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宮崎地方裁判所 平成7年(行ウ)2号 判決 1997年1月27日

原告

谷口善典

被告

宮崎県知事

松形祐堯

右訴訟代理人弁護士

萩元重喜

右指定代理人

稲用博美

外七名

主文

一  被告が原告に対して、平成六年七月二五日付けでした公文書部分開示決定処分(ただし、平成七年五月一二日付け異議決定により一部取り消された後のもの)のうち、別紙非開示情報一覧表4ないし12各記載の非開示とした部分を取り消す。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを四分し、その一を原告の、その余を被告の各負担とする。

事実及び理由

第一  請求

被告が原告に対して、平成六年七月二五日付けでした公文書部分開示決定処分(ただし、平成七年五月一二日付け異議決定により一部取り消された後のもの)のうち、非開示部分を取り消す。

第二  事案の概要

一  本件は、宮崎県民である原告が、宮崎県情報公開条例(平成元年宮崎県条例第三号。以下「本件条例」という。)に基づき、宮崎県が資本金の四分の一を出資するフェニックスリゾート株式会社(宮崎市大字潮路字浜山三〇八三番地所在。以下「本件法人」という。)の平成六年六月二一日開催の株主総会において株主である宮崎県に配布された文書の開示(閲覧及び写しの交付)を請求したところ、本件条例の実施機関である被告が、その一部について本件条例所定の非開示事由に該当する情報が記録されているとして非開示とする旨の決定(以下「本件処分」という。)をしたので、非開示部分の取消しを求めた事案(抗告訴訟)である。

二  争いのない事実

1  当事者

(一) 原告は、宮崎県在住の宮崎県民である。

(二) 被告は、本件条例の実施機関である。

(三) 本件法人は、資本金三億円のうち、その四分の一を宮崎県が、同じく四分の一を宮崎市が出資しているいわゆる第三セクター方式の法人である。また、宮崎県は本件法人に対し、六〇億円を無利息で貸与し、出納長が取締役に就任している。

2  本件条例の要旨

本件条例のうち本件に関係する条項(目的、解釈運用及び非開示事由)は、次のような内容である。

(一) 第一条(目的)

この条例は、県民の公文書の開示を請求する権利を明らかにするとともに、公文書の開示及び情報提供の推進に関し必要な事項を定めることにより、県民の県政に対する理解と信頼を深め、県民参加の開かれた県政を一層推進することを目的とする。

(二) 第三条(解釈及び運用)

実施機関は、県民の公文書の開示を請求する権利が十分に保障されるようこの条例を解釈し、及び運用するものとする。この場合において、実施機関は、個人に関する情報がみだりに公にされることのないよう最大限の配慮をしなければならない。

(三) 第九条(開示をしないことができる公文書)

実施機関は、開示の請求に係る公文書に次の各号のいずれかに該当する情報が記録されているときは、当該公文書の開示をしないことができる。

一号 法令又は条例(以下「法令等」という。)の定めるところにより、明らかに開示をすることができないと認められる情報

二号 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの。ただし、次に掲げる情報を除く。

ア 法令等の定めるところにより、何人でも閲覧することができる情報

イ 公表することを目的として実施機関が作成し、又は取得した情報であって、当該情報の開示が個人の権利利益を侵害しないと認められるもの

ウ 法令等の規定による許可、認可、免許、届出等の際に実施機関が作成し、又は取得した情報であって、人の生命、身体又は健康の保護その他の公益上の理由により開示することが必要と認められるもの

三号 法人(国及び地方公共団体その他の公共団体を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む法人の当該事業に関する情報であって、開示をすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。

ア 法人等又は個人の事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある危害から人の生命、身体又は健康を保護するため、開示をすることが必要と認められる情報

イ 法人等又は個人の違法又は著しく不当な事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある支障から人の生活を保護するため、開示をすることが必要と認められる情報

ウ ア又はイに掲げる情報に準ずる情報であって、公益上の理由により開示をすることが必要と認められるもの

3  本件処分の存在と原告の不服申立ての経緯等

(一) 平成六年六月二三日、原告は被告に対し、本件条例六条に基づいて、「平成六年六月二一日開催の本件法人の株主総会において、株主たる宮崎県に配布された書類(営業報告書、貸借対照表、損益計算書、損失処理案、監査意見書、その他一切の書類)」について開示を請求した。

(二) 同年七月二五日、被告は、右請求に対し、右文書のうちの一部[営業報告書のうち「取締役及び監査役」の一部、取締役選任の件・監査役選任の件の各一部、営業報告書の一部(「売上の状況」の一部、「資金調達の状況」、「株式の状況」の一部、「主要な借入先」、「企業結合の状況」)、貸借対照表及び損益計算書の各一部、損失処理案、本件法人定款変更案]を本件条例九条二号、三号に該当するとして非開示とし、その余を開示する部分開示の処分を行い、原告に対し、その旨通知するとともに、開示決定した公文書の写しを交付した。

