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宇都宮家庭裁判所 昭和45年(少ハ)2号 決定 1970年10月19日

少年 S・S(昭二五・四・五生)

主文

本人を昭和四六年九月七日まで中等少年院に継続して収容する。

理由

本件申請の趣旨は

「本人は昭和四四年九月八日字都宮家庭裁判所において業務上過失傷害、道路交通法違反保護事件により中等少年院送致の決定を受け、同年九月一一日茨城農芸学院に入院し、二級の下に編入されたが、生活態度が不良で暴行毛抜き等の反則行為により二度にわたり謹慎処分を受け、昭和四五年四月やつと二級の上に進級したが、同年四月五日に成年に達したため、少年院法第一一条第一項但書により同年九月七日まで収容を継続されることになり、同年六月営繕補助生となり、やつと成績も向上し、八月一日一級の下に進級したが本人はなお善悪の自主的判断に欠け、再非行が予測され、非行性が除去されたとは認められず、最高処過段階にも達していないので更に収容を継続されたい」というにある。

当裁判所の調査官の調査の結果ならびに審判における本人、本人の父および茨城農芸学院分類保護課長○沼○道の各供述を総合すると、上記申請の要旨にみられる本人の処遇経過が認められる。

ところで上記のような本人の院内における生活態度の不良は本人の資質により大きな原因があるものと認められる。本人は、その年齢に比して、情意面の発達がかなり遅滞し、社会性も未熟で、また行動や思考は自己本位に、しかも安易にその場のふんい気に流され易く、深い洞察力、思考力といつた面に欠け、善悪の判断力、規範意識の低さが目立ち、かような本人の資質面における欠陥がより大きな原因となつて院内における度重なる反則行為を招いたものと認められる。しかして本人は、前記のように業務上過失致傷、道路交通法違反の非行を犯して今回の少年院送致の決定を受けたものであつたが、その非行の内容は、無免許、酒酔い運転に加えて、時速約七〇粁の速度違反を犯した無謀運転の結果での人身事故であり、しかも同種の前歴もあるのであつて、悪質かつ危険極まりないものといわざるを得ないものであるが、本人がかような非行に陥つた原因としては、本人の前記のような資質面における欠陥に負うところが大きく、それは本人の院内における生活態度の不良とその原因において相通じ合うものがあり、本人の資質上の欠陥が教化改善されない限り、再び同種の非行に陥る危険性が大きいと予測されるのである。

もつとも本人の前記のような資質面での欠陥は最近ではかなり改善され、本件申請後、営繕科に編入され、本人の持つ良い面も表われて成績の向上が見られ、一〇月一日に一級の上に進級したが本人の自覚をより一層定着させて向上を助長させることが必要であり、院側の本人に対する処遇方針、仮退院後の保護観察期間も考慮し、その収容期間を昭和四六年九月七日までとして収容を継続することが適当と考えられる。

よつて、少年院法第一一条第四項を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 田辺康次)

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