大判例

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宮崎地方裁判所 昭和56年(ワ)865号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一原告は、「本件を鹿児島地方裁判所に移送する。」との決定を求め、その理由として、「一、原告は本件につき督促手続事件を被告の普通裁判籍所在地である西都簡易裁判所に提起したところ被告の支払命令に対する異議により当裁判所に係属した。二、本件訴訟の目的である売掛代金請求事件の係争については当事者間で鹿児島地方裁判所を管轄とする旨の合意がある。」と述べた。

二よつて、判断するに、一件記録によると原告は本件につき民訴法四三一条一項に基づき債務者である被告の普通裁判籍(住所地)の西都簡易裁判所に支払命令を申立て、その支払命令に対する被告の異議により同法四四二条一項に従い当裁判所に訴の提起あるものと看做され、現に当裁判所に係属するにいたつたものであり、もとより被告の普通裁判籍を有する当裁判所に管轄があることが認められる。なるほど、本件移送申立書添付の商品売買基本契約書によると、原告主張のとおり、当事者間に本件売掛代金に間する紛争につき、鹿児島地方裁判所の管轄とする旨の合意がなされていることが認められるけれども、かかる合意管轄が存在するからといつて、必ずしも当裁判所の前示普通裁判籍を排斥するものではなく、これとの競合管轄を生ずるにすぎない。もつとも合意管轄の内容の定め方によつて専属的(排他的)合意管轄である場合は他の管轄を全部排除して、合意した裁判所(本件では鹿児島地方裁判所)のみに管轄を限定することになり、当裁判所は、管轄を有しないこととなる。しかし、管轄の合意が右のいずれを定めたかは当事者の意思を推測して決すべきであるが、前示基本契約書第一一条の「この契約に関する紛争は、鹿児島地方裁判所の管轄とします。」との文言からは当事者の意思は不明でありこのような場合には、管轄の合意が一般に起訴の便宜のためなされることに照らし、既存の管轄を排除しないで、合意した裁判所の管轄を付加してこれを併存される競合的(併存的)管轄であると解すべきである。

また、たとえこれが専属的合意管轄であるとしても、原告自らが支払命令を申立てたことにより、当裁判所に訴を提起したこととなつた以上、応訴管轄(民訴二六条)の趣旨を類推解釈して、もはや原告自身がその管轄違を主張できないものと解すべきである。

三したがつて、原告には管轄違に基づく移送申立権はない。なおこの場合でも原告には民訴法三一条の移送申立権はあるが、本件については同条所定の「著キ損害又ハ遅滞ヲ避クル為必要アリ」と認めるべき事情が認められないから、この申立としても失当である。

(吉川義春)

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