(三) 右同日、原告は被告に対し、行政不服審査法に基づき、本件処分に関し、部分開示を取り消し、全部開示を求める旨の異議申立てをなした。

(四) 被告は、右異議申立てに対し、宮崎県公文書開示審査会への諮問等、本件条例の定める手続(一一条、一二条)を経て、平成七年五月一二日、原告に対し、本件処分の一部を変更する(営業報告書中「取締役及び監査役」のうち株主である宮崎県及び宮崎市から就任している取締役の担当又は主な職業、取締役選任の件のうち株主である宮崎県からの取締役候補者の「住所」、「主たる職業」及び「略歴」の部分、損益計算書のうち経常損益の欄における科目名及びその金額並びに特別損益の部の大科目名及びその金額部分、損失処理案のうち当該損失の処理に関する科目名及びその金額を除いた部分、本件法人定款変更案の全部については開示する。その余の部分の開示については、これを棄却する。)旨決定し、同月一三日、原告に対し、その旨通知するとともに、同月一九日、右変更決定により開示した公文書の写しを交付した。

(五) 右(四)の変更により、本件処分における非開示情報は、別紙非開示情報一覧表(以下「一覧表」という。)1ないし12各記載の情報である。

三  争点(本件処分の適法性)

1  一覧表1ないし3各記載の情報(個人に関する情報)が本件条例九条二号に該当するか。

2  一覧表4ないし12各記載の情報(営業等に関する情報)が本件条例九条三号に該当するか。

四  争点に関する当事者の主張

1  被告の主張

(一) 本件条例における非開示事由の解釈について

具体的な公文書開示の請求権は、公文書開示の手続等を具体的に定めた法律、条例によってはじめて認められるものであり、かつ、当該法律等により定められた要件に基づいて認められる権利である。したがって、その条文中に開示を制限する場合が規定されているときは、憲法二一条に規定する「知る権利」から当然に一般的包括的な公文書開示請求権なるものが導かれ、非開示に関する条文は右請求権を制限するものであるとみるべきではなく、それらを除外した公文書開示請求権が具体的な権利性を有するとみるべきである。よって、本件条例の公文書開示請求権も、本件条例に規定する要件のもとに具体的に付与された権利であるから、開示をしない場合を定める本件条例九条については、その文言に即し、規定の趣旨に沿って合理的に解釈すべきである。

(二) 本件条例九条二号該当性について

(1) 一覧表1ないし3各記載の情報は、個人に関する情報であるところ、本件条例九条に規定する「個人に関する情報」とは、思想、宗教等個人の内心に関する情報はもちろん、職歴、学歴、社会活動、財産状況に関する情報その他一切の個人に関する情報をいい、限定的に解する合理的理由はない。右各情報は、個人の住所等特定の個人が当該情報から直接認識され、これらの個人の職業、職歴が記載され、かつ、これらの個人が本件法人とどのような関係を有しているかが一見して明らかとなる情報であるから、本件条例九条二号本文に該当する。

(2) 右各情報は、本件条例九条二号ただし書イ及びウのいずれにも該当しない。

① 本件条例九条二号ただし書イの非該当性

右各情報は、本件法人の株主総会において株主たる宮崎県に配布された資料中の情報であるが、株主が公表することを前提として配布された情報でもないし、宮崎県が公表することを目的として取得した情報でもない。

② 本件条例九条二号ただし書ウの非該当性

右各情報は、そもそも法令等の規定による許可、認可、免許、届出等の際に取得した情報ではない。

③ 宮崎県が本件法人の株主であること等を理由に本件法人が公共性、公益性を有するとはいえない。本件法人は、私企業にすぎないし、本件法人の役員は私人として本件法人に関係しているのであって、公的関係にはない。

(三) 本件条例九条三号該当性について

(1) 一覧表4ないし12各記載の情報は、法人である本件法人の内部管理に属する情報であって、次の(2)のとおり、これらの情報を開示することによって、本件法人の競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害すると認められるから本件条例九条三号本文に該当する。

(2)① 一覧表4記載の情報は、本件法人が有する各施設ごとの売上金額及び構成比が記載された部分である。右売上金額を開示した場合、利用者数は別途公表されているから、施設によっては一人当たりの消費単価が明らかとなり、各施設間の優劣等が判明する。その結果、取引のある旅行業者のディスカウントに結びつけられたり、他社から競争力の弱い施設に集中的にダンピングによる攻撃を受ける等同業他社との価格競争が発生することは明らかである。

② 一覧表5記載の情報は、本件法人の当該決算期における借入金額及びその使用目的が記載された部分である。この情報が開示された場合、借入金額が多額の場合は、取引会社や従業員に無用の不安を与え、取引関係や雇用関係に支障を来すと考えられる。

