宮崎地方裁判所 平成4年(行ウ)7号・平4年(ワ)727号・平6年(行ウ)2号 判決
第一ないし第三事件原告
宮崎総合開発株式会社(X)
右代表者代表取締役
髙野泰宏
右訴訟代理人弁護士
鈴木秀幸
同
野間美喜子
同
天野太郎
第一事件被告
宮崎県知事(Y1) 松形祐堯
第二事件被告
宮崎県(Y2)
右代表者知事
松形祐堯
第三事件被告
国 (Y3)
右代表者法務大臣
前田勲男
右被告ら指定代理人
堀内遼一
同
山形達郎
同
池田淳
同
大嶺忠敏
同
堀憲治
同
竹原一郎
同
高山幸治
同
吉村久人
右被告宮崎県知事及び被告宮崎県指定代理人
岡村善郎
同
土井健
右被告宮崎県知事及び被告国指定代理人
横山直樹
右被告宮崎県及び被告国指定代理人
新徳継秋
事実及び理由
第三 当裁判所の判断
一 当事者間に争いのない事実並びに以下に摘示する証拠及び弁論の全趣旨によって認められる本件の事実経過は次のとおりである。
1 当事者
(一) 原告
原告は、平成三年一二月三日に設立された廃棄物の収集、運搬、中間処理及び処分等を目的とする株式会社である。
(二) 被告ら
第一事件被告知事は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律等に基づき、産業廃棄物処理施設の設置等に関する国の機関委任事務(以下「本件事務」という。)を管理・執行する権限と責務を有するもの、第二事件被告県は、被告知事の俸給その他の費用を負担している普通地方公共団体、第三事件被告国は、被告知事の本件事務処理による行政法上の権利・義務が帰属する行政主体である。
2 本件に至る経緯
(一) 髙野國男(以下「髙野」という。)は、平成三年三月ころ、宮崎県南那珂郡北郷町大字北河内字影之谷地区に、本件処分場を設置することを計画し、同年六月ころ、諸井弘幸(以下「諸井」という。)に同町大字北河内字影之谷六〇九〇―一〇他一二筆の土地を買収させ、同年一二月三日原告会社を設立して諸井とともに原告の代表取締役に就任した。なお、髙野は、昭和六二年七月九日産業廃棄物処理法違反で逮捕され、右違反罪で懲役四月執行猶予二年の判決を受け、右刑は平成四年三月ころ確定した。廃棄物処理法では、産業廃棄物の処理を業として行うものは、区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならないところ、右許可の申請者が法人の場合、その業務を行う役員が廃棄物処理法違反の罪を犯し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過していないときは、右許可を受けられないことから、同年六月一五日、原告の代表取締役、取締役をそれぞれ退き、長男髙野泰宏を代表取締役とした(〔証拠略〕)。
(二) 平成三年当時の廃棄物処理法一五条一項は、廃棄物処理施設の設置について、知事に対する届出制を採用していたが、同年一〇月五日、右届出制は、許可制に改正された。
そして、右新法の経過措置として設けられた附則五条は、一項本文で「新法施行日前に処理施設の設置につき旧法一五条一項の規定による届出をした者は、新法一五条一項の許可を受けたものとみなす」ものとし、同項かっこ書で、右旧法一五条一項規定による届出をした者の中から、<1>施行日前に旧法一五条二項の規定による変更の命令を受けたもので施行日において当該変更の命令に係る変更をしていないもの(その者が施行日において当該届出を受理された日から三〇日(最終処分場にあっては、六〇日とする。以下「制限期間」という。)を経過しない者(以下「制限期間未経過者」という。)である場合を除く。)、<2>施行日前に同項の規定による廃止の命令を受けた者(以下「廃止命令を受けた者」という。)及び<3>制限期間未経過者で施行日前に同条五項において準用する旧法八条三項ただし書の規定による通知を受けていないもの(施行日前に旧法一五条二項の規定による変更の命令を受けた者で施行日において当該変更の命令に係る変更をしているもの及び廃止命令を受けた者を除く。以下「旧法適用対象者」という。)が除かれるものとし、二項において、右旧法適用対象者については、制限期間が経過するまでの間は、なお従前の例によるものとした。
その後、右新法は、七月四日から施行されることになった。
(三) 髙野は、六月一七日、旧法一五条一項に基づき、被告知事に宛てた本件処分場設置届を日南保健所に持参し、保健所職員に提出しようとしたが、右職員が、設置届に地域住民の同意書が添付されておらず、被告知事が実施している事前協議を経ていないとして受け取らなかったため、設置届を保健所に差し置いて辞去した。
