振り込まれたものとは認められない。)、右売上除外金が原告のため経費として支出されたと認めるべき事情もないことに加え、原告は、木内が営業や経理など経営の一切を支配しているいわゆる同族会社であって、木内が売上金等を自由に費消あるいは流用しうる立場にあることなどを合わせ考慮すれば、右売上除外金四〇〇万円は、原告代表者である木内が費消したもの、すなわち木内に対する賞与の支給があったものと推認するのが相当である(なお、右賞与の支給日は、当該事業年度の末日である平成二年七月三一日と認めるのが相当である。)。
2 また、前記認定のとおり、原告は、平成二年八月一日に日本店舗リースから受領した一〇〇〇万円(小切手で受領)について原告の売上から除外していること、右小切手は、同日、木内個人の名義で裏書され、一〇〇〇万円全額が木内個人名義の預金口座に振り込まれていること、右口座は木内の個人的な支払に使用されているものであること、右金員が原告に返戻された事実は認められないことなどからすれば、右金員は、原告代表者である木内に対して支出された賞与と認めるのが相当である(なお、右賞与の支給日は、木内個人の預金口座に一〇〇〇万円が入金された平成二年八月一日と認められる。)。
なお、原告は、右一〇〇〇万円は、木内の原告に対する貸金の返済として支払われたものである旨主張するが、これを裏付ける証拠はなく、右主張は採用できない。
3 したがって、裁決により取り消されたその余の処分、すなわち、被告が、原告の右各売上除外金を木内に対する賞与であるとしてした本件納税告知処分は適法であり、国税通則法六七条一項の規定に基づき、本件納税告知処分により納付すべき源泉所得税額五四一万円(同法一一八条三項の規定により一万円未満の端数切り捨て。)に一〇〇分の一〇を乗じた額(五四万一〇〇〇円)で賦課決定した本件不納付加算税賦課決定処分も、適法である。
第四結論
以上検討のとおり、原告の請求はいずれも理由がないのでこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 島内乘統 裁判官 小川浩 裁判官 中尾佳久)
別表一
自 平成元年八月一日 至 平成二年七月三一日(事業年度)までの法人税に係る重加算税の課税処分の経緯
<省略>
別表二
自 平成二年八月一日 至 平成三年七月三一日(事業年度)までの法人税に係る重加算税の課税処分の経緯
<省略>
別表三
自 平成二年八月一日 至 同三年七月三一日(課税期間)までの消費税に係る重加算税の課税処分の経緯
<省略>
別表四
自 平成二年七月 至 同年一二月までの期間分の源泉徴収に係る所得税の課税処分等の経緯
<省略>