③ 一覧表6ないし8各記載の情報は、本件法人のみの情報ではなく、同6記載の情報、株主名、その所有株式数及び所有比率が記載された部分であり、同7記載の情報は、借入先名、借入先ごとの残高及び借入先が有する本件法人の株式数が記載された部分であり、同8記載の情報は、企業の結合の相手方が記載されている部分である。これらの各情報は、本件法人の当該営業年度の重要な営業ないし経営の状態を明らかにする法人の販売営業上の情報又は事業活動を行う上での内部管理に関する情報であり、また、各相手方にとっても内部管理に属する情報であって、一般に機密に属する情報である。したがって、これらの情報を開示した場合、右各相手方に不利益を与え、また、相手方との信頼関係を損ねることは明らかである。

④ 一覧表9記載の情報は、本件法人の当該決算期の資産及び負債の具体的内容が記載された部分である。この情報を開示した場合、会社財産の状況や支払能力、信用力等を把握することができるので、資産の運用、資金調達を予想することが可能であって、その取引関係に支障を来したり、他社に競争上の弱点を知得されると考えられる。

⑤ 一覧表10記載の情報は、本件法人の当該営業年度に発生した収益とそれに係る費用の具体的内容が記載されている部分である。この情報を開示した場合、本件法人の費用、収益の具体的内容が明らかとなり、財務分析による営業活動の状況把握がなされ、また、損益状況が明らかとなり、本件法人の取引関係に支障を来すと考えられる。

⑥ 一覧表11記載の情報は、固定資産の取得に係る支払利息の会計処理上の方法とその金額、リース資産の具体的内容及び担保に供している資産の種類とその金額がそれぞれ記載されている部分である。この情報は、一覧表9記載の貸借対照表と一体をなす情報であって、同様に考えられる。

⑦ 一覧表12記載の情報は、本件法人が株主に対して行う重要提案であり、株主にとって最も利害のある部分である。この情報を開示した場合、株主との間の信頼関係を損ね、株主からの信用を失墜せしめると考えられる。

(3) シーガイア観光施設財団目録登記簿謄本の記載内容と原告が開示を求める情報の内容は、必ずしも一致するものではない。

(4) 本件法人の組織、業績については新聞、テレビ等を通じて一般に公表されているが、これらは各報道機関が独自の取材により収集した情報が公開されているものであって、右公表がなされたとの理由から被告が取得、管理している情報をすべて開示する義務を負うものではない。

また、被告の議会における答弁は、各企業のリゾートづくりに関する企画力あるいは経営力を十分に評価するとの内容であって、本件法人の株主名、株主数等を回答したものではない。

(5) 商法二八二条二項に規定する計算書類の公示と株主たる宮崎県に株主総会資料として配布された計算書類に関する本件開示請求に対する開示とはその制度趣旨を異にするものである。

2  原告の主張

(一) 本件条例における非開示事由の解釈について

非開示事由の解釈にあたっては、その規定の文理及び趣旨並びに県政の公正もしくは適切な実施という目的に照らし、当該文書の内容等に応じて、客観的、合理的に解釈されなければならない。すなわち、非開示事由の有無は、本件条例一条の目的のもと、公文書原則公開という基本理念を示した本件条例三条の趣旨にしたがって判断されるべきである。

(二) 本件条例九条二号該当性について

(1) 本件条例九条二号は、個人の尊厳を確保し、基本的人権を尊重する観点から設けられたものであるが、原則開示とされている情報公開制度の下で、適用除外事項に該当するとして非開示とすることが許されるのは、その文言だけの意味では足りず、当該個人が識別され、そのために当該個人の正当に保護されるプライバシー(家庭内の私事その他個人の私生活にかかる事柄、又はそれを他人や社会から知られず、干渉されない権利をいう。)が侵害されない場合であることが必要である。

また、プライバシーにかかる事柄であっても、当該個人の社会的活動の性質あるいはこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度如何によっては、その社会的活動に対する批判あるいは評価の一資料として公表を受忍しなければならない場合があり、その性質上それが社会一般の関心あるいは批判の対象となるべき事柄にかかわるときは、公表が許される場合がある。また、当該個人が選挙によって選出される公職にある者あるいはその候補者など社会一般の正当な関心の対象になる公的立場にある人物である場合には、その者が公職にあることの適否などの判断の一資料としてその公表を受忍すべきである。

(2) 一覧表1ないし3各記載の情報は、本件法人と取締役、監査役ないしそれら候補者個人との公的関係における評価、位置づけを記した文書であり、プライバシーを侵害していない。

仮に役員ないし役員候補者の担当又は主な職業等が、何らかの意味でプライバシーに該当するとしても、本件法人の出資金や貸付金又はその利息に県民の税金が充当されていること、本件法人が観光宮崎の再生と県民福祉の向上という点からまた県民共有の財産との認識から宮崎県が資本参加していること等からして、その役員は単なる私的企業の役員とは異なり、公的責務を有する役員といわざるを得ず、その社会的活動に対する批判、評価の資料としてこれらの事柄が開示されることは当然で、開示することによる公益は、非開示とする私益を上回ることは明らかである。

