宮崎地方裁判所日南支部 事件番号不詳 判決
主文
被告人を懲役三年に処する。
但し被告人に対しては本判決確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。
押収にかかる腕時計(シチズン十型中古)一箇、ゴム長靴一足、ワイシヤツ一枚はこれを没収する。
被告人より金六万二千五百円を追徴する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
被告人は日南税務署直税課次席たる大蔵事務官で所得税主任として同署管内に於ける個人所得税賦課に関する一切の事務を担当する者であるが、
一、昭和二十四年二月上旬頃日南市大字油津平野(当時南那珂郡油津町)四十五番地タイヤ再生修理業阪元忠七方に於て納税義務者である同人が更正決定に対し異議申立中の昭和二十三年度所得税に付減額方請託竝に之が報酬の意味で供与するものである情を知り乍ら現金一万円及び時価千五百円位相当のゴム長靴一足の供与を受け
二、昭和二十四年二月上旬頃日南市大字本町三、九四五番地堀徹方に於て納税義務者服部新次の支配人格である同人が右服部の昭和二十三年度所得税の確定申告に付指導を受けた謝礼並に該申告是認方請託の意味で供与するものである情を知り乍ら金一万円の供与を受け
三、同年五月頃同市油津四四八番地書籍文具商高橋三夫方に昭和二十三年度所得税更正決定の異議に関し実体調査に行つた際同人が右所得税の査定に関し手心を加へて貰いたい意味で供与するものである情を知り乍ら金参千円の供与を受け
四、同年八月頃同市大字平野字木山時計商石塚末広方に於て同人が予て所得税を軽減して貰つた謝礼竝に将来更に便宜の取計を得たい意味で供与するものである情を知り乍らシチズン十型中古腕時計一個(時価千二百円位相当)の供与を受け
五、同市大字油津平野五、〇六二番地ノ二金物商目井恒次方に於て同人が将来課税に付手心を加へて貰いたい意味で供与するものである情を知り乍ら同年九月頃、十二月中旬頃、同二十五年一月下旬頃、五月四、五日頃の四回に亘り現金千円宛合計金四千円の供与を受け
六、同二十四年十一月頃同市大字隈谷丙二、〇一六番地イの自宅に於て荷車製造業井上栄が昭和二十三年度所得税に付軽減の取計をして貰つた謝礼の意味で供与するものである情を知り乍ら荷車一台(時価六千円位相当)の供与を受け
七、同年十二月中旬頃同市大字油津平野五、〇六三番地服地販売業長倉長平方に於て同人が課税に付手心を加へて貰いたい意味で供与するものである情を知り乍ら男冬物洋服生地一着分(時価参千五百円位相当)の供与を受け
更に同二十五年二月頃同人方に於て同人が課税に付軽減の取計を得たい意味で供与するものである情を知り乍ら金一万円の供与を受け
八、同二十四年十二月下旬頃同市大字油津平野一四五番地鉄工業川畑実一方に於て同人が以前所得税の異議に対し軽減を得た謝礼の意味で供与するものである情を知り乍ら金五千円の供与を受け
九、同二十五年一月中旬頃同市大字油津平野五、七一〇番地製材業岩切藤市方に於て同人が予て増加所得税を軽減して貰つた謝礼の意味で供与するものである情を知り乍ら金一万円の供与を受け
十、同年二月頃同市油津四四〇番地製材業江本富雄方に於て同人が将来課税に付便宜の取計を得たい意味で供与するものである情を知り乍ら金千円の供与を受け
十一、同年三月末頃同市飫肥下新町末留ミサオ方に於て同人が昭和二十四年度所得税に付軽減の取計を得た謝礼の意味で供与するものである情を知りながらワイシヤツ一枚(時価百円位相当)の供与を受け
以つて其の職務に関して収賄したものである。
証拠の標目(省略)
法に照すと右被告人の判示所為はいづれも刑法第百九十七条に該当するが、刑法第四十五条所定の併合罪であるから刑法第四十七条同法第十条により其の犯情の重い判示冒頭の罪に刑を併合法定の加重をし刑法第十四条の制限に従つた刑期の範囲内に於て被告人を懲役三年に処する。但し被告人は初犯の事であり被告人の更生を希望する意味から今回に限り刑法第二十五条を適用し被告人に対し本判決確定の日から四年間右刑の執行を猶予する押収にかかる腕時計(シチズン十型中古)一箇、ゴム長靴一足、ワイシヤツ一枚は刑法第百九十七条の四の前段により没収し被告人が収賄した現金五万参千円、没収する事のできない荷車代六千円、洋服生地代参千五百円計九千五百円総計六万二千五百円は同条後段によりこれを被告人より追徴する。
訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条により全部被告人の負担とする。
右の通り判決する。(昭和二六年二月二七日宮崎地方裁判所日南支部)