その後、設置届は、同月二〇日すぎころ、原告に返戻された(〔証拠略〕)。
(四) 髙野は、六月一八日、諸井らとともに、本件事務処理を行っている宮崎県環境保健部環境保全課(以下「環境保全課」という。)を訪れ、課長補佐永野明徳(以下「永野」という。)に対し、設置届を受理するよう求めた。
永野は、原告が地域住民の同意取得等を内容とする事前協議を経ていないことを指摘し、右状態のままでは設置届を受理できないと答え、まず事前協議に応じるように説得を重ねたが、髙野は、旧法は届出制を採用しており、事前協議は法令の根拠を有しない事実上のものであるから、届出をするに際し、必ずしも事前協議を経なければならないものではないなどと言って、右説得に応じなかった。
その後も、髙野らは、何度か環境保全課を訪れ、設置届を受け取るように求め、担当職員らと種々折衝を重ねたが、事前協議の要否について両者の見解は平行線を辿るばかりであった(〔証拠略〕)。
(五) 原告は、右経緯の下で、環境保全課に宛てて、六月二二日、設置届(以下「六月二二日の設置届」という。)を郵送した。
これに対し、環境保全課長は、同月二五日、事前協議を経ていない設置届を受理することはできないとして、右設置届を原告に返戻した(〔証拠略〕)。
(六) 原告は、設置届の届出を原告代理人らに委任し、右代理人らは、被告知事に対し、六月三〇日、設置届を郵送し、設置届は、七月一日に配達された(以下「七月一日の設置届」という。)。
これに対し、環境保全課長は、同月二日、事前協議を経ていない設置届を受理することはできないとして、開封しないまま設置届を原告代理人に返戻した(〔証拠略〕)。
(七) 原告関係者は、環境保全課職員らと前記(四)、(五)認定のやり取りをしている最中である六月二四日、新法施行の前日である七月三日及び新法施行後の同月一三日の三回に渡って、地域住民の同意取得等を企図して、地元説明会を開催した(〔証拠略〕)。
(八) 原告は、被告知事との間で、設置届の受理に関し、係争中であるため、最終処分場の建設に着工することができずに現在に至っている。
なお、原告は、七月三〇日、日南保健所に対し、本件施設の事業計画書及び事前協議書を提出したが、その間付近住民及び関係町民の反対運動がおこった(〔証拠略〕)。
(九) 宮崎県においては、旧法の施行以来、産業廃棄物処理施設を設置しようとするものに対し、届出に先立って、<1>届出に係る施設が法に定める技術的基準に適合するか否か、<2>周辺地域住民との合意形成、<3>関係他法令の許認可の見通しに重点を置いて、保健所、所管部局及び関係市町村との協議をなすことを指導し、これまで右事前協議を経て、産業廃棄物処理施設が設置されてきた。なお、産業廃棄物処理施設の設置については、すべての都道府県で行政指導として事前協議を行っており、四二道府県が事前協議を経た後に届出書を提出することを、条例、要綱等で明文化し、四一都道府県が隣接土地所有者、地区住民等との合意形成を確認する文書として同意書を添付する取扱いをしている(〔証拠略〕)。
二 地位確認請求の一について
争点1(一)(被告知事が被告適格を有しているか否か。)について検討する。
原告が確認を求めている新法による許可を受けた者との地位は、公法である廃棄物処理法に基づく地位であるから、右地位の確認を求める訴えは、公法上の権利義務ないし地位を訴訟物とするものとして設けられている公法上の当事者訴訟(行政事件訴訟法四条後段)に該当するものである。
そして、公法上の当事者訴訟において被告適格を有するのは、法人格を持ち、行政法上の権利・義務が帰属する行政主体であると解されるところ、前記第三の一1(二)認定のとおり、本件事務は国の機関委任事務であり、被告知事は、本件事務を管理・執行する権限と責務を有する行政機関に過ぎず、権利・義務の帰属主体ではないから、被告適格を有しない。
したがって、地位確認請求の一は、被告適格を有しないものを被告として提起されたものであり、不適法である。
三 地位確認請求の二、不受理処分取消請求及び不作為の違法確認請求について
1 前記第三の一2(二)記載のとおり、旧法の届出制が新法で許可制に改められたことに伴い、附則五条で、旧法下で届出をした者に関する経過措置が定められたが、右各請求に共通して、同条の適用関係が問題となるので、まず、この点を検討する。
前記のとおり、附則五条一項は、「旧法一五条一項の規定による届出をした者」と規定し、「右届出が受理された者」と明示的に規定していない。