(3) 本件条例九条二号ただし書イにいう「公表を目的として…取得した情報」とは、明示的に公表することを意図して取得・収受したものに限らず、県民に開示対象として相応しいものになることが予定されて取得し、本人も公表されることを黙示的に容認しているとみなすことが妥当なものも含まれるというべきである。本件で問題とされている情報は、本件法人の株主総会で株主である宮崎県に配布された情報であり、もともと間接的株主ともいえる納税者の宮崎県民に公開されるべき性質を持ったものである。よって、一覧表1ないし3各記載の情報は、本件条例九条二号ただし書イに該当する。

(4) 本件法人は、リゾート開発、地域振興という宮崎県行政の機能の一端を担う公共性、公益性の極めて高い法人であるから、その業務の執行や監査にあたる者の地域社会に及ぼす影響は大きいというべきところ、本件法人の役員又は逝去によって選任される役員候補者は、地域社会の一般の正当な関心の対象となる公的立場にある人物というべきであり、その者が、役員としていかなる職務を担当しているか、又は職業は何か、候補者がはたして役員に選任されるのに適当な人物であるか否かの判断資料として、一覧表1ないし3各記載の情報は、本件条例九条二号ただし書ウにいう「公益上の理由」に該当する。

(三) 本件条例九条三号該当性について

(1) 本件条例九条三号は、公開の原則の必要最小限の例外として厳格に解釈適用されなければならず、法人等の事業活動に何らかの不利益が生じる可能性があるという漠然とした恐れだけでは足りず、その有している競争上等の地位が情報公開によって具体的に侵害されることが客観的に明白な場合にのみ適用されるというべきである。そして、情報開示によって、本件法人等の正当な利益が具体的に侵害されているかどうかは、その情報によって異なるが、本件法人が設立された意義、目的、出資者の構成、事業内容、事業の公共性、公益性、公開される情報の意味等諸般の事情を総合して判断すべきであり、具体的には次の(2)のとおりである。

(2)① 一覧表4記載の情報は、営業に使用されている施設の場所、名称及び売上金額、その構成比が記載されているだけであり、それ以上に営業上の有形無形の秘密等の記載はないと考えられる。一人当たりの消費単価が明らかになるとしても、施設毎の売上原価が明らかにならない以上、各施設の採算は不明なままであり、右情報を公開することにより、本件法人の競争上の正当な利害を害するとはいえない。

② 一覧表5記載の情報については、本件法人が資本金三億円に過ぎず、準備金、積立金は共に零であるから、設備投資(第六期分)は借入金に依存していると考えられるところ、シーガイア観光施設財団登記簿謄本には、本件法人が当期において四五二億円の借入を行っていることが記載されている。そうすると、右情報を開示することにより、本件法人の事業運営上の地位その他正当な利益を害するとはいえない。

③ 一覧表6ないし8各記載の情報については、本件法人の設立時における新聞報道やシーガイア観光施設財団登記簿謄本の記載等により推認することが可能なものであるし、同6記載の情報については、被告が県議会の答弁で明示しているものであり、これらを開示することにより、本件法人の競争上の正当な利益を害するとはいえない。

④ 一覧表9記載の情報については、その情報により一定の経営分析は可能であるが、その作成に関与した者の詳細な説明を聞かない限り、その構成や構成比率から資金の運用や資金調達を把握することはできず、個々の企業の内部条件等を個別に判断しなければ支払能力等を判断できない。また、被告は、本件法人営業年度第七期(平成六年四月一日から平成七年三月三一日まで)の貸借対照表については、本件で非開示とされた部分を含めその詳細を開示していること、商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律においては、貸借対照表の公開が規定されていること等からしても、当該情報を開示することによって得られる事柄から本件法人の競争上又は正当な利益を害するような独自の経営上の秘密やノウハウ等が明らかになるものではない。

⑤ 一覧表10記載の情報については、いずれもその合計額のみが記載されていると考えられるところ、これらを開示することにより、本件法人の競争上の正当な利益を害するとはいえない。

⑥ 一覧表11記載の情報については、当該情報の開示により本件法人が被る競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害する具体的な内容が主張立証されていない。

⑦ 一覧表12記載の情報については、すでに未処理損失額が公表されているところ、本件法人には取り崩すべき準備金、積立金がないことからすると、右損失に関しては、次期繰越損失として処理するほかないと考えられる。そうすると、当該情報を開示することにより本件法人の競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害するとは考えられない。

