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宇都宮家庭裁判所 昭和53年(少)1779号 決定 1979年7月19日

少年 E・S(昭三九・一・三〇生)

上記少年に対する強制措置許可申請(予備的に虞犯)事件について、当裁判所は家庭裁判所調査官○○○○の調査のうえ、検討の結果、本件については別件(昭和五四年少第一二四号事件)による保護が相当であつて本件強制措置並びにぐ犯事件についての保護措置はいずれも相当ではないものと認め、次のとおり決定する。

主文

本件強制措置申請はこれを却下する。

本件虞犯事件については審判を開始しない。

(裁判官 千徳輝夫)

〔編注〕 別件窃盗保護事件(字都宮家 昭五四(少)一二四号)は、昭和五四年七月一九日保護観察決定

〔参考〕 送致書

中児相五五〇号

昭和五三年一〇月一八日

栃木県中央児童相談所長

字都宮家庭裁判所長殿

児童福祉法第二七条の二による送致について下記児童は、昭和五三年八月一四日から国立武蔵野学院に措置中ですが、強制措置が必要と認められますので送致します。

一 児童氏名E・S昭和三九年一月三〇日生

二 児童本籍真岡市○町××××番地

三 保護者E・U四六歳トラツク運転手

四 保護者住所真岡市○○町×丁目××~××

五 強制措置を必要とする理由

別添、国立武蔵野学院長の意見のとおり、本児の人格特性から、無断外出等の恐れが多分に認められる。

六 強制措置の日数

通算一八〇日

七 添付書類

国立武蔵野学院長よりの「在所児童の強制措置の申請について」(別紙)

児童ケース記録写(国立武蔵野学院入所後の記録)(編略)

(別紙)

発武第一四九号

昭和五三年一〇月一四日

国立武蔵野学院長

栃木県中央児童相談所長殿

在院児童の強制措置の申請について(依頼)

一児童の氏名

E・S昭和三九年一月三〇日生

一児童の本籍地

栃木県真岡市○町××××番地

一児童の入院年月日

昭和五三年八月一四日

一申請する強制措置期間

通算して一八〇日間

標記について種々ご配慮を煩わしているところでありますが、頭書の児童は貴県知事(貴児童相談所長)より措置を受けて、当学院に収容し、処遇の万全を期しているところでありますが、その教護過程において、当該児童の処遇上左記「在院中の経過及び処遇概要」及び「強制措置を必要とする理由」のとおり強制措置決定の必要が生じておりますので、貴職におかれてその趣旨をご了察のうえ、すみやかに当該児童にかかる諸般の手続を依頼したいので、よろしくお取り計らい下さい。

一 在所中の経過及び処遇概要

五三、八、一四栃木県中央児童相職員、両親および叔父と共に来院。第六寮入寮

八、二三実母、兄、叔父面会

八、二九両親面会

九・三両親面会

九、二四両親面会

九、二九午前九時三〇分頃授業の休憩時、学習棟の窓から無断外出

一〇月四日に至り保護者から本児が自宅にもどつている旨、保護者より電話連絡があつたが、保護者は本児を帰院させることを拒み現在に至つている。

無断外出中の詳細な行動については不明であるが、学院近辺において遺留品からして本児の犯行であることが確実視されている侵入盗が一件ある。(被害品はミニガステーブル(時価五、〇〇〇円)、短グツ(五、〇〇〇円)、ラーメン五ケ、茶わん二ケ、自動車のキー等である。)なお、遺留品は本児が無断外出した際に履いていた本児名入りのスリツパである。

また、同じく無断外出中本児が自動車を運転しているのを○○中学校の生徒が目撃したという情報が○○中学校を通じて伝えられている。

一 強制措置を必要とする理由

本児の体格は貧弱であるが、学院での一か月間余の生活を見ても現状では普通生活を営むのに支障がないだけの体力はもつているが、性格、行動面は極めて未成熟、未陶冶な段階に遅滞している、両親の非社会的としか評価できない盲目的な溺愛、過保護な養育態度を反映しているのであろうと思われるが、日常の生活は自己中心的で恣意的な行動への志向が中核となつており性格、行動傾向には問題性が目立つ。

一か月間余の院内生活においてはとり上げる程の非行、院規違反等はみられなかつたが、日常生活面では本児の誤つた言動に対する同僚の注意、忠告に対して反撥し、応じないいわゆる横着な態度をとることが多く、また強く臨むと相手を敵視し相手の非を職員に愁訴するといつた傾向が目立つ。耐性乏しく社会性の欠如した問題性ある性格、行動傾向、小学生時代からの怠学、授業拒否にはじまる非行体験等を勘案すると本児の非行性はかなり根深く、現状のまま放置したのでは監護能力の乏しい家庭の実状からしてその非行傾向はますます悪化して行くことが予想され健全な社会生活を期待することは出来ない。非行性を除去し本児に将来を期待するためには無理解な両親による養育環境から隔離すると同時に必要に応じて一定期間本児の恣意的な行動の自由を制限して内省の機会を与え健全な方向づけを図る期間が是非必要であると思われる。その期間は通算して一八〇日間程度必要であると思料する。

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