宮崎地方裁判所 昭和45年(ワ)599号 判決
原告
郡司正
ほか一名
被告
松方治
第一 主文
一 被告は原告らに対し、各金一〇一万六、四三五円およびこれらに対する昭和四五年一二月一二日から完済にいたるまで年五分の割合による金員の支払をせよ。
二 原告らその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は二分し、その一を被告の負担とし、その余を原告らの負担とする。
第二 本訴請求
「被告は原告らに対し、各金二、〇〇〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四五年一二月一二日(訴状送達の翌日)から完済にいたるまで年五分の割合による金員の支払をせよ。」との判決。
第三争いない事実
一 傷後死亡自動車事故発生
とき 昭和四五年四月四日午後一〇時五分頃
ところ 宮崎市上水流町二九番地先国道一〇号線、路上
第一事故車 被告所有のニツサンプリンス・スカイライン四〇年型普通乗用車、宮崎五す九七三六号
右運転者 被告
第二事故車 山下源三所有のホンダ三五〇CC自動二輪車宮崎に一八〇三号
右運転者 山下源三
受傷死亡者 原告らの長男亡郡司正利(右第二事故車後部同乗中)
態様 宮崎大橋方面に向つて西進中の第二事故車が、道路左側(南方)から大工町方面(東方)に向つて右転回中の第一事故車と衝突、ために亡正利が脳挫傷・頭蓋骨骨折等の傷害を受け、その結果同月六日午前九時すぎ頃死亡した。
二 責任原因について
被告は第一事故車をその運行の用に供する者である。
三 損害の填補 計六七六万九、一三一円
原告らは強制保険金六二六万九、一三一円の給付を受け、山下源三から賠償金五〇万円の支払を受けた。
第四争点
一 原告らの主張
(一) 責任原因
被告は運行供用者として本件事故により生じた原告らの損害を賠償しなければならない。
(二) 損害の発生
1 逸矢利益 各六一九万七、九九四円
亡正利は、事故当時宮崎日本大学高等学校普通科二年に在学中であつたか、同校卒業後は一般勤労者として就職する筈のところ、高校卒業以上の男子労働者の月間支給を受ける現金給与額および年間賞与その他の特別給与額は、労働省「賃金構造基本統計調査」によれば別表のとおりである。
そして経済企画庁昭和四五年版国民生活白書中の「国民経済計算」によれば、宮崎県における個人の家計消費支出は月平均一万六、一五〇円であり、亡正利の生活にも妥当し得た筈である。
ところで亡正利は、昭和二八年六月一三日生の健康な男子であつたから、高校卒業時の一八才から四五年間は就労可能とみるべきであり、生存の場合取得出来た収益の現価をホフマン式計算により算出すると別表の「逸失利益」欄記載のとおり、合計金一、二三九万五、九八八円となる。原告らは右逸失利益の損害賠償請求額を、法定相続分により各二分の一あて相続した。
2 慰謝料 各二〇〇万円
思いもかけぬ本件事故のため長男を失つた原告らの精神的打撃を慰謝すべく各金二〇〇万円が相当である。
3 本訴請求額
そうすると原告らの損害賠償請求権は逸失利益・慰謝料の計各金八一九万七、九九四円あてとなるが、これから前記填補額の二分の一あて各金三三八万四、五六五円を差引くとなお各金四八一万三、四二九円あての請求権を有するところ、その内金二〇〇万円あての支払を求めるものである。
二 被告の主張
(一) 被告の無責
本件事故はもつぱら訴外山下源三が後記のとおり制限速度に違反し時速八〇キロメートルの無謀な高速で第二事故車を運転し、前方で転回中の第一事故車を無視した過失により起つたものであり、被告は第一事故車の運行について何ら注意を怠つておらず、車に機能の障害・構造上の欠陥は存しなかつたから自賠法三条の責を負うべくもない。
すなわち本件事故現場は車道幅員一八・五メートルの歩車道の区別ある(北側歩道幅員三メートル、南側歩道幅員三・五メートル)、見とおしのよい直線道路であり、最高時速四〇キロメートルの規制がある。