第三  争点に対する判断

一  本件条例における公文書開示請求権

1  本件条例の目的、解釈指針に関しては前記第二・二2のとおり規定され、その規定文言からすると、本件条例は、憲法二一条から派生する知る権利の尊重と同法一五条の住民自治下での参政権の実質的な確保の理念に則り、県民の県政への参加を実現するために制定されたものであって、本件条例により、県民等一定の者に行政機関の保有する情報の公開を求める権利を付与し、県の有する情報は原則として公開し、ただ、公開することにより、個人のプライバシーや法人、企業の営業上の秘密等を侵害したり、行政の公正かつ円滑な運営を妨げるおそれのある情報等については例外的に非公開とすることによって、公開を請求する者の権利と、情報を開示される第三者の利益、県民全体の利益及び公益との調整を図ったものと解される。

2  ところで、本件の公文書の具体的開示請求権は、憲法二一条の規定に基づいて直接的に発生するものではなく、宮崎県における公文書の開示について定めた本件条例によって根拠が与えられ、その内容、範囲等が定まるものである。したがって、具体的な事案において、情報公開が認められるか否かを判断するに当たっては、本件条例制定の趣旨、目的を踏まえながら、条例の各条文の文言を法文解釈の一般原則に従って、合理的、客観的に解釈し、かつ具体的事案にあてはめていく必要があり、それで足りるというべきである。

本件条例九号における各非開示事由に該当するか否かの判断も、法文解釈の一般原則と本件条例の解釈基準を示した三条の趣旨に即し、行政側の恣意的な解釈、運用を排除すべく、九条各号の法文を忠実に解釈、運用することによって行われるべきである。

二  本件条例九条二号該当性について

1  本件条例九条二号の非開示事由としての「個人に関する情報」の意義

宮崎県情報公開事務の手引(乙第一号証)によると、本件条例九条二号は、個人の尊厳を確保し、基本的人権を尊重する観点から、特定の個人が識別され得るような情報が記録されている公文書を非開示として、個人のプライバシーを最大限に保護しようとしたものであって、個人のプライバシーに関する情報をすべて類型化することが困難であることに鑑み、一定の例外事由がある場合を除き(本号ただし書)、個人に関する一切の情報を原則として非開示とすることを定めたものであると解される。かかる条例の趣旨並びに本件条例一条及び三条の規定の趣旨の外、前述のとおり、本件の公文書開示請求権が本件条例により具体化された権利であることをも考慮するならば、本件条例九条二号「個人に関する情報」とは、個人に関する一切の情報をさし、同規定の文言以外に要件を限定して解釈すべき合理的理由はないと解するのが相当である。

この点、原告は、特定の個人が識別され、又は識別され得るものすべてが非開示となるのではなく、プライバシーを侵害しないと認められる情報については、開示すべきであること、プライバシーにかかる事柄であっても、社会一般の関心等に鑑みて、一定の場合には開示しなければならない場合がある旨前記第二・四2(二)のとおり主張するが、右主張は採用できない。

2  一覧表1ないし3各記載の情報の本件条例九条二号該当性

(一)  甲第六号証によると、一覧表1ないし3各記載の情報は、取締役、監査役、ないしそれら候補者個人の担当又は主な職業、住所、主たる職業、所有する株式、略歴、本件法人との利害関係がそれぞれ具体的に記載されているものと推測される。

このうち、住所、略歴及び本件法人との利害関係については、その性質上プライバシーにかかる事柄で、明らかに、個人が識別され、又は識別され得る情報と認められる。

他方、個人の担当又は主な職業、主たる職業及び所有する株式については、既に本件法人営業年度第七期分(平成六年四月一日から平成七年三月三一日までの間。以下「第七期」という。)で開示されている情報(甲第一五号証)、本件法人営業年度第六期(平成五年四月一日から平成六年三月三一日までの間。以下「第六期」という。)において開示されている株式数及び株主数、新聞報道(甲第一九号証)からいずれもその具体的内容をある程度推認することが可能であるともいえないではないが、その内容についてすべて確認することはできないことからすると、非開示にする実質的な価値の有無は別として、プライバシーにかかる事柄で、個人が識別され、又は識別され得る情報と認めるのが相当である。

よって、右各情報は、すべて本件条例九条二号本文に該当する。

(二) 原告は、本件法人は、宮崎県及び宮崎市から多額の出資及び貸付を受けていることからすると、宮崎県民は間接的な株主であるから、株主総会で配布された資料は、本件条例九条二号ただし書イに規定する「公表を目的として…取得した情報」に該当する旨主張するが、社会的な実態は別にして、宮崎県民自体を間接的な株主と位置づける法律的な根拠まで存在しないし、又、右資料は、株主である宮崎県に対して配布されたものにすぎず、宮崎県もその目的で取得したものと考えられ、宮崎県民に対して公表することを目的としたものとまでは認めるに足りない。よって、原告の右主張は採用できない。