しかしながら、右附則五条一項本文が前提としている旧法一五条は、届出の受理後、一定期間が経過しなければ処理施設を設置できないとし(同条五項、八条三項本文)、右一定期間中は知事が処理施設の変更・廃止を命ずることができると定め(旧法一五条二項)、届出をすれば直ちに処理施設が設置できるとしていたわけではなかったこと、仮に、単に届出がなされていれば、新法による許可を受けたものとみなされるとすると、旧法から新法への過渡期における処理施設の設置に関しては、右旧法の定める趣旨が及ばなくなること、附則五条一項かっこ書で、新法による許可を受けたものとみなされる者から除外されている者は、すべて旧法下で届出が受理されたものの、一定の事情が存し、処理施設を設置し得る地位を取得していないため、直ちに新法による許可を受けたものとみなすことが相当でない者であることなどに鑑みると、附則五条一項本文は、旧法下で届出が受理され、滞りなく制限期間が経過したことによって、処理施設を設置し得る地位を取得している者を、新法による許可を受けたものとみなし、同項かっこ書、二項は、旧法下で届出を受理されたが、未だ処理施設を設置し得る地位を取得するに至っていない者を、従前の例(旧法の規定)によることにしたものと解される。右「受理」とは、私人の行政庁に対する届出等を適法ないし有効なものと判断して受領する準法律行為的行政行為であり、届出等の事実上の受付けないし行政庁への到達とは異なる。
したがって、旧法下で届出をしたものの、右の意味での受理がなされてない者(届出をしたものの、行政庁側の事務処理の遅滞のため受理がなされる前に新法施行を迎えた者や届出が不受理とされた者等)に対しては、附則五条が適用される余地はないことになる。
そこで、以上を前提として、右各請求について、検討する。
2 地位確認請求の二について
争点1(二)(原告が、附則五条一項本文により、新法による許可を受けたものとみなされるためには、旧法一五条一項による設置届が受理されることを要するか否か。六月二二日の設置届及び七月一日の設置届が受理されたか否か。)について検討する。
前記1で説示したとおり、原告が、附則五条一項本文により、新法による許可を受けたものとみなされるためには、旧法一五条一項による設置届が受理されることを要すると解される。
そこで、原告の六月二二日の設置届及び七月一日の設置届が、被告知事によって受理されたか否かについて検討する。前記第三の一2(三)ないし(六)認定のとおり、原告は、関係者の髙野らと環境保全課職員との間で、原告が事前協議に応じるか否かに関し、種々やり取りがあった後、六月二二日の設置届及び七月一日の設置届を環境保全課に郵送したものであるが、前者の設置届は六月二五日に、後者の設置届は七月二日に、いずれも環境保全課長名義で、事前協議を経ていない設置届は受理することができないと明示され、原告又はその代理人らに返戻されたことが認められる。右事実によれば、原告の右各設置届は、事実上受付けられた後、事前協議を経ていないとして受理されることなく返戻されたことは明らかである。
したがって、原告に、附則五条一項本文が適用される余地はなく、原告を新法による許可を受けたものとみなすことはできない。
よって、地位確認請求の二は理由がない。
3 不受理処分取消請求について
争点2(二)(廃棄物処理法が改正された後においても、原告に不受理処分の取消しを求める法律上の利益があるか否か。)について検討する。
本件不受理処分は、前記認定のとおり、事前協議を経ていないことを理由としてなされたものであるが、旧法において、事前協議は届出の要件となっていない。この処分の適法性については後述のとおりであるが、現在では新法が施行されている。そのため、不受理処分に対する実体判断に先立ち、訴えの利益について判断する。
届出に対する不受理処分の取消しを求める訴えの利益は、当該不受理処分が取り消された場合に、取消判決の拘束力により、右判決の趣旨に従い、改めて届出に対する処分がなされることによって届出に係る法律上の地位ないし法的利益を取得し得る可能性を回復することにあるから、当該不受理処分後の法令の改廃の結果、届出に対する処分がなされる余地が一切なくなった場合には、右取消訴訟の訴えの利益は失われると解される(最高裁判所第一小法廷昭和五七年四月八日判決・民集三六巻四号五九四頁・同第三小法廷四一年一一月一五日判決・民集二〇巻九号一七九二頁等参照)。