被告は右道路南側にとめていた第一事故車を運転し、Uターンをしようとして後方車両を確認したところ、約四〇メートル弱後方に乗用車一台、そのはるか後方約一二〇メートルに第二事故車を発見したので、右乗用車の通過をまち、発進した。そして約七・五メートル進行したとき、さらに第二事故車の位置を確認したのであるが、後方約三一・二メートルの位置にあり、第一事故車が前照灯をつけ、右折信号を点滅させつつ時速約一五キロで転回中であることはその運転者が十分了知可能な状況にあり、一方被告からみて第二事故車が制限速度の二倍に達する時速八〇キロの速度にあることを予見することは不可能であり、予見義務もないところであつたから、後方第二事故車との事故の危険はないものとして、そのまま対向車の有無に注意しつつ進行していたのに、訴外山下源三は無謀にも時速八〇キロのまま第一事故車の前方を走りぬけようとした結果、本件事故を招来したものである。
(二) 過失相殺
かりに本件事故につき、被告が何らかの責を負わねばならないとしても、被害者である亡正利に重大な過失があり、損害算定に当りこれを斟酌すべき事案である。
すなわち、亡正利は第二事故車に同乗していたものであるが、同日午後八時三〇分頃より、ドライブやパチンコなどをして遊びまわつており、右山下の運転の無謀さを知りながら、これを制止することなく、むしろあえてこれに参与していたものであり、その過失は重大である。
第五争点に対する判断
一 責件原因
本件事故発生原因の大部分は、後部に亡正利の同乗する第二事故車を運転していた訴外山下源三が制限時速四〇キロをはるかにこえる時速約八〇キロのまま、進路前方で右転回中の第一事故車の動向に対する注意を怠たり、強いてこれが右方を通りぬけようとした無謀運転によることは否めない。
しかしながら、被告が発進に当つて後方車両を確認した際、約一二〇メートル手前に暴走してくる第二事故車の速度を時速約三、四〇キロと速断し、さらにそのまま三一、二メートル近くにせまつたのを認識しながら、安全に転回できるとして転回しはじめていたこと、その点の過失を問われた刑事上の責任(略式命令による罰金五万円)が確定していることからすれば、自賠法三条ただし書にいわゆる、自己および運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたとすることはできない。従つて被告は同法三条ならびに民法七一九条一項により訴外山下源三とともに共同不法行為者として原告らに対し損害賠償の責に任じなければならない。〔証拠略〕
二 原告らの損害
(一) 逸失利益
亡正利は事故当時一七才の健康な男子で、宮崎日本大学高等学校普通科二年に在学中であつたから、同校卒業時の一八才から平均余命の範囲内で四五年間は一般勤労者として就労可能の筈であつた。ところで労働省の昭和四五年度労働統計要覧によれば、高校卒の学歴を有する男子生産労働者の各年令時において支給を受ける所定内給与額および年間賞与その他の特別支給額が別表記載のとおりであることを考慮すると、生存の場合の生活費を差引いても、右四五年間、年間平均三〇万円あての純収益をあげ得たものとするのが相当である。そうするとその間の逸失利益の現価の総計を年五分の中間利息控除によるホフマン式計算によつて算出すると、金六七八万円となる。
300,000×(23.5-0.9)=6,780,000
そして原告両名は右逸失利益請求権を法定相続分に従い各二分の一すなわち金三三九万円あて相続により取得した。
(二) 慰謝料
不慮の事故のため最愛の長男を失つた原告らの精神的打撃を慰謝すべく、各金一五〇万円が相当である。〔証拠略〕
三 過失相殺
亡正利の同乗する第二事故車の運転者訴外山下源三が、夜更け時、制限時速四〇キロをはるかにこえる時速約八〇キロで暴走していたことは前記認定のとおりであるが、殆んど同年に近い間柄でありながら、亡正利が危険な暴走をあえて制止することなく同乗していた点、危険の素因として自己の損害発生の潜在的要因として問われてよく、被害者の過失相殺に準ずるものとして亡正利の遺族である原告らの損害賠償請求権につき、一〇%減額するのが相当である。
そうすると前記認定の逸失利益・慰謝料をあわせた各金四八九万円の九〇%各金四四〇万一、〇〇〇円が被告に請求できる損害額となる。
〔証拠略〕
四 損害の填補
右各金四四〇万一、〇〇〇円の請求権からすでに填補を受けた額(前記第三の三、各人二分の一あて填補されたものとする)各金三三八万四、五六五円を差引くと、被告になお請求できる額は各金一〇一万六、四三五円となる。
五 結論
そうすると原告らの請求は主文の限度での事故損害金と遅延損害金につき認容すべきである。
訴訟費用につき、民訴法九二条、九三条を適用した。
(裁判官 舟本信光)
別紙
<省略>