さらに、原告は、本件法人が宮崎県等地方公共団体からの多額の出資等により運営されていること、本件法人がリゾート開発、地域振興という宮崎県行政の機能の一端を担っていることからして公共性、公益性の極めて高い法人であり、かかる事情からすると、公益上その役員及び役員候補者がいかなる人物であるかを判断することが必要であり、一覧表1ないし3各記載の情報は、本件条例九条二号ただし書ウに該当する旨主張する。確かに、前記第二・二1(三)のとおり、本件法人には宮崎県等が多額の出資又は貸付けをしている外、弁論の全趣旨からすると、本件法人が宮崎における観光産業の一拠点として位置づけられ、機能していることは認められ、原告が主張するような公共性、公益性が本件法人にあるといえる。しかしながら、本号ただし書ウは、公共性、公益性のある文書一般を非開示の例外としているわけではなく、実施機関が特定の場合(許可、認可、免許、届出等)に作成又は取得した文書であることを前提としているところ、一覧表1ないし3各記載の情報は、右特定の場合に該当しないことが明らかである。また、本件法人は、法律上は、株式会社として経営運営されている一営利法人であることを否定し得ないから、本件法人に公共性、公益性があるといっても、本号ただし書ウで例示されている公益と同一視することはできない。よって、この点に関する原告の主張も採用できない。

3  以上によれば、一覧表1ないし3各記載の情報を本件条例九条二号に該当するとして開示しなかった被告の本件処分は、この限りにおいて適法である。

三  本件条例九条三号該当性について

1  本件条例九条三号の非開示事由としての「競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益」の意義

(一) 本件条例九条三号本文の「競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益」との規定は、それ自体抽象的なものであり、法人等の販売力や収益等に何らかの不利益が生じるおそれがあるものすべてを含むといえなくもないが、本件条例の目的(一条)、例外的に非開示とされるものを除いては原則として公文書の開示を行うとしていること(九条)、実施機関としても、かかる条例の解釈運用にあたっては、かかる条例の趣旨目的を十分に尊重すべき旨の規定があること(三条)、利益一般ではなく「正当な利益」として、具体的事情が考慮されるよう規定されていること等に照らすと、右に述べたものすべてが一律に非開示となるものではなく、個々具体的に検討する必要があるというべきであって、公文書非開示の要件となる「競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、当該情報が開示されることにより、法人等の事業活動等に何らかの不利益が生じるおそれがあるというだけでは足りず、その有している競争上等の地位が当該情報の開示によって具体的に侵害されることが客観的に明白な場合をいうと解するのが相当である。

(二) そして、開示を求められている情報が開示されることにより、本件法人等の競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益が具体的に侵害されるかどうかは、当該情報の内容によっても異なるが、一般にその判断は、当該情報の内容・性質を始めとして、本件法人等の事業内容、当該情報が事業活動等においてどのような意味を有しているか等の諸般の事情を総合してなされるべきであり、右事実の主張立証責任は、公文書は原則開示であるとの本件条例の趣旨目的、及び情報を開示することによる具体的な不利益の発生については、不利益の発生を主張する方が主張立証が容易であること等を考慮すると、実施機関(被告)側にあると解するのが相当である。

2  一覧表4ないし12各記載の情報の本件条例九条三号該当性

(一) 一覧表4記載の情報について

(1)  甲第五、第六号証及び弁論の全趣旨からすると、一覧表4記載の情報は、本件法人が有する各施設の名称及び各施設ごとの売上額及び構成比が記載されていると認められる。

(2)  ところで、右記載中、各施設の名称については、シーガイア観光施設財団目録登記簿(甲第一八号証。以下「本件法人登記簿」という。)に記載があり、施設の名称自体から本件法人が有している競争上等の地位その他正当な利益を害するとは認めるに足りない。

また、各施設ごとの売上額及びその構成比の記載についても、その性質上右利益を害するとは認めるに足りない。

被告は右情報が開示されることにより、各施設ごとの単価が明らかになる結果、他社から競争力の弱い施設等に集中的にダンピングによる攻撃を受け、他社との価格競争が発生するなど本件法人の競争上の地位が害される旨主張する。確かに、かかる情報はそれ自体本件法人の販売営業上の情報に該当すると解されるが、被告が主張するような競争相手となる他社というものがいかなるものを指すのか明らかではなく、施設ごとの売上原価が明らかにならない以上各施設の採算は不明であることなどからするならば、かかる価格競争発生の可能性や競争上の不利益が発生するということが客観的に明白であるとは認め難い。そうすると、右情報を開示することにより、本件法人の競争上等の地位その他正当な利益が具体的に害されるとは認めるに足りず、被告の主張は採用できない。

(3) よって、一覧表4記載の情報は、本件条例九条三号本文に該当するものではない。

(二) 一覧表5及び7各記載の情報

(1)  甲第五、第六号証及び弁論の全趣旨からすると、一覧表5記載の情報は、本件法人の第六期における借入金額及びその使用目的、同7記載の情報は、本件法人の第六期時点における主要な借入先、借入金残額、借入先が有する本件法人の株式がそれぞれ記載されている部分であると推測される。

