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富山家庭裁判所 昭和57年(少)36号 決定

少年 K(昭○・○・○生)

主文

少年を教護院(国立a学院)に送致する。

少年に対し、昭和五七年二月九日から向う一年間の間に一八〇日を限度として強制的措置をとることができる。

理由

(非行事実)

少年は、

第一(1)  昭和五六年六月一三日午後三時三〇分ころから同年七月下旬の午後九時三〇分ころまでの間、別紙非行事実一覧表(一)記載のとおり、前後四回にわたつて、富山市○○町××番地○○化粧品店ほか三か所において、Aほか三名所有もしくは管理にかかるオーデコロンなど物品合計六点(時価合計約九九六〇〇円相当)を窃取し

(2)  B(当時一四歳)、C(当時一三歳)と共謀のうえ、昭和五六年六月二九日午後四時ころ、滑川市○○××番地○○店において、D所有の学生ズボン二本(時価合計約四、八〇〇円相当)を窃取し

第二(1)  E(当時一四歳)と共謀のうえ、昭和五六年一二月一日午前一一時ころから同年一二月五日午前四時ころまでの間、別紙非行事実一覧表(二)記載のとおり、前後一三回にわたつて、富山県○○郡○○村○○××番地○○駅前自転車置場ほか一一か所において、F子ほか一四名所有もしくは管理にかかる婦人用自転車など物品合計一九六点(時価合計一、六九八、四二〇円相当)を窃取し

(2)  Bと共謀のうえ、昭和五六年一一月八日午後二時ころ、富山市○○××番地の×○○駐車場において、G所有の軽四輪貨物自動車一台(時価約五〇、〇〇〇円相当)を窃取するためエンジンを始動させ運転したが、約二メートル前方の階段に同車をぶつけたため、その目的を遂げず

(3)  Eと共謀のうえ、昭和五六年一二月四日午後七時二三分ころ、富山市○○××番地H方車庫において、同人所有の普通乗用自動車一台(時価約五〇〇、〇〇〇円相当)を窃取するためエンジンを始動させ運転したが、前記車庫前の納屋に同車をぶつけたため、その目的を遂げず

もつて一四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をしたものである。

(適用法条)

少年法三条一項二号(窃盗、刑法二三五条(同法六〇条)、窃盗未遂、同法二三五条、二四三条、六〇条)

(処分の理由)

一  少年は、中学一年生二学期ころより怠学、夜遊び、無断外泊が始まり、三学期に最愛の祖母を喪つてからは急速に非行化し、上級生の共犯少年らとの不良交遊を重ねるようになり、少年の行状に手を焼いた母が二年生一学期の昭和五六年七月一日に富山児童相談所に通告し、以後、同所で面接指導を受けていたが、その間に前記非行事実の第一の(1)(2)の触法事件が発覚し同年九月二六日○○警察署より通告され、引き続き同児童相談所で面接指導を受けていたが、その行状はおさまらず、前記非行事実第二の(1)ないし(3)の触法行為を反覆し、昭和五七年一月五日○△警察署より通告され、同月七日同児童相談所に一時保護の措置をとられ、同所で保護中の同月一〇日午後三時三〇分ころ、他の児童二名を誘つて無断外出し、級友のEを呼び出したうえ自動車で逃走することを企て、同日富山県下で自動車を盗んで運転し、以後同月一七日午後四時ころ埼玉県川口市内の△△警察署で保護されるまでの間、新潟、長野両県下、東京都、千乗、埼玉両県下で次々と自動車を盗んでは乗り捨てて逃走していた模様であり、同月一八日同児童相談所長より当庁に身柄付で送致された。

二  少年の知能は限界域(IQ七六、SS三四)にあり、劣等感、疎外感を強くしている反面、自己顕示欲求が強く、不良交友、非行の中でその承認欲求を補償していることが認められ、情緒が不安定で自己統制力及び規範意識が乏しいことから状況に左右され易く、累非行性は相当高いものと認められる。

三  少年の保護環境をみると、実父は実母と離婚後少年とは別居してほとんど交渉はなく、養父は少年に対して消極的態度をとる反面実子(少年の異父弟)に対しては強い関心を示しており、これが少年の疎外感、不信感を強める原因ともなつており、また、実母は少年の監護に対し強い関心を示しはするものの教育的指導力に欠け、少年の問題行動に対して感情的に対応するだけであり、現実には幼い少年の異父弟の育児に追われて少年を放任し勝ちであり、加えて、現夫との間の第二子の出産を間近に控えている。養父、実母ともに少年の行状改善についての具体的な手だてももたず、施設収容を望んでいる。