これを本件について見るに、廃棄物処理法に関しては、不受理処分がなされた後の平成四年七月四日から新法が施行されており、現時点において旧法が適用されるのは、附則五条一項かっこ書、二項の場合である。しかし、附則五条一項かっこ書、二項が適用されるのは、設置届が受理されていた者と解される。そうすると、本件不受理処分が、取り消されたとしても旧法下における受理がなければ右附則の適用には至らない。法改正があった場合実体関係については不遡及が原則だとしても、本件のような手続関係については必ずしも同じとはいえず、むしろ、手続の安定や整合性の面から、新法施行後は新法が適用されるといわなければならない。したがって、現時点において旧法の手続に従って受理をする余地はない。そのため、原告に対して附則五条一項かっこ書、二項が適用される余地はないことになる。
以上によれば、その余の点を判断するまでもなく、不受理処分取消請求は、不適法である。
4 不作為の違法確認請求について
争点3(二)(廃棄物処理法が改正されたことによって、右各設置届に対し、受理、不受理の応答をすべき被告知事の義務が消滅したか否か。)について
前記二3で説示したとおり、原告に旧法が適用される余地はないのであるから、被告知事の届出に対する応答義務は、消滅したものというべきである。
したがって、その余の点を判断するまでもなく、不作為の違法確認請求は不適法である。
四 損害賠償請求について
争点2(一)(2)(事前協議を経ていないことを理由としてなされた不受理処分が適法であるか否か。)について検討する。
1 事前協議ないし行政指導の適法性について
〔証拠略〕によれば、環境保全課は、昭和五一年一二月三日ころから、処理施設の厚生省令等の定める技術上の基準への適合性、地域住民との合意形成及び関係法令による許認可の見通しに重点を置いた事前協議を実施することとし、処理施設を設置しようとする者に対し、右事前協議に応じるように行政指導を行っていたこと、右事前協議の手続に関しては、手続の流れを図示したフローチャートが作成されただけで、手続の細目を定めた指導要綱等は一切作成されず、同意を取得すべき地域住民の範囲なども、処理施設設置予定地及び周辺地域の生活環境への影響を勘案して適宜決定される扱いであったことが認められる。〔証拠略〕中、宮崎県においては事前協議は実施していないと聞いたという部分は、不自然であり、採用しない。
右認定の事実によれば、宮崎県の事前協議は、廃棄物処理法上、設置届を受理した後、計画内容を審査し、不適切な場合に知事の変更・廃止命令で対処すべきものとされているにもかかわらず、届出を受理する前に、右計画内容を審査するものとしたり、また、要件とはされていない地域住民の同意の取得を要求するなど、廃棄物処理法の規制態様を越える内容を持つものである上、同意を取得すべき地域住民の範囲、事前協議が開始されてから届出が受理されるまでの見込みの期間等の事前協議の手続的細目や実施要領を内部的に定めた指導要綱等が存在しないため、処理施設を設置しようとする者の法的地位を不安定にする蓋然性がないわけではない。
しかしながら、産業廃棄物処理施設は、その設置に当たって、山林の伐採、土地の掘削や盛土等土地の形状の大規模な変更や、大規模で恒久的な工作物の設置を伴い、環境に大きな変化を与えるとともに、当該施設の設置後も、有害物質の排出、水質の汚染等の危険や廃棄物の運搬のための交通問題等付近住民の生活環境及び公衆衛生に影響を与えかねず、そのため、旧法は「廃棄物を適正に処理し、及び生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ること」を目的と定め、処理業者に一定の技術的能力を求めるだけでなく、その業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある場合、又は申請者(申請者が法人であるときは、その業務を行う役員を含む。)が廃棄物処理法違反の罪を犯し、罰金以上の刑に処せられたときは一定期間、営業の許可を与えられないとし、さらに、右業者であっても、廃棄物処理施設を設置しようとする場合、都道府県知事に届け出なければならず、右各違反に重い刑罰を科している。