(2)  一覧表5記載の情報について検討するに、甲第一八号証、乙第二号証及び弁論の全趣旨によれば、本件法人の資本金は三億円であり、準備金や積立金は計上されていないこと、第六期時点においては新株発行等増資がなされていないこと、本件法人は、第六期において、合計八社との間で合計四五二億円の金銭消費貸借契約を締結していることが認められ、右事実からすると、本件法人の資金調達の状況としては、他からの借入の状況が記載されているものと推認できる。

(3)  次に、一覧表7記載の情報についてみるに、前記のとおり、本件法人に関する主要な借入先については、本件法人登記簿中の抵当権設定欄における金銭消費貸借契約締結の状況から把握することが充分可能であること、甲第一九号証(平成三年六月一一日付け新聞記事)によれば、本件法人の株主名及びその所有する株式数の外、主たる借入先については、平成三年六月時点ですでに新聞で公表されていることが認められる。

(4)  以上の諸事情を総合して考慮すると、一覧表5及び7各記載の情報については、すべて他のすでに公表されている情報から容易に推認することができるものと解されるので、右各情報を開示することにより、本件法人の営業に支障が生じたり、相手方に不利益を与えることにより信頼関係を損ねる等本件法人に関して不利益が発生することが客観的に明白であるとはいい難い。したがって、本件法人が有している競争上等の地位その他正当な利益が害されるとは認めるに足りず、他に当該情報を開示することによって本件法人の競争上等の地位その他正当な利益が害されると認めるに足りる的確な証拠はない。

(5)  よって、一覧表5及び同7記載の情報は、本件条例九条三号本文に該当するものではない。

(三) 一覧表6及び8各記載の情報

(1)  一覧表6記載の情報について検討するに、甲第五、第六号証及び弁論の全趣旨からすると、一覧表6記載の情報のうち、非開示とされている部分は、株式名、所有株式数、所有比率が記載された部分であると認められるところ、甲第六号証によれば、株主数が一三名であること、発行済株式数が六〇〇〇株であることはすでに開示されていること、本件法人登記簿の記載によって、本件法人に対して貸付けを行っている法人名が明らかとなること、前記新聞記事によれば、本件法人の設立時における株主名一三名及び各株主が所有する株式数及び所有比率(但し、公表当時の発行済株式数は三〇〇〇株である。)が公表されていることが認められている。右事実からすると、この情報については、すべて他のすでに公表されている情報から容易に推認することができるものと解されるので、右各情報を開示することにより、本件法人の営業に支障が生じたり、相手方に不利益を与えることで信頼関係を損ねる等本件法人に関して不利益が発生することが客観的に明白であるとはいい難い。

被告は新聞紙上における公表は、各報道機関が独自の取材によって収集した情報が公表されるものであって、本件情報公開制度に基づく情報の開示とは趣旨目的が異なり、新聞で公表されているという理由から、直ちに本件条例に基づく情報開示義務を負うとはいえない旨主張する。確かに、被告が主張するように、報道機関による情報の公表と本件条例に基づく情報開示とは、その趣旨目的を異にし、新聞により公表されていることから直ちに本件条例による開示が義務づけられるとはいえない。しかしながら、本件条例の趣旨及び目的が被告が取得した情報については原則的に開示する旨規定していること、報道機関によるとはいうものの、情報の一部がすでに公表されていること、宮崎県議会における質問及びそれに対する答弁の内容(甲第二二号証)をも併せ考えると、右に述べたように、本件において、右情報が開示されることによって本件法人及び相手方(この場合、具体的には本件法人の株主)に対する不利益(具体的には、相手方との信頼関係、協力関係の侵害等)が生じることが客観的に明白であるとはいえず、結局のところ、右情報は開示しないことができる情報にはあたらない。

(2)  次に、一覧表8記載の情報について検討するに、甲第五、第六号証及び弁論の全趣旨からすると、一覧表8記載の情報は、本件法人の結合している相手方の会社が記載されていると推測される。

被告主張のように、確かに、結合している相手方に関する情報は、本件法人の内部管理に関する情報であると認められるが、甲第二五号証(平成八年二月三日付け新聞記事)、第二六号証(同年三月八日付け新聞記事)によれば、本件法人の企業グループ名が新聞で公表されていることが認められ、この事実に照らすと右情報はすでに公表されている情報から推認することができるものと解される。このことに右(1)で示したのと同様の理由から、かかる情報が開示されることにより、直ちに本件法人に対して不利益が生じたり、本件法人と相手方との信頼関係、協力関係に悪影響を及ぼすことが客観的に明白であるとは認めるに足りない。よって、右情報については、これを開示することにより本件法人が有している競争上等の地位その他正当な利益が害されるとは認めるにたりず、他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。