四  これら少年の年齢、これまでの行状、性格、保護環境を総合して考えると、この際少年を教護院に収容して受容的な雰囲気の下で教育することが、少年の健全な育成を期するうえで最も妥当であると判断する。

五  ところで、本件は児童相談所長より児童福祉法二七条一項四号に基づいて当庁に送致されてきたものであるが、その送致理由に少年に対する強制的措置の必要性が指摘されており、また、本件受理後に同児童相談所長より当庁宛に、少年に対し教護院送致処分が選択される場合、少年のこれまでの行動からみて教護院からの逃走のおそれが多分にあるとして、少年の行動の自由を制限する強制的措置が必要である旨の意見書が提出されている。少年法二四条一項二号による教護院送致の場合に、当然に同法一八条二項の措置がとれるかどうか法文上疑問がないわけではないが、少くとも本件においては、上記の点からして児童福祉法二七条一項四号の送致とともに家庭裁判所において保護処分として教護院送致が選択される場合には強制的措置の許可を求めるという趣旨での同法二七条の二、少年法六条三項による送致が条件付で併せてなされているものとみとめることができる。本件においては、少年のこれまでの行状に鑑みると強制的措置の必要性が十分に認められるので、少年に対し強制的措置をとりうる教護院である国立a学院に送致するとともに、強制的措置をとりうる期間としては、本決定の日から一年間に限り、一八〇日を限度とすることが相当である。

よつて、少年法二四条一項二号、一八条二項に従つて主文のとおり決定する。

(裁判官 宮城雅之)

〔参考一〕 児童送致書

児童福祉法第二七条第一項第四号の規定により、下記の児童を身柄共送致いたしますのでよろしくお願いします。

児童

本籍

現住所

学業

氏名生年月日

滑川市○○××

富山市○○××の××

富山市立○○中学校二年生在学中

K昭和○年○月○日生

保護者

本籍

現住所

続炳

職業

氏名生年月日

児童に同じ

児童に同じ

養父

会社員

L昭和○年○月○日生

送致理由

本児は昭和五六年九月二六日、○○警察署より、窃盗(ズボン、菓子類の万引き)で通告があり、さらに昭和五七年一月五日、○△警察署より、自動車窃盗、自転車窃盗により通告があつた児童である。(非行内容は別紙犯罪事実一覧表のとおり)

昭和五七年一月七日より当所で一時保護中、一月一〇日午後三時三〇分頃、同じく保護していたI(中一、窃盗行為)、J(中一、虞犯行為)を誘い無断外出し、自動車で逃走する目的をもつて、同児の校友E(中二)宅へ行つてEをも誘つた。その後、四人で○○町で乗用車(スプリンター)を盗み、本児が運転して新潟方面へ向い、同じ車では見つかると新潟県○○町で他の車(日産ローレル)に乗り変え、長野県上田市内でさらに他の車(トヨタカリーナー)を盗んで東京都内から千葉県へ入り、さらに他の車(不明)を盗んで埼玉県へ至つたものである。

この間、Jだけは仲間よりはぐれ、一月一四日二三時頃、埼玉県△○警察署で保護されるが、本児及びI、Eの三名は一月一七日一六時頃、埼玉県川口市の△△警察署で保護されるまで、盗難車及び付近の車から現金、免許証、衣服等を窃盗しながら、逃走していたものである。

以上の状況から、本児については、今後も逃走することが憂慮され、強制的措置が必要と認められるため、身柄共に送致します。

〔参考二〕 意見書

さきに児童福祉法第二七条一項四号で貴所に送致いたしましたKについては、いろいろと御尽力を賜つているところですが、送致理由にもあるとおり当所で一時保護中、同じく保護中の児童二名を誘つて無断外出し更に学友一名をも誘つて合計六台の自動車を窃取自から運転して埼玉県下で発見保護されたものであります。以前にも自動車盗車上ねらい、万引等の非行歴もあり、特に自動車に異常に興味を持つて性情の安定を著しく欠くところから教護院においても逃亡をくり返すおそれが充分あると考えられ、児童に対して適切な教護を行うには、必要に応じ、その行動の自由を制限する強制的措置が必要と認められますので具申いたします。

1 送致年月日 昭和五七年一月一八日

2 児童の住所 富山市○○××-××

3 保護者名 L

〔参考三〕 少年調査票<省略>

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