廃棄物処理法の定める目的は、現在極めて重大な行政課題となっており、地方自治法もその二条三項一号、七号において、普通地方公共団体は、地方公共の秩序を維持し、住民の安全、健康及び福祉を保持すること並びに公害の防止その他の環境の整備保全に関する事項を処理する責務を持つと定めている。かかる責務を有する地方公共団体が、当該地域の生活環境の保全のみならず、廃棄物業者と地元住民との信頼関係形成等を図るため、処理施設を設置しようとする者に対し、処理施設の設置について一定の譲歩ないし協力を求める行政指導を行うことは、地方自治法上はもとより、廃棄物処理法上適法であることはいうまでもない。そして、設置者において、行政指導に応じられないとの意思を真摯かつ明確に表明することがなく、任意に行政指導に応じているものと認められる場合においては、社会通念上合理的と認められる期間、届出を受理せず、あるいは返戻するなどして、行政指導の結果に期待することがあったとしても、右措置が直ちに違法であるとはいえず(最高裁判所第三小法廷昭和六〇年七月一六日判決・民集三九巻五号九八九頁参照)、この理は、設置者が行政指導に応じることを拒否している場合であっても、右拒否又は不協力が社会通念上正義の観念に反する場合、なお右協力を要請することができ、右に相当な期間、届出を受理せず、あるいは返戻したとしても、右措置を違法ということはできない。
2 そこで、行政指導に対する原告らの対応状況等について見るに、前記第三の一2(三)ないし(七)認定のとおり、原告関係者の髙野らは、既に成立している新法の施行が迫った平成四年六月ころから、日南保健所や環境保全課を幾度か訪れ、持参した本件処分場の設置届を受理するよう要求したが、右保健所、環境保全課の職員らから、事前協議に応じるようにとの行政指導を受け、設置届を受理されなかったため、二回に渡って、本件処分場の設置届を環境保全課に郵送する一方、他方で、地域住民の同意の取得を企図して、平成四年六月二四日、同年七月三日及び同月一三日の三回に渡って地元説明会を開催していたことが認められる。
そして、新法施行日を挟んだ二〇日間という短期間の内に、三回に渡って行われた地元説明会の開催が、右事前協議ないし行政指導の趣旨に従ったものであることに鑑みると、原告関係者の髙野らは、一面では事前協議を経ていない設置届の受理を強行に求めていながら、一面では行政指導に従っていたものであって、前記認定の諸事実からすると、原告が終始一貫して行政指導に一切従わないとの意思を真摯かつ明確に表明したものといえない。
仮に、原告が行政指導に不協力の態度を明確に示し、任意に行政指導に応じていたとは認められないとしても、産業廃棄物処理施設の建設及び操業は、付近住民の生活環境及び公衆衛生に重大な影響を及ぼしかねず、そのため各都道府県においては、産業廃棄物処理施設設置のための届出に、例外なく事前協議を要求し、宮崎県においても、産業廃棄物処理施設はすべて事前協議のなかで関係者の利害が調整されたうえ設置されてきたこと、一方、原告の実質的経営者である髙野は、廃棄物処理法違反の前歴があって、廃棄物処理業を誠実に実施する体制が原告に整っているか否かを調査する必要があるだけでなく、付近住民からは本件処分場設置に反対する意見が出され、右両者の関係を調整する必要があったこと、さらに、原告としては、およそ設置届を受理されないことになるわけではなく、仮にその間に新法が施行されたとしても、事前協議を経た上で新法に基づいた手続を履践すれば、設置が許可される可能性がある(証人永野明徳の証言)こと等の事情があり、右届出を受理されないことによる原告の不利益と行政指導の公益上の必要性とを比較衡量すると、後者の方が優越し、行政指導に対する原告の不協力は社会通念上正義の観念に反するというべきであり、なお協力を要請していた被告知事の行為に違法性はなく、その間に新法が施行されたものといわなければならない。
そして、右期間は六月二二日からでもわずかに一一日間にすぎず、その間に原告が行政指導の趣旨に副った地元説明会を開催していること等の事情に鑑みると、右期間は社会通念上相当な期間内であったといわざるをえない。
したがって、右状況下で、被告知事が右設置届を不受理とした処分は、適法というべきである。
以上によれば、損害賠償請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がない。
五 結論
以上によれば、地位確認請求の一、不受理処分取消請求及び不作為の違法確認請求は、いずれも不適法であるから却下し、その余の請求は、いずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について、行訴法七条、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横山秀憲 裁判官 古閑裕二 吉井広幸)