(3)  よって、一覧表6及び同8各記載の情報は、本件条例九条三号本文に該当するものではない。

(四) 一覧表9ないし11各記載の情報

(1) 甲第五、第六号証及び弁論の全趣旨からすると、一覧表9記載の情報は、本件法人の当該決算期(第六期)の資産及び負債、同10記載の情報は、会社の当該営業年度に発生した収益とそれに係る費用、同11記載の情報は、固定資産の取得に係る支払利息の会計処理上の方法とその金額、リース資産の内容、担保に供している資産の種類・金額がそれぞれ具体的に記載されている部分であると認められる。

(2)  貸借対照表及び損益計算書は、会社の計算書類の一部であって、商法上、監査報告書とともに、取締役が定時総会に提出して株主総会の承認を求めることが要求され、貸借対照表又はその要旨は、右手続後、会社の本店及び支店に一定期間備え置くことが義務づけられており、株主及び会社債権者に対して閲覧謄写権が認められているものである(商法二八二条、二八三条)。また、甲第六号証、第一八号証及び弁論の全趣旨によれば、同9記載の情報については、第七期においては、本件で非開示とされた部分を含めて開示がなされていること、同10記載の情報は、いずれもその合計額のみが記載されていること、同11記載の情報のうち、担保に供している資産については、本件法人登記簿において、本件法人の施設に対して抵当権が設定されている旨の記載がなされていることがそれぞれ認められる。さらに、右各記載だけでは、その性質上必ずしも本件法人の経営上の秘密や営業上のノウハウ等に及んでいるとはいえず、右各記載から直ちに本件法人の経理上の詳細な内容を把握することは必ずしも容易とはいえないことをも併せ考えると、右各記載だけから本件法人の詳細な経営分析ができるとは通常考え難く、右各情報を開示することにより、本件法人の競争上又は事業運営上の地位等が害されることが客観的に明白であるとはいえない。

(3)  以上の諸事情を総合して判断すると、右各情報については、これを開示することにより本件法人が有している競争上等の地位その他正当な利益が害されるとは認められず、他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。

(4)  よって、一覧表9ないし同11各記載の情報は、本件条例九条三号本文に該当するものではない。

(五) 一覧表12記載の情報

(1)  損失処理案については、当期未処理損失の合計額のみが開示されているところ、甲第六、第七号証及び弁論の全趣旨によれば、第六期の時点において、本件法人には、取り崩すべき進備金及び積立金がないこと、本件法人の第七期における損益計算書中の前記繰越損失額と第六期における損失処理合計額が同一金額であることがそれぞれ認められる。右事実からすると、第六期の未処理損失については、その全額を次期繰越損失として処理したということになる。そうすると、第六期における未処理損失は、次期の繰越損失として処理されたということが、すでに公表されている情報から容易に推認することができるのであって、かかる情報について、これを開示することによって、本件法人の競争上等の地位その他正当な利益が害されるとは認められない。

(2)  よって、一覧表12記載の情報は、本件条例九条三号本文に該当するものではない。

3 以上によれば、一覧表4ないし12各記載の情報を本件条例九条三号に該当するとして開示しなかった被告の本件処分は、この限りにおいて違法である。

四  結論

以上のとおり、本件処分のうち、一覧表1ないし3各記載の情報を非開示とした部分は適法であるが、一覧表4ないし12各記載の情報を非開示とした部分は違法であって、取り消されなければならない。

よって、原告の本訴請求は主文の限度で理由があるからこれを認容し、その余については理由がないから棄却することとし、訴訟費用につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条本文を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官安藤裕子 裁判官浅見宣義 裁判官内藤裕之)

別紙

1 フェニックスリゾート株式会社第六期分の計算書類(以下「計算書類」という。)中の営業報告書のうちの2「会社の概況」(6)「取締役及び監査役(平成六年三月三一日現在)」の「担当又は主な職業」各記載部分

2 平成六年六月二一日に開催されたフェニックスリゾート株式会社の株主総会配布資料(以下「配布資料」という。)中の第三号議案「取締役選任の件」における取締役候補者のうち、

(一) 牧野俊雄の「所有する株式」、「利害関係」の各記載部分

(二) 普勝清治の「住所」、「主たる職業」、「所有する株式」、「略歴」、「利害関係」の各記載部分

3 配布資料中の第四号議案「監査役選任の件」の監査役候補者の「住所」、「主たる職業」、「所有する株式」、「略歴」、「利害関係」の各記載部分

4 計算書類中の営業報告書のうちの1「営業の概況」(2)「売上の状況」記載部分

5 計算書類中の営業報告書のうちの1「営業の概況」(4)「資金調達の状況」記載部分

6 計算書類中の営業報告書のうちの2「会社の概況」(1)「株式の状況」記載部分

7 計算書類中の営業報告書のうちの2「会社の概況」(5)「主要な借入先」記載部分

8 計算書類中の営業報告書のうちの2「会社の概況」(7)「企業結合の状況」記載部分

9 計算書類中の貸借対照表記載の一部

10 計算書類中の損益計算書記載の一部

11 計算書類中の貸借対照表及び損益計算書の注記の一部

12 配布資料中の第一号議案「損失処理案」の一部

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